第14話 オーク討伐

 次の日の朝、アスカに起きてからすぐ、リュックに空間拡張を付与させた。ついでに時間停止も付けさせておく。異空間よりよっぽど収納力が高いものができあがった。


(お兄ちゃん、このリュックは目立たないの?)


(うーん、こんなに簡単に作れるんだから、全くないってことはないだろう。最悪、家宝とか遺品とかで誤魔化そう)


 素晴らしい魔法の鞄マジックバッグを作り終えたアスカは、宿で朝食をとり身支度を整えてからギルドへ向かう。歩きながら近接攻撃用の武器の話をしてみたが、どうやら使うなら『剣』がいいらしい。


 レスターに憧れてるわけではないよね? 我が妹よ、信じているぞ!





「おはようございます。レスターさん、エリックさん、シーラさん」


「「「おはよう、アスカ」」」


 ギルドで朝から元気にハモっている3人組に、あいさつをするアスカ。さて、今日のクエストは何かな。


「今日はこれを受けようと思うんだけど、どうだろう?」


 レスターが出してきたのは、昨日倒したジャイアントボアの討伐依頼と、オーク集団の討伐依頼だ。


 何でも、オークの集団が街道に現れ、旅人や商人が襲われたとの情報が入ったと言うのだ。こういった緊急性の高いクエストはもらえるポイントが多く、ランクを上げるには絶好の依頼らしい。


 オークの集団にはD級のオークメイジも数体確認されており、どちらのクエストもDランクだ。この手のクエストは同時に複数枚貼られており、達成は早い者勝ちらしい。


「私はいいと思う。アスカがいれば、D級でも楽勝になると思うから」


 おいおい、過大評価しすぎだろ。もしかして昨日話した5つ以外にも、スキルを持ってると疑ってるのかな。これは気を引き締めた方がよさそうだ。


「僕も賛成。オークの方は緊急性が高いみたいだから、早く行こうよ」


 エリックも随分早く戦いたがっているな……

 そうか、やけにこいつら張り切ってると思ったら、あと1つレベルが上がればスキルを1つ付けれるようになるんだな。


(みんな、何のスキルを付けるんだろうね?)


(そりゃあ、レスターは"剣"、エリックは"弓術"、シーラは"風操作"だろう)


(そっか、早く上がるといいね)


 俺との会話で察したアスカが、素直な気持ちを言葉にする。


「みなさん、早くレベルがあがるといいですね」


「あ、早くレベルを上げたいのがバレちゃったかな。僕らもあと1つあがればスキルを獲得できるから」


 レスターが恥ずかしそうに頬をかいている。まさか、ここにきてかわいいキャラを狙ってるわけじゃあないだろうな。


「さ、おしゃべりしてないで出発しましょう。オークが他のパーティーに倒されちゃいますよ」


 シーラの一言でレスターも慌てて歩き出す。まずは街道沿いを歩いて、オークが出没した地点まで向かう予定だ。





「道から西に300mほど外れた地点にオークが10体ほどいます」


 小1時間ほど歩いたところでアスカの探知に反応があったようだ。


「へぇ、こんなに遠くからでもわかるんだ。弓術の次は探知でもとろうかな」


 弓は遠距離からの先制攻撃が可能な武器だ。探知スキルを持っていれば格段に戦いやすくなるだろう。スキルナビゲーターお勧めのスキルだね。


(やっぱりエリックさんは弓術スキルを狙ってるみたいだね)


(スキルがあるとないとじゃ、威力も速度も全然違うからな)


 並列思考のおかげで、辺りを注意しながらも俺との会話が問題なくできるアスカ。さすがは我が妹だね。


「よし、ここから身を隠しながら、気づかれないように近づいて行こう」


 そう言ったレスターを先頭に、所々草木が生えているところに身を隠しながら、オークの集団に近づいて行く。


「いた。あの木の下に10匹」


 目のいいエリックが最初にオークを確認した。


「オークメイジが何匹いるかわかるかしら?」


 シーラはD級のオークメイジが何匹いるかで、このクエストの難易度が変わると考えているようだ。それはそうだろう、魔法使いはその数が1人増えるだけで、桁違いに強くなるのだ。特に、違う系統の魔法使いが複数いる集団の戦闘力は計り知れない。


「もう少し近づかないとわからない」


 オークメイジは杖を持っているから、もう少し近づけば見分けがつくだろう。オーク達に気づかれないように、じりじりと近づいていく。



「1、2……3匹だね。オークメイジは。集団の真ん中にいる3匹だ」


 集団まであと100mというところまで近づいて、ようやくエリックが確認できたようだ。まあ、俺とアスカは探知と鑑定の併用で全てわかっているけどね。


「レスター、どうします?」


「そうだな。できるだけ奇襲で、オークメイジの数を減らしたいな。エリックの弓と同時に、アスカにも魔法を放ってほしいんだが」


 シーラの一言ですぐにレスターが作戦を立てる。この辺りはなかなか優秀なんだよな。妹はやれないけど。


(お兄ちゃん、どんな魔法を使えばいい?)


(そうだな。本当は炎操作で、火の玉ファイアーボールでも打ち込んだ方がいいんだろうけど。

でも、使えるのは土操作っていうことになってるし……石の針ストーンニードルにしよう。アスカ、一度に何発撃てる?)


(試したことはないけど、かなりの数いけると思う)


(よし、それなら左端をエリックに任せて、右端のオークメイジを狙おう)


「わかりました。エリックさんは左端のオークメイジをお願いします」


「オッケーだよ。気づかれるまで撃ち続けるから、この奇襲でできるだけ数を減らそう」


「はい、いつでも大丈夫です。エリックさんが弓を放ったら魔法を使いますね」


 エリックとアスカの確認が終わり、戦闘準備が整った。


「撃つよ!」


 エリックが矢を放ったその瞬間、トンデモナイことが起こった。


 オークの集団の上に突如現れる石の針……ではなくその大きさはもはや石の槍。その数、数十本。その数十本の石の槍が一斉にオーク達に降り注いだ。突然の事態にオーク達が為すすべなく蹂躙されていく。


 プスッ


 立っているオークがいなくなった後、左端のオークメイジがいたであろう地点に、遅れて矢が突き刺さった。


「「「………」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る