1-2 キッシュ・ストリーク
少女が放った光に、ダイブも俺も目をくらました。
朝日よりも眩しいその光は、ダイブの体を朽ち果てさせて塵も残さずに消えていく。
辺り一帯のダイブを一掃するのに力を使い切ったのか、少女は地面に倒れ込んだ。
少女の元に駆け寄って声をかけるが、反応はない。死んではいないようだが、その横顔には涙が流れていた。白い肌に、藍色の髪。この少女の力はなんだったのだろう。
この少女も俺と同じか。
少女の他に荷物はないだろうか。まずトレーラーの運転席を確認したが、そこには絶叫した顔のままで息絶えてるキッシュがいた。
優しくキッシュの瞼を閉じて遺体を土に埋め、その周りを石で山積みにして覆った。
キッシュ・ストリークに家族や恋人はいなかった。それでも、これだけの危険な仕事をする人間はそうそういない。
出会った最初の頃からずっと、ダイブが現れてからずっと、世界は疲れていた。
キッシュだって例外じゃない。
諦めてたのかそれとも死に場所を探していたのか、キッシュが二つ返事でこの仕事を引き受けていたのを俺は覚えている。
──俺が死んでも、誰も困らない。
それがキッシュの口癖だった。
けど、今までキッシュのやってきたことは、サースティの人達のライフラインに直結することだ。
つまり、サースティの人達はお前が頼りだったんだ。
お前が死んで困らないなんて、そんな訳がないだろ。
代わりは幾らでもまた出てくるかもしれないけど、誰もやりたがらない仕事を引き受けたお前を俺は尊敬していたんだから。
「お疲れ。キッシュ・ストリーク。後でお前が好きだった、あの酒を持ってくる。おやすみ。」
キッシュの墓を背にして、俺は少女を担いでサースティに向かう。
一人のドライバーを讃える様に朝日は、墓を照らしていた。
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