第11話 vs ジャイアントボア ○

 エリックの矢がジャイアントボアの右目に刺さる。彼は本当に優秀な弓使いのようだね。風を止めてもらっているとはいえ、スキルもないのに狙ったところへ、ドンピシャだ。


「ブオオォォォ!」


 突然の痛みにジャイアントボアが叫び声を上げた。大きな猪は右目を潰され、残った左目で敵を探している。

 そしてすぐに、最初に目に入ったであろうレスターに向かって突進を始めた。さすがにD級だけあって、その速度は向かい風の中であってもかなりのものだ。鋭い牙と相まって、まともに当たれば致命傷になるであろうことは、想像に難くない。レスターは予想以上の速度に驚きながらも、すんでのところで左に躱した。


「うっ……!」


 いや、完全には躱しきれず、ジャイアントボアの牙が右足をかすめたようだ。ふくらはぎの辺りがざっくりと裂け、血が流れている。


「すぐ、治療を!」


 シーラの鋭い声に反応し、すかさずアスカがレスターに近寄り治癒を試みる。すると、みるみる傷が塞がり元通りになった。


「ありがとう、アスカ! 助かった!」


 傷が治ったレスターは、すぐさま戦線に復帰する。その間、エリックは近くの木に登りジャイアントボアに矢を放っていた。


「くそ、毛が硬すぎる! 矢が通らない」


 比較的柔らかな目ならまだしも、ジャイアントボアの毛や皮膚は並の武器では歯が立たない。ジャイアントボアはエリックに自分の攻撃が届かないとわかると、いったん距離をとり、エリックが登っている木をめがけて突進し始めた。

 あの勢いでぶつかれば、その辺の木など間違いなく折れてしまうだろう。上にいるエリックも落ちれば、ただでは済まないかもしれない。


 ジャイアントボアが木にぶつかる直前、アスカは作戦通り足下の土を柔らかくした。隠れている上に詠唱なしなのでバレる心配はない……はずだ。

 柔らかくなった土に足を取られ、ジャイアントボアはバランスを崩しひっくり返る。チャンスとばかりエリックが放った矢は柔らかい腹に刺さり、復帰したレスターが剣を突き刺した。


 致命的な傷を負ったジャイアントボアだったが、その後10分ほども暴れ回り、ようやく動かなくなった。


「た、倒したのか?」


「危なかった。あそこで転んでくれなかったら、やられてたかもしれない」


 レスターもエリックもD級の魔物を倒した喜びより、ヘタをすると死んでいたかもしれない事実に、今更ながら恐怖を感じているようだ。

 しかし、その恐怖もファンファーレが鳴るまでのものだったけどね。


「おぉ、レベルが2つも一気に上がった!」

「僕もだ!」

「私もよ!」


 レスター達3人は元々レベルが上がる直前だったようで、一気に2つ上がり、みんなレベル12になったみたいだ。

 一気にレベルが上がることは、あまりないのだろうか? すごい喜びようだな。


「私も上がりました」


 アスカは3つあがってレベルが6になっていた。経験値倍化&ジャイアントボア様々だね。

 ここはみんな大喜びしたいところだろうけど、血の臭いにつられて他の魔物がやってくるかもしれない。そのことに気がついたレスターの指示で、ジャイアントボアをみんなで素早く解体して手分けして持てるだけ持っていく。


(そういえばアスカ、異空間に収納するのは大体大騒ぎの原因になる。人前で使うわけにはいかないから、宿に帰ったらリュックに空間拡張を付与してみよう。

 いわゆる魔法の袋マジックバックってやつだな。それなら形見とか家宝とかで誤魔化せそうだし)


(うん、わかったよ!)


 その後、暗くなるまで、ゴブリンやスライム、E級のブラックウルフなどを倒し、レスター達はレベル13にアスカはレベル8になった。今日だけで6つも上がるとは、Lv1とはいえ"経験値倍化"のスキルの恩恵は大きいようだ。


 これだけレベルが上がるのが早いと、同じメンバーとパーティーを組み続けたら怪しまれそうだ。そういうときは一時的に経験値倍化スキルを外しておいた方がいいのかな? でもそれじゃあレベルが上がるのが遅くなるし……さて、どうしたものか。


「もう暗くなってきたし、切りよくレベルも上がったから、今日はここまでにして町に戻ろう」


「そうだね。今日はもう十分だ」


 辺りが暗くなってきたところで、レスターが狩りの終わりを告げる。その提案にエリックも賛成し、シーラと共に荷物をまとめ始めた。


 


 長時間の狩りで身も心も疲れているはずだが、レベルが思った以上に上がったことと、ジャイアントボアの素材が手に入ったことで、あまり疲れを感じず気分よく話をしながら帰ることができたようだ。

 特にレスターとエリックは、ジャイアントボアを倒したときの動きを再現しながら、お互いを褒め合っている。そんな2人をアスカも嬉しそうに見ているが、シーラは何か考え事をしているようで、ぶつぶつ呟きながら歩いていた。


 あの事故からどうなることかと思っていたけど、今のアスカを見る限り、この世界も捨てたもんではないと思えるようになっていた。特に出会った人達がいい人ばかりだったのが大きいのかもしれない。


 っと感傷に浸っている場合ではなかったのだ。アスカのレベルが8になったことでスキルをLv2に上げるために必要なポイントがたまったのだ。1つしか上げれないが、俺自身のスキルレベルを上げれば、全てのスキルをLv2で付与することができるようになるから、悩む必要はないんだけどね。


 では早速……


 名前(ヒイラギ)アスカ 人族 女

 レベル 8

 職業 神官

ステータス

 HP  24(80)

 MP  34(90)

 攻撃力 24(80)

 魔力  44(100)

 耐久力 24(80)

 敏捷  34(90)

 運   34(90)   

 スキルポイント 0

 スキル

 (思考加速 Lv2)

 (身体強化 Lv2)

 (全状態異常耐性 Lv2)

 (全属性耐性 Lv2)

 (経験値倍化 Lv2(3倍))

 (スキルポイント倍化 Lv2(3倍))

 (ステータス補正 Lv2(3倍))

 (鑑定 Lv2)

 (無詠唱) 

 (魔力増大) 

 (消費魔力半減)

 (風操作 Lv2)

 (炎操作 Lv2)

 (水操作 Lv2)

 (土操作 Lv2)

 (氷操作 Lv2)

 (雷操作 Lv2)

 (光操作 Lv2)

 (闇操作 Lv2)

 (重力操作 Lv2)

 (時空操作 Lv2)

 (隠蔽 Lv2)

 治癒 Lv1(治癒 Lv2)

 (探知 Lv2)

 (危機察知 Lv2)

 (経験値共有 Lv2)

 (魔力回復倍化 Lv2)

 (自動地図作成)

 (鍛冶 Lv2)

 (錬金 Lv2)

 (付与 Lv2)


 あれ? 攻撃力も耐久力もすでにレスターを超えてるかも? 普通に【戦士】でもやっていけそうなステータスになっちゃった。

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