第18話 試し切りとスキルの実験

 今日の俺は朝からハイテンション。なぜなら妹と買い物に行くからだ!

 前世では文房具やお菓子、リュックなんかを買いに行ってたもんだ。でも、今日買いに行くのは剣や防具なんだよな。癒し要素が一切ないな……




「いらっしゃいませ。本日はどのような武器をお探しですか?」


 まずアスカが入ったのは武器屋だ。近接攻撃用の剣を買いに来たのだが……正直、剣についての知識など全くない俺は、愛する妹にアドバイスすることができない。


「えーと、出来るだけ軽くて丈夫で切れ味のいい剣をください」


 仕方がないので、店員さんに聞いてもらうことにした。


「こちらに並んでいるアイアンソードは、全て一振り5万ルークになります」


 ほう、アイアンソードということは鋼鉄製なのかな? ミスリルソードとかがあれば見てみたかったな。


(アスカ、そのアイアンソードを試してみよう)


(うん、これだよね?)


 俺のアドバイス通り、アスカはアイアンソードを一振り手にし片手で何度か振ってみた。


(よくわからないけど、振りやすくていいかも。これにするね)


 アスカはこのアイアンソードを気に入ってくれたようだ。俺の鑑定でも一番いいできみたいだし、このアイアンソードを買うことにした。




 次に訪れたのは防具屋だ。ここでは全身が隠れるローブが欲しいと思っている。この先、目立つようなことをしなければならない時でも、ローブがあれば正体がバレないと思ったからだ。


「これにします」


 アスカはいくつかの商品を見た後、2万ルークの黒いローブを買った。フードを被れば顔がしっかり隠れる感じのやつだ。ついでに黒いマスクのようなものも買ったので、顔がバレることはないだろう。

 普段はリュックに入れておいて、正体をバラしたくない時は着れば完璧だ。


 それにしても、女の子の買い物は時間がかかるのが定番のはずなんだが、アスカの買い物の早いこと。


 もしかして、俺に気を遣ってるのか?


 買い物を終えると、片手剣を腰に差した職業【賢者】が出来上がった。自分で勧めておいていうのも何だが、違和感しかないな。まあ、職業はこの先も変わっていくだろうし、とりあえず今は良しとしよう。


 日も高くなって来たし、お昼を食べて午後からはスキルの実験だ。





 昼食を食べ終えた後、実験のためにソーマの森の中程まで来た俺達は、都合よく単体のブラッドベアーを発見した。Cランクの魔物で、ジャイアントボアより一回り大きい。目が赤く充血しており、気性は荒そうだ。見た感じ、鋭い爪と牙が武器で意外と動きも速そうだな。


(まずは剣術スキルを試そう)


(わかった)


 剣術スキルはLv2なので"双極斬"と"衝撃斬"のスキルが使える。また剣術スキル自体にパッシブ効果があるようで、剣での攻撃力に30%の上昇補正がかかっている。さらに身体強化で攻撃力、耐久力、敏捷のステータスが50%アップしているので、Cランク程度では相手にならないはずだ。


 ブラッドベアーがアスカを見つけ、素早く戦闘態勢に入った。一気に距離を詰め、後ろ足で立ち上がり腕を振り上げる。


「双極斬」


 アスカが呟いた時には、ブラッドベアーの両腕が地面に落ちていた。


「衝撃斬」


 次の瞬間、声を上げる暇もなくブラッドベアーの首が爆発した。


(戦士でもやっていけるやん……)


 身体強化を含めれば、ステータスの中で1番低い攻撃力ですら、レベル40の【戦士】並みになっている。わかってはいたけど、Cランク程度は瞬殺だった。


(次は操作系を試そうか)


(うん)


 操作系は魔力増大のおかげでLvが一段階上がっているから、Lv3相当の威力がある。と言うかLv3の魔法も使えるみたいだ。やばいな魔力増大のスキル。

 よし、試しにどのくらいの威力なのか確かめてみるとしよう。


 少し歩くと都合よくキラーアントの群れが見つかった。キラーアントは体長2mほどの黒いアリのような魔物だ。1匹のランクこそDランクだが、群れとなった時にはCランクのブラッドベアーすら食い殺してしまう。硬い外殻は武器や防具の素材になるので、意外といい値段で売れるらしい。


(ただ試しても面白くないから、並列思考を使って2属性の魔法を同時に使ってみよう)


 ちょっと昨日の夜思いついたことをアスカに試してもらう。


(オッケー。何から試そうか?)


(炎操作のLv3紅炎の鞭プロミネンスウィップと土操作のLv3石の壁ストーンウォールを使おう)


(わかったよ)


「右手で紅炎の鞭プロミネンスウィップ、左手で石の壁ストーンウォール!」


 結果は凄まじかった。石の壁に四方を囲まれ、逃げ場をなくしたキラーアントの群れが、同じく逃げ場を失って暴れ回る炎の鞭によって薙ぎ払われていく。


(これはヤバイ。Lv3なら単独でも相当の威力だが、組み合わせによって何倍にも威力が高まるな)


 その後もいくつか試してみると、面白いことが起こった。闇操作のLv3状態異常デバフレイションと水操作のLv3水球牢ウォータープリズン を使ったとき、2つの魔法が合体して1つの魔法になったのだ。毒を含んだ水球が弾けて広がり、複合魔法毒の霧ポイズンミストが発動したのだ。

 他の組み合わせでは発動しなかったので、Lv4以上の魔法を覚えたときにまた色々試してもらおうと思った。


 ついでに実験の最中にアスカのレベルが1つ上がっていた。


名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 13

 職業 賢者

 ステータス

 HP  34(155)

 MP  44(165)

 攻撃力 34(155)

 魔力  54(175)

 耐久力 34(155)

 敏捷  44(165)

 運   44(165)   

 スキルポイント 165

スキル

 (剣術 Lv2)

 (炎操作 Lv2)

 (風操作 Lv2)

 (水操作 Lv2)

 土操作 Lv1(土操作 Lv2)

 (氷操作 Lv2)

 (雷操作 Lv2)

 (光操作 Lv2)

 (闇操作 Lv2)

 (重力操作 Lv2)

 (時空操作 Lv2)

 治癒 Lv1(治癒 Lv2)

 (全属性耐性 Lv2)

 (全状態異常耐性 Lv2)

 (思考加速 Lv2)

 (身体強化 Lv2)

 (無詠唱)

 (魔力増大)

 (消費魔力半減)

 (魔力回復倍化 Lv2)

 (経験値倍化 Lv2)

 (経験値共有 Lv2)

 (スキルポイント倍化 Lv2)

 (ステータス補正 Lv2)

 (自動地図作成)

 (鑑定 Lv2)

 (隠蔽 Lv2)

 (探知 Lv2)

 (危機察知 Lv2)

 (鍛冶 Lv2)

 (錬金 Lv2)

 (付与 Lv2)


(さて、そろそろ町に戻ろうか)


 辺りも暗くなってきたので、アスカに止めにしようと声をかけた。 


(そうだね。お腹も減ったし帰ろうか)


 思いついたことを一通り試した俺達は、いい時間になったので街へと帰ることにした。




 ギルドに戻り、素材を売ったお金でアスカは夕食を食べる。今回はC級のブラッドベアーの素材があったため、合わせて20万ルークで売れた。冒険者って儲かるね。


 夕食の後は宿に戻って、装備のお手入れをして寝る。アスカは鍛治のスキルもあるから、お手入れもバッチリなのさ。

 でも本当ならば、お肌の手入れをして寝るのが普通だったのに。この世界に来たことを、アスカはどう思っているのだろうか。


 可愛いアスカの寝顔を見ながら、俺は一人そんなことを考えていた。

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