第21話 キラーアントの巣 ○

 ブラッドベアーを2体倒したところで、予想通りのファンファーレ。


 レベルアップ

名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 14⇒15 

 職業 賢者

 ステータス

 HP  170⇒38(185)

 MP  180⇒48(195)

 攻撃力 170⇒38(185)

 魔力  190⇒58(205)

 耐久力 170⇒38(185)

 敏捷  180⇒48(195)

 運   180⇒48(195)   

 スキルポイント 252

スキル

 (剣術 Lv2)

 (炎操作 Lv2)

 (風操作 Lv2)

 (水操作 Lv2)

 土操作 Lv1(土操作 Lv2)

 (氷操作 Lv2)

 (雷操作 Lv2)

 (光操作 Lv2)

 (闇操作 Lv2)

 (重力操作 Lv2)

 (時空操作 Lv2)

 治癒 Lv1(治癒 Lv2)

 (全物理耐性 Lv2)

 (全属性耐性 Lv2)

 (全状態異常耐性 Lv2)

 (思考加速 Lv2)

 (身体強化 Lv2)

 (無詠唱)

 (魔力増大)

 (消費魔力半減)

 (魔力回復倍化 Lv2)

 (経験値倍化 Lv2)

 (経験値共有 Lv2)

 (スキルポイント倍化 Lv2)

 (ステータス補正 Lv2)

 (自動地図作成)

 (鑑定 Lv2)

 (隠蔽 Lv2)

 (探知 Lv2)

 (危機察知 Lv2)

 (鍛冶 Lv2)

 (錬金 Lv2)

 (付与 Lv2)


「危なかった。アスカがいなかったら、3人ともここで死んでいたかもしれない。2体目が来るかもしれないことを予想していなかった俺のミスだ。すまない」


 レスターが頭を下げる。


「いや、僕らも完全に油断していた。心の隅にアスカがいるから大丈夫っていう思いがあったみたいだ」


「そうですわね。アスカは今日でレベル16になってしまうわ。元々、16までっていう約束だから今日が一緒にいれる最後だと思いますのよ。明日からまた3人で戦わなければならないとなったら、今のミスは致命的ですわね。私も心のどこかで油断していたようです。これを教訓としましょう」


 いつもはレスターをからかっている2人だが、こういったところではきちんとリーダーを庇うことができるようだ。

 2人の言葉にレスターの悔しそうに歪んでいた顔が、引き締まったものに変わっていく。本当にいいパーティーだな。抜けるのが惜しいくらいに。


「シーラさん、気づいてたんですね。寂しくなるから黙っていたのですが」


 さすがシーラ。いつも冷静で視野が広く、常にパーティーのことを考えている彼女が気がつかないはずがないか。


「えぇ、本当はまだまだ一緒にパーティーを組んでいたかったのよ。でも、アスカはすでに私達の実力を遙かに超える力が身についてるわ。このままだと私達は足手まといになるだけだわ。最初の予定通り、アスカが16になったら別行動をとった方がいいわね」


 そう話すシーラだが、その顔はすごく悲しそうだ。


「そっか、そうだよね。ずっと一緒にいたかったけどシーラの言う通りかも。3人でようやく倒せる魔物を、アスカは瞬殺だもんね。アスカはもっと上を目指すべきだよね」


 普段はおちゃらけているエリックも、真剣な顔でシーラに同意している。


「そうだよな。2人の言うとおりだ。俺も、もっとしっかりしないとだめだな」


 そしてリーダーのレスターも、2人の意見に賛成のようだ。


「今日のクエストが終わったら言うつもりでしたが、こんな雰囲気にしてしまってすいません。でも、まだクエストは残ってますので、最後までよろしくお願いします」


 こんな風に言われたら、このパーティーに残りたくなっているだろうな、アスカは。でもそれはお互いのためにならない。俺とアスカで話し合って決めたことだ。アスカもこう言ってるんだし、俺もしっかりしなくては。


「いえ、この雰囲気を作ってしまったのは私でしたね。アスカの言うとおりですわ。まだ、クエストが残っていますから、それをしっかり片付けてからギルドでお別れパーティーをしましょう」


 シーラもこの雰囲気のまま終わるのは得策じゃないと考えたのだろう、アスカの提案に乗っかって明るい声で言った。


「そうだね、そうしよう。お金もいっぱい稼いだから盛大にお別れしよう!」


 そしてエリックの屈託のない発言でみんなに笑いが戻る。戦闘だけじゃなくて、こういうところでもきちんと役割分担ができているんだよね。おもしろいパーティーだ。


「みなさん、ありがとうございます」


 アスカはちょっと涙ぐんでいるようだ。えっ? 俺? もちろん大号泣だよ!




 気を取り直した4人は、慎重にソーマの森の奥深くへ入って行く。途中でE級の魔物を何体か倒した後、木々が開けたところに出た。そこは森の中にしては珍しく、茶色い地面が見えているところがいくつもある。

 その一箇所に人ひとりが余裕で入れそうな穴が空いていた。そして、その中からはひっきりなしに、金属が擦れるような音が聞こえてくる。


「これがキラーアントの巣だ。中には数十体のキラーアントとクイーンアントが1体いるはずだ」


 レスターが言う通り、すぐに1体のキラーアントが穴から這い出てきた。


「で、どうやってクイーンアントを引きずり出す?」


 エリックが警戒しながら小さい声でレスターに問う。このキラーアントはすぐに仲間を呼ぶことで有名な魔物だ。先に気がつかれたらやっかいだから、みんな慎重に行動している。


「そのためにこれを持ってきた」


 そう言ってレスターは、油がたっぷり染み込んだ布を取り出した。


 レスターが用意した作戦はこうだ。まず、エリックの矢の先端にこの布を巻いて、火をつけてから巣の中に打ち込む。さらにその煙が巣の中に充満するように、シーラが風を操作する。

 すると煙を嫌ったキラーアントが次々と出てくるから、レスターとアスカで一匹ずつ処理していくようだ。エリックとシーラは2人をサポートしつつ、クイーンアントが出てきたら足止めをする。その間にレスターとアスカでキラーアントを処理して、全員でクイーンアントを倒す。


 この作戦の肝は、レスターとアスカがどれだけ早くキラーアントを処理していけるかだな。


「了解!」


 作戦を理解したエリックが布を矢に取り付け、レスターが火をつける。火がついた矢は1発で巣の中に吸い込まれていった。そこにシーラが風を送り込む。次の瞬間……


「ギシャャャ!」


 巣からキラーアントが次々と飛び出して来た。だが、アスカは石の針ストーンニードルで素早く、確実に仕留めて行くが、レスターは硬い外殻に阻まれて手こずっている。仕留めきれなかったキラーアントがレスターの周りに集まり始めた。


「くっ!」


 キラーアントの攻撃がレスターの腕を捉えたその時……


「出た!」


 エリックが叫んだ直後に姿を現わした、鮮やかな赤色に染まったキラーアントの女王、クイーンアント。


 シーラがすかさず風の圧力エアプレッシャーを放つが、効果は薄いようだ。エリックの矢もキラーアントの数倍硬い外殻に弾かれ、ダメージを与えられない。


(アスカ、これはまずい。少し本気を出さないとレスターがやられてしまう)


 複数のキラーアントに囲まれて防戦一方のレスターのもとに、クイーンアントまで加わったら一気にバランスが崩れ、やられてしまうだろう。


 3人も気づいているようだが、打つ手がなく、顔を青ざめながらも必死に耐えているという感じだ。


「レスターさん、少し本気で行きます。荒っぽくなるけどごめんなさい」


 その後に起きた出来事を、3人は一生忘れることがないだろう。

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