第22話 vs クイーンアント ○

強突風エアブラスト!」


 まずは初手。キラーアントに囲まれていたレスターを、風操作で吹き飛ばす。


雷の閃光サンダースパーク!」


 アスカの声で数十もの雷の玉がキラーアントの周囲に浮かぶ。その雷の玉が一斉にキラーアントの集団目がけて飛んでいった。


 バチッ!


 雷の玉が弾け、無数の小さな稲妻となって広がった。その稲妻に触れたキラーアントは小刻みな痙攣を繰り返しながら動かなくなる。

 吹き飛ばされたレスターは、柔らかい土で作られた石の壁ストーンウォールで受け止められていた。


紅炎の鞭プロミネンスウィップ!」


 痺れて動けなくなったキラーアントを、炎の鞭が容赦なくと焼き尽くしていく。固い外殻も、アスカの魔法の前では全く役に立っていないようだ。


永久凍土パーマフロスト!」


 続いてアスカは、かろうじて炎に耐え動いていたクイーンアントを、巨大な氷の柱で閉じ込めた。時間をかければ焼き尽くすことも可能だが、できるだけ素材が残るような倒し方をする気だな、アスカは。


大気の刃エアリアルブレード!」


 氷の柱ごとクイーンアントを真っ二つにして終了だ。うんうん、クイーンアントの外殻は傷らしい傷がないくらい、きれいな状態だ。上手くやったなアスカ。


「終わりました!」


「「「………」」」


 おや、3人とも口を開けて固まっているな。シーラのこんな顔は珍しい。レスターに至ってはまだ石の壁ストーンウォールに半分埋まっているし。


「あのー、みなさん大丈夫ですか?」


「「「ハァァァァ!?」」」


「おかしいです!おかしいですわ絶対に! 土操作どころか、炎に氷に雷に風のLv3の魔法が飛び交っていたように見えましたの。見えましたのよ」


 シーラさん、喋り方がおかしくなってますよ……


「なんかね、風がブォーンって吹いて、雷がバチッていって、炎がグワーッてなって、氷がピキーンってなって、赤い蟻が切れた」


 エリック、お前は幼稚園児か……


「吹き飛ばされたら終わってた……」


 どんまいレスター。


 アスカの暴走に3人がおかしくなってしまった。俺もちょーっとやり過ぎじゃないかとは思ったが、やってしまったことはしかたがない。どうするかはこの3人に任せよう。


「ごめんなさい!何も聞かずに今日という日を終わらせてください!」


「ちょ、ちょっと、そ、相談させてくれ……」


 そう言ったレスターの元に3人が集まり、何やらブツブツ言いながら相談が始まった。


「これ、どうな……るの?どうい……と?」

「もう……の手に終……ではないと……ますのよ」

「ドカーン、バチーン、ビューン」

「エリックしっ……ろ!」

「はっ!?」

「でも、わた……契約し……約……を守……務がありますわ」

「そうだな、それにア……がみん……せ物になるのは……れない」

「というか……らが何を言……アス……められない……」


 相談と言いつつほとんど聞こえてるな。まあ、この3人なら悪い方向にはいかないだろう。これは放っておいても大丈夫そうだな。

 それより、アスカのレベルが上がってスキルポイントが丁度300になったな。自分のLvを上げて、全てのスキルをLv3にしておくか。


 名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 16 

 職業 賢者(大賢者)

 ステータス

 HP  40(200)

 MP  50(210)

 攻撃力 40(200)

 魔力  60(220)

 耐久力 40(200)

 敏捷  50(210)

 運   50(210)   

 スキルポイント 0

 スキル

 (剣術 Lv3)

 (炎操作 Lv3)

 (風操作 Lv3)

 (水操作 Lv3)

 土操作 Lv1(土操作 Lv3)

 (氷操作 Lv3)

 (雷操作 Lv3)

 (光操作 Lv3)

 (闇操作 Lv3)

 (重力操作 Lv3)

 (時空操作 Lv3)

 治癒 Lv1(治癒 Lv3)

 (全物理耐性 Lv3)

 (全属性耐性 Lv3)

 (全状態異常耐性 Lv3)

 (思考加速 Lv3)

 (身体強化 Lv3)

 (無詠唱)

 (魔力増大)

 (消費魔力半減)

 (魔力回復倍化 Lv3)

 (経験値倍化 Lv3)

 (経験値共有 Lv3)

 (スキルポイント倍化 Lv3)

 (ステータス補正 Lv3)

 (自動地図作成)

 (鑑定 Lv3)

 (隠蔽 Lv3)

 (探知 Lv3)

 (危機察知 Lv3)

 (鍛冶 Lv3)

 (錬金 Lv3)

 (付与 Lv3)


 4属性も一気に使ったからか、職業が大賢者に変わってるな。よくわかんないけど、目立ちそうだからとりあえず隠蔽しておくか。

 ステータス的には補正がない人達でいうレベル40を超えたところか。操作系スキルは魔力増大のおかげでLv4まで使えるようになったな。治癒もLv4相当だから部位欠損まで治せちゃうのか。使いどころを間違えると大変なことになりそうだ。

 それから身体強化は80%アップ、思考加速は10倍になったのね。探知も半径500mから1kmに広がったぞ。スキルポイント倍化にステータス補正も4倍にアップしたから、レベルが上がるのが楽しみだな。


 俺が色々と確認をしていたところで、3人の相談が終わったようで、レスターが代表してアスカにその結果を伝えるようだ。


「アスカ、俺たちは何も見なかった。ただ、君が俺らの命を救ってくれたことには変わらない。心からお礼を言う。ありがとう」


 エリックもシーラも頷いている。やっぱりね、こいつらならそう言ってくれると思ったよ。


「みなさん、私のわがままを聞いて下さって本当にありがとうございます」


 アスカも心配はしていなかっただろうが、改めてそう言われてホッとしたのだろう、深々と頭を下げたその顔には安堵の表情が浮かんでいた。


「魔法使いの私としては、真相を知りたいのはやまやまですが、アスカを敵に回してまで問い詰めることはないわ」


 おお、魔法オタクのシーラが自重している。よっぽどアスカが怖かったんだな。


「僕はあまりの衝撃に自分を見失っちゃった。恥ずかしい姿を見せてしまったね。できれば忘れてほしい」


 うぷぷ。幼児退行してしまったエリック。思い出しただけで笑いが止まらない。これからつらいことがあったら、その度に思い出させてもらうとしよう。


「シーラさんもありがとう。エリックさん、面白かったので一生忘れません!」


 アスカの一言でシーラは微笑み、エリックは愕然とした表情で崩れ落ちてしまった。


「それじゃあ、素材を回収して町に戻ろうか」


 リーダーであるレスターがこの場を締めて、4人はキラーアントの使えそうな素材と、クイーンアントを丸々一匹回収して町へと戻っていった。


 帰り道は、クイーンアント達との戦いの話で盛り上がっていた。主に土に埋まっていたレスターと、幼児退行したエリックがからかわれる形で。

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