第28話 Cランククエスト ○
タッカート山脈へは歩いて2時間ほどで着いた。王都周辺は人が多いから、おいそれと飛んでいけないのが残念だ。
タッカート山脈に着いた俺達は、まずはワイバーンとコカトリスを探す。
コカトリスは鶏の上半身に蛇の尻尾がくっついているような魔物だ。毒を持っており、討伐するときは
早速、探知で確認してみると……結構、多い。この近くだけでも3つのワイバーンの群れと、2体のコカトリスが引っかかった。まずは1番近いワイバーンの群れを狩りに行く。
「
やっぱり空飛ぶ敵には風操作の魔法が効果的だ。アスカが創り出した数本の荒れ狂う竜巻が、ワイバーンの群れを襲う。5~6体のワイバーンがバラバラにちぎれて落ちていった。
無詠唱だから名前は言わなくても発動するんだけど、周りに何を使ったか知らせるためにも、言うようにしてるんだって。偉いね、アスカは! ソロだけど……
「
コカトリスは単体でいることが多いので、単体向きで高威力の魔法を使う。しかし、オーバーキルだったようでコカトリスが消し炭になってしまった……。証明部位の"とさか"が残ってるか心配になったが、ギリギリ焼け残ってた。
魔法は一瞬で倒せるから効率はいいんだけど、威力が強すぎて、素材が残らないのが欠点だ。
(素材、残らないね。剣で倒してみる?)
お、久しぶりにアスカとシンクロしたみたいだ。嬉しさが込み上げてくる。魔法で牽制して、剣で倒すスタイルにするようにアドバイスしてみた。
「
雷で麻痺したワイバーンの首を、素早く一刀で切り落としていく13歳の少女。なかなかシリアスな絵だな。
(お兄ちゃん、やっぱりサポート魔法は雷操作だね。追加効果で麻痺が付くから楽に倒せるもん)
(アスカもすっかりファンタジーな世界に浸かってるな)
そんな会話を脳内でしつつ、ワイバーンの群れを3つとコカトリス2体を倒し、山の
続けて、ゴブリンやオークのいる洞窟を探知で探してみた。
すぐにBランクのゴブリンキングとオークロードがいる洞窟を発見したので、それぞれに以前発見した複合魔法の改良版を放った。闇操作の
洞窟には20~30体のゴブリンやオークが潜んでいて、その全てが寝りこけていた。全ての首をはねて、素材を回収していく。アスカも魔物を殺すのに抵抗がなくなってきているようだ。いいのか悪いのかはわからないが、生き残るためには必要なことだろうと納得する。
ゴブリンとオークの群れを2つずつ壊滅させ、証明部位と素材を回収する。最後はちょっと北へ遠回りして、チックの森でヘルハウンドを探した。
ヘルハウンドは地獄の番犬と呼ばれ、魔物というより、どちらかといえば悪魔に近い。イービルウルフと同じように、物理耐性と闇耐性を持っている。
今回はレベル上げも兼ねているので、途中で出会った魔物も片っ端から狩っていく。そして、暗くなるまでに、ヘルハウンド5体、イービルウルフ6体、ブラッドベアー2体、ジャイアントボア1体を倒した。
今日だけでレベルが5つも上がったし、素材もたくさん手に入ったし、満足満足。
名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女
レベル 22
職業 賢者(大賢者)
ステータス
HP 52(320)
MP 62(330)
攻撃力 52(320)
魔力 72(340)
耐久力 52(320)
敏捷 62(330)
運 62(330)
スキルポイント 468
ステータスが軒並み300を超えている。普通に考えれば50台後半のステータスだ。学生の試験なら十分な気もするが、しかし、入学試験は何が起こるかわからない。念のため明日もアスカには頑張ってもらおう。
ギルドに戻り、早速報告しようと思ったが、さすがは王都である。報告カウンターにちょっとした列ができていた。時間的にも、1番報告が多い時間帯なのでしかたがない。列に並びながら、暇つぶしに周りの会話に耳を傾けてみた。
今日の獲物は何だとか、いかに華麗に倒したのか、などの自慢話がほとんどだ。今度は彼らの装備品に眼を向けてみる。さすがにこれだけの数の冒険者がいると、中には高レベルの冒険者もいるようで、そういった連中は身につけている装備も格が違うようだ。
(アスカ、明日は午前中で狩りを終わらせて、午後からは装備を作ろうか)
(お兄ちゃん、あの人達の装備を見て欲しくなったんでしょ?)
アスカの視線の先には、きらびやかな装備が一際目立つパーティーがいた。俺がその装備を見つめていることにアスカは気づいていたようだ。
(そんなことないもん、アスカがもっと強くなるためだもん!)
(はいはい、そういうことにしておきます)
そう言いつつも、彼らの装備をしっかり鑑定する。素材はドラゴンの鱗や牙や爪のようだ。明日はドラゴン狩りに決定だな。
「次の方どうぞ」
そんなことを考えているうちに、アスカの順番が来たようだ。
「あ、はい。お願いします」
「あら、アスカさんでしたね。やっぱりソロでは無理でしたか?」
荷物を持っているように見えないから、クエストに失敗したと思われたようだ。ちなみにこの受付嬢は、今朝、クエストを受け付けてくれた人だ。受付は交代制のはずなのにね?
「あ、いえ、そういうわけではないんですが……あの、お願いがありまして」
「はい、何でしょうか?」
「今から証明部位を並べていくんですが、大きな声で叫んだりしないでくださいね……」
突然、たくさんの証明部位を並べて受付に驚かれるのはお約束だからな。そうならないように、俺がアスカにアドバイスをしておいた。
「えーと、私達はプロですので、そんなことぐらいで大声をあげたりはいたしません」
受付のお姉さんは言葉は丁寧だが、『何言ってんだこいつ』みたいな顔してる。
「あと、わけあって素性を隠しておりまして、できれば他の人には名前を伏せていただきたいのですが――」
受付ではギルドカードを提出しなければならないから無理としても、他に名前が知られるのは少々遠慮願いたいので、そちらの方もお願いしてみると――
「そういうことでしたら、私が専属の受付になりましょうか?」
意外な返答が返ってきた。専属の受付だと? 詳しく聞いてみよう。
「えっ?そんなことできるんですか? できるならお願いしたいのですが――」
「高レベルの冒険者になると、結構やっている人がいますので、大丈夫です。ほら、あのパーティーも専属の受付嬢がいるんですよ。"あー羨ましい"」
彼女が見た先には俺がじろじろ見ていたパーティーがいた。
「あのパーティーは有名なのですか?」
「えっ、あなた知らないの? あのパーティーはチーム『ドラゴンバスター』と言って、リーダーは、世界に10人しかいないと言われている、Sランクのクロム・ロイよ。"私だってお近づきになりたいのに"」
(どうでもいいが、この受付嬢さっきから心の声がダダ漏れだな。大丈夫か? プロじゃなかったのか?)
「それでは、私も早く高ランクになれるよう頑張りますね!」
そう言って黒ローブ姿のアスカは、証明部位をリュックから取り出し、次々とカウンターに並べていく。
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