7 フォータウンを抜ける
「こんばんは。夜分遅くに失礼します。話したいことがあって。」
なんだね、とボスは振り返らずに窓の外を見続けている。
いつになく緊張が走ったが、大きく息を吸って話し始める。
「トラックの荷物を見ました。あれは、何なんですか。」
「そうか・・・。ハイエリスから聞いたんだな。君は黙って荷物を運んでくれて大いに助かっていたんだがね。君を見た時から薄々予感はしていた。終わりが来るんだろうな、とね。」
「どうして、こんな取り返しのつかない事を続けたんですか。ただ、守るだけならこんな因縁も根付かなかったし、仲間も死ぬことも無かった。最初に掲げていた、理想はどうなったんだよ!それだけが仲間を繋ぐ1つの理由だったのに!!」
「黙れ!ガキ如きが知ったような口を聞くな!仕方なかったんだ...。仲間を守るためだ。オアシスで頭を張ってるマフィア、グレイブ達が私達に目を付けられた。組織の大きさは目前だった...、私だって自分で自分を裏切っていることくらいはわかっている。私を殺そうとするのは勝手だが、ただでやられる訳には行かないのだ!来い!」
掛け声と共に、テイラーの前にあった窓ガラスが割れて何かがやってきた。
獣のような形を模しているが、怪物なのがすぐ分かる。大きな唸り声を出しながらこちらを見ている。
「これがグレイブ達が私に集めさせていた子供の果てさ。さあ、行...!」
瞬間、テイラーの首が鮮血と共に空へ待った。
何が起こったかは見えなかった。ただ、獣の爪に血が付着しているから、搔き切ったのだろう。そのままテイラーの亡骸を貪り喰らい始めた。
その間に部屋を抜け、廊下の消火器を拾い逃げる。
刺し違えてでも、ここで始末しなきゃならない。
街に出れば、たくさんの犠牲がでる。
向こうの方が足は速い、牽制で打った銃弾は当たるが、あまり効き目はない。もうすぐ追いつかれる所でひとまず銃で消火器を打ち、煙幕として使う。
早速だが、こいつを使う時が来たようだ。
──S&W M500
全長約40センチ、重さ約2キロのリボルバータイプのハンドガン。
エステルさんから、別れ際に渡された。
初めて買った銃で扱いきれなくて飾り物になっていたものをくれた。
5連マガジンで、この専用の弾 .500S&Wマグナム弾を使用。予備弾は5発。
こいつを打った衝撃は、手で爆発が起こったような反動で片手じゃとても打てやしないらしいが、打つしかない。
俺の体ごと吹っ飛んでも、当たってくれよ・・・!
走りながら、一本道に誘い込んだ。
目標正面、こっちに真っ直ぐ飛びかかってきた。
トリガーを弾いたと同時に聞いたことも無い銃声と反動で銃もろとも右腕も真上に向かって飛んだ。
銃弾は上手く反動で軌道が上に逸れたことで、飛びかかった怪物の脳天を直撃。
何とかは倒せたようだが、グレイブという組織についても調べよう。
とにかく今日で、マフィアヒッポは終わりだ。
反動で感覚のしない片手のまま、その場を後にした。
──そして、フォータウンを抜ける。
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