田中カノンのジレンマ
タヌキング
背中に背負う物
私の名前は田中カノン。正式名称、少女型アンドロイド一型の言わばロボットです。
自分で言うのも何ですが、オカッパの美少女の外見をしている私は老若男女問わずに愛される町のアイドル。
何で作られたかは分からないけど、今日もお父様に「はぁはぁ、カノンは今日も可愛いなぁ♪」と鼻息荒く髪を撫でつけられて、小学校に出発。
「カノンちゃんのお父さんって変態だよねー。」
会って開口一番そんなことを言う、親友のユカリちゃん。おさげ髪でメガネという大人しい外見に反して辛辣なことを言うのよね。
「そんなわけない。何を証拠にそんなこと言うの?」
「だって私達、女子小学生を見る目が違うもん。舌舐めずりだってしてるし、私、次あの目で見られたら防犯ブザー鳴らしちゃうかも。」
「や、やめてね。私が孤児になっちゃうから。」
危ない危ない、これだからこの女はちゃんと見張っておかないと。
「カノンちゃんも良いの?あんなのが保護者で?」
「えーっ、だってぇ、あんなのでも私の創造主様だしー。情が湧くよねー。」
「でもヤバイよ。そんなランドセルに……」
はい、ユカリちゃんの次の台詞大事よー。メモしてねー。テストには出ないと思うけどメモ推奨よー。
「キャノン砲付ける人なんてさー。」
その通り、お父さんは私の赤いランドセルにキャノン砲を付けてしまったのです。流石はマッドサイエンティストですよねー。
ちなみに砲頭は360度回転することが出来て、後方からの敵にも対応出来る万能型でして、ネット弾、ナパーム弾、レーザーキャノンにもなりますし、換装すればミサイルポッドにもなる。
私の背中にドッキングさせて、田中キャノンとなるのが基本運用だけれど、外した状態でも遠隔操作で操作することが可能なの。
「カノンちゃんのランドセル置いているとこの前の席の男子、いつもビクビク震えてるよねー。」
あっ、そうだったのか。なら、たまに空砲撃つのやめとこう。
"カツン"
「あっ。」
不意に小石につまづいて転ける私。アンドロイドとはいえ、こういう茶目っ気があった方が親しみやすい。
「大丈夫?カノンちゃん?」
「大丈夫だよ。でも……」
四つん這いになってしまった。こうなると不味い。四つん這いになると不思議とキャノン砲をぶっ放したくなるの。
"ウィーーーーン"
「目標、建築中の住宅。ロックオン。こういう時慌てた方が負けなのよね。」
「コラーーーー!!カノンちゃん狙っちゃダメよ!!今は色んな物価が高騰して、新築は3000万で35年ローンでも払い切れずに退職金で全部払い終えるのよ!!」
詳しいなぁ、ユカリちゃんって本当に小学生?
「でも、このパッションは止められないの!!エネルギーチャージ!!」
レーザーキャノンで新築ごと辺りを焼け野原にしてやる!!
「仕方ない!!こうなったら!!この軟弱者!!」
"バチーン!!"
「あべし!!」
ユカリちゃんに思いっ切り顔をビンタされて正気に戻った私。
やはり持つべきものは友達だよね。
田中カノンのジレンマ タヌキング @kibamusi
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