4 ハイエリス

ヒッポとハイエの抗争は、思いのほか早く決着した。

敵のボス、ハイエリスは抵抗せずにこちらに投降し、すぐ殺すには惜しいからと事務所の地下に閉じ込めているようだ。彼はきっと、じわじわと苦しめられて死ぬのだろう。

ただその前に、どんな奴だったかは見てみたい気持ちもあったので地下に降りてみた。

寿命を迎えそうな電球が弱々しくチラちく光の中で、椅子に鎖で縛り付けられてる1人の男がいた。

既に床には血反吐が飛散していて、爪の何本かも転がっていた。

酷い匂いがする。整備もされていないこの地下では病気になって、何もしなくてもそのまま死ぬだろう。


「おい、お前が例の荷物番だな。仲間の仇は取れて嬉しいか?因縁を終わらせて安全に荷物番できる様になって気分が楽か?

何も知らずに入れるのは良い事だな・・・。」


ハイエリスは俺に向かってそう呟く。線の細い男が、こちらを睨み、薄暗がりで奇妙に笑っているのは分かった。


「ああ、そうだ。俺は何も知らない。荷物番が荷物の詳細を知る必要なんかないだろ。」


「それが復讐の為に、人道に反することに加担していてもか?お前が守った物がどんな代物かも知らずに、俺の部下の命を奪っていった。」


「何が言いたい。」


「お前のそのおめでたい脳みそに腹が立つって言ってんだよ。テイラーがやってたのはな、大層な理想を掲げた裏で、いつまでも過去を捨てられずに奪われたから奪い返す、ガキの戯言を続けてきたんだよ。それを俺は止めてやってたのにお前が出てきて、全て水の泡だ。まっ、数日は俺は生きてるだろうからその目で確かめてみろよ。じゃあな。」


事切れたようにハイエリスは、喋らなくなった。

ボスが、そんなことをするはずがない。そう信じることは出来る。ただ因縁の理由が本当にそれならば、俺達、組織のファミリーが裏切られていたならば、俺のやるべき事は一つ。


──俺がこの組織を終わらせることだ。

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