第15話 ジャイアントボア再び

「「「えーーー!!!」」」


「何ですかいまのは? まさかアスカの魔法ですか?」


「僕の矢が意味なーい!」


「俺の作戦も意味なーい!」


 シーラ、レスター、エリックが口々に叫ぶ。


(なんじゃいまのはー!)


 俺も一緒に叫ぶ。


「てへ、やり過ぎちゃいました」


「「「やってることが、かわいくない!」」」


 目の前で起こったことにパニックになっていた3人だが、ファンファーレの音で一気に現実に戻ってきたようだ。現金なヤツらめ。


「やった! これでようやくスキルが手に入る!」


 目の前で起こった信じられないことを、もう忘れてしまったかのように、エリックが早速スキルを選び始めた。他の2人も呆れたような顔になりながらも、すぐさまスキル選びに夢中になっている。よっぽど待ち遠しかったんだね。

 そうそう、もちろんアスカもレベルが上がっているよ。


 

 名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 8⇒10

 職業 神官⇒賢者

 ステータス

 HP   28(110)

 MP   38(120)

 攻撃力 28(110)

 魔力  48(130)

 耐久力 28(110)

 敏捷  38(120)

 運   38(120)   

 スキルポイント 57

 スキル

 (剣術  Lv2)

 (炎操作 Lv2)

 (風操作 Lv2)

 (水操作 Lv2)

 土操作 Lv1(土操作 Lv2)

 (氷操作 Lv2)

 (雷操作 Lv2)

 (光操作 Lv2)

 (闇操作 Lv2)

 (重力操作 Lv2)

 (時空操作 Lv2)

 治癒 Lv1(治癒 Lv2)

 (全属性耐性 Lv2)

 (全状態異常耐性 Lv2)

 (思考加速 Lv2)

 (身体強化 Lv2)

 (無詠唱)

 (魔力増大)

 (消費魔力半減)

 (魔力回復倍化 Lv2)

 (経験値倍化 Lv2)

 (経験値共有 Lv2)

 (スキルポイント倍化 Lv2)

 (ステータス補正 Lv2)

 (自動地図作成)

 (鑑定 Lv2)

 (隠蔽 Lv2)

 (探知 Lv2)

 (危機察知 Lv2)

 (鍛冶 Lv2)

 (錬金 Lv2)

 (付与 Lv2)


 職業が【賢者】になってるな。治癒と操作系魔法の両方を使用していたからだろうか。それと、今朝話してた剣術も付けておくか。


「えへへ、やっと、スキルを付けることができた」


 エリックは最早、泣き出しそうな勢いである。


「これで私もようやく一人前の魔法使いに……」


 普段冷静なシーラも感極まって震えている。


 意外にもレスターは落ち着いており、剣を振りながら何かを確かめているようだ。


 ザシュ!


 不意にレスターがそばにあった木を切りつけた。一度しか振ってないように見えたのに、切り傷は2本ある。


「おぉ、オオォォォ!」


 全然冷静じゃなかった。一番、興奮してたわ。


 スキルを覚えると威力や速度が上がるのはもちろんだが、決して技術では真似できない技が使えるようになるのだ。今、レスターが放ったのは、剣術スキルで"双極斬"と言うらしい。


「ねぇ、レスター、そんな動かない木を切っても仕方ないでしょ。早く新しいスキルを実戦で試しましょうよ」


 シーラが待ちきれないといった様子で、レスターの腕を引っ張っている。エリックもすでにスキルを選び終えたようで、満面の笑顔で頷いているし。


「ごめん、ごめん。本当にできるようになるのか試してみたくて」


 レスターは自分のスキルに満足したようで、剣を鞘に納めながら倒したオークの元へと歩みよる。4人は手早くオークを解体し、次の目的地に向うのであった。


「さあ、次はジャイアントボアだ!」


 


 4人は昨日とは別の場所からソーマの森に入り、奥に行き過ぎないようにジャイアントボアを探す。アスカの探知スキルを使いながら、F、E級の魔物はできるだけ無視する作戦のようだ。


「反応がありました。正面500m先、おそらくジャイアントボア2体です」


「2体! 早速、僕の2本撃ちダブルショット を試してみたいな!」


 2本撃ちダブルショット は矢を2本同時に放つ技だ。威力も上がっているから、今度はジャイアントボアの毛皮も貫通できそうだ。


「私も風の刃ウインドエッジを試したいですね」


 風の刃ウインドエッジはアスカがブラックウルフを倒すのに使った魔法だな。


「今回もエリックの奇襲から始めよう。その後、僕が左をシーラが右にとどめをさす。アスカは万が一討ちもらした時に援護を頼む」


 すぐに作戦が決まり、それぞれ配置に着く。


2本撃ちダブルショット !」


 エリックが放った矢は、両方のジャイアントボアの眉間に深々と刺ささった。それだけでは絶命に至らないが、すぐにレスターの双極斬とシーラの風の刃ウインドエッジが致命傷を与える。


 前回はたった1頭に苦戦していたのに、今は2頭を瞬殺だ。それだけスキルの力が凄まじいということなのだろう。ちなみにシーラはちゃんと詠唱していました。


「瞬殺だったわね。スキルがあるだけでこうも簡単に倒せるなんて、みんなが必死になってスキルを覚えようとするわけだわ」


 倒れたジャイアントボアを見下ろしながら、シーラが率直な感想を述べた。


「そうだね。たった一つLv1のスキルがあるだけでこんなに強くなれるなら、スキルを複数持つ高ランクの冒険者が理不尽な強さを持ってるのも納得だね」


 エリックも矢を回収しながら同意する。


「そんなスキルを初めから5つも持っている、とんでもちゃんもいるけどね」


 おっと、レスターの言葉がちくちく刺さってくるな。でも仕方がないんだよ。兄とは、愛する妹にできる限りのことをしてあげたいものなのだよ。そしてごめんなさい。今は32個付いてます。


 そんなレスターの言葉にアスカも苦笑いしてる。


「まあ、いいわ。味方ならこれほど心強いことはないから。さあ、ジャイアントボアを解体してさっさと次を探しましょう。先ほどのオークの素材で鞄が一杯なので、証明部位しか持てないのが残念だけど」


「では、私のリュックにまとめて入れておきますね」


 シーラの言葉にアスカが答え、2体のジャイアントボアの死体をリュックに入れる。


「えっ?」(シーラ)


「はっ?」(レスター)


「にょ?」(エリック)


(ん?)(俺)


「何か?」(アスカ)

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