第27話 ランクアップを目指そう ○
さて、馬車の中ではマイケルとテスターの治療が行われていた。傷は深かったものの、2人はミドルポーションを持っていたので、歩けるまでには回復している。
アスカに治癒させることも考えたが、学生候補のふりをしているので止めておいた。命に別状がないならいいよね。
そして、レコビッチさんからはめっちゃ感謝された。アスカがいなければ全滅していただろうし、荷物も無事ではすまなかっただろうから、というのが理由らしい。
そういえば、さっきのイービルウルフでアスカのレベルが上がっていたな。スキルは変わらないから、ステータスだけでも確認しておくか。
名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女
レベル 17
職業 賢者(大賢者)
ステータス
HP 42(220)
MP 52(230)
攻撃力 42(220)
魔力 62(240)
耐久力 42(220)
敏捷 52(230)
運 52(230)
スキルポイント 68
イービルウルフとの戦闘の後は、順調な旅が続き、その間スコット達からポーションやマナポーションなどのアイテムについて教えてもらった。
錬金術のスキルで作れるらしいが、あまり人気のあるスキルではないらしく、錬金術師はそう多くないらしい。ましてやレベルの高い錬金術師は、世界でも数えるほどしかいないそうだ。
ちなみに、適正レベルのものを生産することで、経験値が入るらしい。ただ、それだとレベルを上げるのにすごく時間がかかるので、冒険者を雇ってパワーレベリングをしたりするそうだ。その話を聞いて、やっぱり自分の能力がいかにチートなのかを再確認した。
馬車に乗せてもらってから4日、予定通り王都に到着した。王都の入り口で、別れ際にレコビッチさんが手紙を渡してくれた。何でもレコビッチさんは、ここ王都でいくつもの店を出している、大物商人なのだそうだ。今度、正式にお礼をしたいから、屋敷を訪ねてほしいと言われた。手紙を使用人に渡せば、すぐに中に通される手はずになっているらしい。
「それでは、レコビッチさん、スコットさん、ローズさん、マイケルさん、テスターさん、お世話になりました」
「アスカさん、必ず屋敷を訪ねてくだされよ。入学試験も頑張ってくだされ」
レコビッチさんが、名残惜しそうにアスカの両手をつかみながら必ず屋敷を訪れるように念押ししている。念を押すのはいいが、手を握るな手を! アスカが戸惑っているだろう!
「アスカ、あなたには1つ借りができたね。私達はしばらく王都に滞在するつもりだから、何か困ったことがあったら冒険者ギルドを訪ねてきな。力になるよ」
パーティーを代表してか、ローズにも改めてお礼を言われた。知り合いが少ないので、こういった申し出は大変ありがたい。しかし、当のアスカは恥ずかしかったのか、返事もそこそこにその場を後にしてしまった。
(アスカ、まずは宿を探そう。それから学院の入学試験について情報を集めよう)
(そうだね。行こう、王都に!)
「わぁ、すごい人!」
王都に入るとまず目に付くのは人、人、人。たくさんの人が歩いている。王都は中央にある王城と、4つの区域に分かれており、街の北東が居住区、南東が商業区、北西が低所得者層が集まる貧民街、南西が冒険者地区となっている。宿は冒険者地区に多く建っているようだ。
まずは宿を探して、冒険者地区へ行ってみる。あまり高級過ぎず、かといってボロ過ぎず、目立たないように中くらいの宿で部屋を借りた。それから、荷物を整理して、身体をきれいにしてから街へと繰り出す。
ここ王都にある2つの学院は、いずれも王城のすぐ近くにあるらしいので、早速見に行ってみた。入学試験が近いせいか、受験生と思われる若者が多く歩いている。お目当ての国立王都魔法学院はすぐに見つかり、学院の入り口まで行くと、入学試験の案内掲示が貼ってあった。
(えーと、入学試験は7日後だね。試験内容は筆記試験と実技試験だって。実技はいいとして、筆記試験ってどんな内容なんだろう? この世界の歴史とか聞かれたら全然わからないよ)
(それを勉強するために学院に入るようなもんだからな。とりあえず、試験まで7日間あるから、冒険者ギルドでクエスト受けて、レベルとランクを上げて、実技試験で高得点をとれるようにしよう。ついでにお金も稼いでおかねば)
(そうだね。どのくらいで合格できるのかわからないから、できるだけ強くなっておきたいな)
途中で人に見られないように、黒ローブを羽織り、冒険者ギルドへ向かった。
「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用ですか?」
さすがは王都の冒険者ギルド。建物の大きさも、セルビスの町のギルドの軽く10倍はありそうだ。冒険者の数も多いが、クエストもFランクからSランクまでそろっている。Sランクのクエストなんて初めて見ましたよ。
「えーと、クエストを受けに来ました」
「はい。ギルドカードはお持ちですか?」
セルビアの町でDランクまで上げていたので、赤色のギルドカードを渡す。
「Dランクのアスカさんですね。承りました。クエストはそちらの掲示板に貼っていますので、受けたいものがあればこちらに持ってきてください。パーティー参加希望の場合は、そちらの専用掲示板に必要事項を記入して貼ってください」
「わかりました。とりあえず、ソロで受けるつもりなので、クエストを見てきますね」
C級のクエストもたくさん貼られている。その中でも手っ取り早い討伐系のクエストを選ぶ。セルビアでCランクを2つ達成してるから、あと3つでCランクに上がるはずだ。ついでにBランクのクエストも覚えておいて、証明部位だけでもとっておこうかな。2度手間にならなくて済みそうだし。
(お、イービルウルフの討伐がある。証明部位の牙は持ってるから、これは受けておこう。それと、ワイバーンとコカトリスの討伐を受けよう。Bランクは……ゴブリンキングやオークロード、ヘルハウンドあたりか、近くにいたら狩っておこう)
「これと、これと、これをお願いします」
アスカがC級の依頼書を3つ受付に差し出す。
「Cランクを3つ同時にですか? その失礼ですが、大丈夫でしょうか? Dランクの方がソロでCランクを受けるなんて、聞いたことがないものでして。ましてや3つ同時なんて」
「あ、問題ないです。それでお願いします」
アスカというか黒ローブの勢いに押され、受付のお姉さんは心配そうな顔をしながらも、クエスト用紙を受け取ってくれた。ついでに、近くの狩り場について聞いておくのを忘れない。
お姉さんによると、ワイバーンやコカトリスは王都の西にある、タッカート山脈に生息しているらしい。ゴブリンやオークも、山の
よし、行き先は決まった。目指すはタッカート山脈だ!
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