第13話 取り引き ○

前作完結記念で、本日3話更新です。


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「そ、それは……」


(お兄ちゃん、どうしよう。全部正直に話した方がいいのかな?)


(いや、さすがに全部はまずい。とりあえずバレてしまったスキルは、生まれつき持っていたことにしよう。目立ちたくないから隠していたということにして話すんだ)


「正直に言うと、今ご指摘のあったスキルは確かに持っています。生まれたときから持っているので、なぜかと言われると返答に困ります。治癒がLv2相当というのもよくわかりません。ただ、目立ちたくなかったので隠して行動してました」


 うぅ、俺のバカ。もっと慎重になればよかった。妹よ、こんな兄を嫌いにならないでおくれ。


「やっぱりね。でも、生まれつき5つもスキルを持ってるなんて、今まで聞いたことないわ。実際、この目で見ていなかったら信じられないところだったわ」


「ちょっと待って。話についていけないんだが、あれか? アスカは【魔人】か何かか?」


 おいおい、エリック君とんでもないことを言うんじゃないよ。こんなに可愛い女の子が魔人のわけないだろうに。やっちまうぞ!


「えっと、【魔人】とは何でしょうか? 種族で言えば私は【人族】ですが」


「さすがに魔人はないだろう。ちょっと驚いたが、僕にはアスカが悪い人間には見えない。隠していたいスキルを使ってまで僕を助けてくれたわけだし、本当にありがとう」


 レスター、お前もいいやつだな……だがしかし、妹はやれん!


「それで、アスカはこれからどうしたいわけ? ただ目立ちたくないだけなら、わざわざ冒険者登録する必要はないはずよ。ここに来たのは、何か目的があるからじゃなくて?」


 スキルを見破ったことといい、今の発言といい、頭がいいなこの人。さすがは魔法使いを目指しているだけあるな。それにエルフだから、見た目以上に年齢が高い可能性があるな。経験豊富なのかも……と考えていたら一瞬、シーラから殺気が飛んできた気がした!? まさかね?


「実は私、両親を亡くしてしまってひとりぼっちなんです。それで、ひとりで生きていくためには強くなって、お金を稼がなければならないから……幸いスキルをいくつか持っていたので、レベルさえ上がればそれなりに強くなれると思って……」


 俺と相談しながら、事実を半分織り交ぜて話す。ちなみに思考加速もLv2になっているから、アスカとなら通常の5倍の速度で会話が可能なのだ。30秒の会話が現実では6秒しか経ってない。


「そうだったのね。つらいことを思い出させてしまってごめんなさい。私もあなたが悪い人だとは思っていないわ。そこで私たちと取り引きしないかしら?」


「取り引きですか?」


 んん? 取引だと? シーラは一体何がしたいんだ?


「えぇ、私たちはあなたのスキルについて絶対誰にも漏らさないと誓うわ。その上でしばらくパーティーを組んでほしいの。

 見ているのが私たちだけなら、あなたも思う存分力を発揮できるでしょうし、それは私達にとっても、いつもより強い魔物と戦えることになるから、お互いにメリットがあると思うの。どうかしら?」


 驚いた。シーラの言うことは確かに一理あるな。このまま隠し通すのも難しいだろうし、いっそ協力者を作ってしまった方が、結果的には隠しやすいのかもしれないな。


「シ、シーラ。リーダーである僕の意見は……?」


 レスターが悲しい声を上げる。


「絶対私達にもメリットがあるわ。それでも文句あるの?」


「いえ、ありません」


 おいおい、頑張れレスター君。君がリーダーじゃなかったのか? しかし、エルフっておとなしいイメージがあったけど、結構ぐいぐい来るのね。きらいじゃないけど。


 俺としてはアスカが嫌じゃなければ、この取り引きはありだと思っている。そのことを伝えてアスカに判断を任せた。


「わかりました。みなさんを騙していてすいません。とりあえずレベルを16まで上げるのが目標ですので、そこまでご一緒していただけますか?」


「なぜ16なのかは……聞かないでおくわ。とりあえず、取り引き成立ね。明日からまたよろしくお願いしますわ」


「なんだかよく分からないけど、また明日パーティーが組めるんだね。うれしいな!」


 エリック、君は理解が悪すぎだよ。もう少し人の話をきちんと聞こうよ。とは言え、そんなエリックのおバカ発言で場が和んだのも事実だ。結構、いい役割分担ができているのかもしれないね。


 その後はどんなクエストを受けるか相談したり、シーラに王都の学校について少し話を聞いた。


「それじゃあ、今日はこの辺で宿に戻ろうか。明日は朝から依頼を探しておこう。おやすみ、アスカ」


「はい。明日からもよろしくお願いします。おやすみなさい、みなさん」


 十分食べて、話をしたところでレスターがお開きを宣言する。さりげなくおやすみなんて言うあたりに下心を感じるわ!


 レスター達と別れ宿に戻って来たアスカだが、さすがに疲れていたようで、ベッドに横になるとすぐに寝付いてしまった。俺はというと……


 スキルだから眠くならないんだよ! 仕方がないからアスカのスキルでも分かりやすく整理しておくか。

 あと、明日はアスカと相談して近接攻撃のスキルも付けようか。リュックに空間拡張を付与させるのも忘れないでおこう。

 おっと、時空スキルLv2では拡張した空間の中の時間を操作できるのか。時間を止めておけば入れたものが腐らなくて済むな。


 名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 8

 職業 神官

 ステータス

 HP 24(80)

 MP 34(90)

 攻撃力 24(80)

 魔力 44(100)

 耐久力 24(80)

 敏捷  34(90)

 運   34(90)   

 スキルポイント 0

 スキル

 (炎操作 Lv2)

 (風操作 Lv2)

 (水操作 Lv2)

 (土操作 Lv2)

 (氷操作 Lv2)

 (雷操作 Lv2)

 (光操作 Lv2)

 (闇操作 Lv2)

 (重力操作 Lv2)

 (時空操作 Lv2)

 治癒 Lv1(治癒 Lv2)

 (全属性耐性 Lv2)

 (全状態異常耐性 Lv2)

 (思考加速 Lv2)

 (身体強化 Lv2)

 (無詠唱)

 (魔力増大)

 (消費魔力半減)

 (魔力回復倍化 Lv2)

 (経験値倍化 Lv2)

 (経験値共有 Lv2)

 (スキルポイント倍化 Lv2)

 (ステータス補正 Lv2)

 (自動地図作成)

 (鑑定 Lv2)

 (隠蔽 Lv2)

 (探知 Lv2)

 (危機察知 Lv2)

 (鍛冶 Lv2)

 (錬金 Lv2)

 (付与 Lv2)


 これでよし。少し見やすくなったな。

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