第7話 この世界で生きていくために ○

(まずい! スキルを1つ付け忘れた!)


 スキルマスターの能力発動

  対象:ヒイラギ アスカ

  スキル付与:ステータス補正 Lv1(2倍)

  ……付与に成功


 直後に鳴り響く、ファンファーレのような音楽。どうやらアスカのレベルが上がったようだ。


 レベルアップ

 ヒイラギ アスカ レベル1⇒レベル2

 職業 なし

 ステータス

  HP  10⇒20

  MP  20⇒30

  攻撃力 10⇒20

  魔力  30⇒40

  耐久力 10⇒20

  敏捷  20⇒30

  運   20⇒30   

  スキルポイント 5⇒9

 スキル

  思考加速 Lv1

  身体強化 Lv1

  全攻撃耐性 Lv1

  全状態異常耐性 Lv1

  全属性耐性 Lv1

  経験値増加 Lv1(2倍)

  スキルポイント増加 Lv1(2倍)

  ステータス補正 Lv1(2倍)

  鑑定 Lv1

  無詠唱 

  魔力増大 

  消費魔力半減

  風操作 Lv1


 ブラックウルフを倒したことでアスカのレベルが上がったようだ。レベルが上がることで各種ステータスが0~5あがるはずなので、10上がってるということはステータス補正も間に合ったみたいだね。


 それにしても、全てのステータスが10上がっているということは、補正がなくても最大上昇値の5上がっていたわけか。ずいぶんサービスがいいな。転生者だからか?


「お兄ちゃん。何かファンファーレみたいな音楽が鳴って、『レベルが上がりました』って声が聞こえたけど……」


 いきなり襲われた恐怖と、生き物を殺してしまった罪悪感で落ち込んでいたアスカだが、直後に聞こえてきたファンファーレで少し気持ちが紛れたようだ。


(狼……正確にはブラックウルフを3匹倒したから、レベルが1から2になったんだよ。レベルっていうのは強さを表す数字で、レベルが高いほど強くなれるんだ)


 レベルやステータスについてよくわかっていなかったようなので、きちんと説明しておいた。これもナビゲーターの仕事だからね。


(さて、色々確認したいこともあるし、もっと教えておかなければならないこともあるから、とりあえず向こうに見える道を歩きながら、町か村を目指そうか)


「うん、そうだね。また狼……じゃなくてブラックウルフ? に襲われるかもしれないしね。」


 いくらスキルをたくさん持っていても、レベルが低ければあまり恩恵が得られない。ましてや操作系に必要な魔力を含め、ステータスもまだまだ低いからここで魔物と戦うのは危険極まりない。一刻も早く安全な場所に移動し、これからのことについて考えたい。


(そうだ、あまり気が進まないかもしれないけど、そのブラックウルフの牙を持って行こう。町に着けば、お金に換えれるかもしれないから)


 鑑定で討伐証明部位がわかるので、おそらくギルドのような場所で買い取ってもらえるのではないかと思ったわけだ。


「風操作で牙を切り取って持って行くね」


 ブラックウルフは2本の長い牙を持っており、それが討伐証明になるようだ。アスカは3匹から6本の牙を切り取り……どうやってもたせよう? ああ、このスキルがいいか。


 スキルマスターの能力発動

  対象:ヒイラギ アスカ

  スキル付与:時空操作 Lv1

  ……付与に成功


 俺はアスカに時空操作のスキルをつけた。


(アスカ、時空操作のスキルをつけたから異空間に牙をしまえないかな?)


(うん、やってみるね。…………あっ、できたみたい!)


(このスキルはちょっと目立つかもしれないから、ひとつだけポケットに入れておこうか)


(はーい!)


 アスカは僕の言う通り、一本だけブラックウルフの牙を取り出してポケットに入れようとする。


「あ、今気がついた。服も靴も替わってる」


 アスカは自分の服が替わっていることに、気がついていなかったようだ。こちらの世界の標準服なのだろうか、白い布のような素材で、半袖のチュニックにハーフパンツのようなものを履いている。

 靴も動物の皮をなめしたようなものに替わっていた。どういう原理かはわからないが、転生者だとわからないようになっているのであれば、ありがたいことだ。


(よし、牙も持てたみたいだし、道なりに歩いて行こう。運が良ければ、誰かが通りかかるかもしれないしね)


 歩きながら、自分が持っている知識をできるだけわかりやすくアスカに伝えていく。特に、『生き残るためには魔物を、時には人間をも殺さなければならないことがあるかもしれない』ということはしっかりと伝えた。

 13歳の女の子には酷な話かもしれないが、俺は2度と妹を失いたくない。そんな気持ちが伝わったのか、アスカも真剣に話を聞いてくれたようだ。

それから、余計なトラブルに巻き込まれないように素性を隠して生きていくことも大事だね。

 今はまだ弱いから目立たないかもしれないが、アスカにはこれからひとりでも生きていけるように、強くなってもらう予定だからな。

 レベルが上がれば俺のチートスキルの能力で相当な強さになるはずだ。その強さが利用されないように、妬まれないように慎重に行動してもらわなくてはならない。


(素性がばれないように、隠蔽のスキルを付与して、手っ取り早く冒険者のパーティーに入れるように、治癒のスキルも付けておくか。治癒ならLv1でも重宝されるだろうし)


 スキルマスターの能力発動

  対象:ヒイラギ アスカ

  スキル付与:隠蔽 Lv1

        治癒 Lv1

  ……付与に成功


 隠蔽のスキルが付与されたので、治癒以外のスキルは隠しておくようにアスカに伝える。レベル2で複数のスキルを持っていると目立ちそうだからな。


 しばらく歩いていると、前方に町が見えてきた。


「お兄ちゃん見て、町が見えるよ。行ってみよう!」


(よし、町に着いたらさっき決めた通り、両親が魔物に襲われ逃げてきた田舎の小娘を演じるんだぞ! ブラックウルフの牙を売るときは、拾ったことにしてだぞ。)


「うん、わかった。頑張ってみるね」


 そしてアスカは町への入り口へと向かって行った。

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