第10話 魔王討伐後に王様が勇者を害そうとするのはおかしくない。
なろう系批判でよくある、王様が勇者を追放したり暗殺しようとするのはおかしい。
勇者を取り込めばいいのに。王様馬鹿すぎwww
そんなぼろくそに貶される可哀想な王様を作者が擁護していきます。
なぜ功績ある勇者を不当な待遇で扱うのか。
勇者は魔王という強大な敵を滅ぼし、王様を上回る実力と名声を手に入れました。
ゆえに勇者は玉座を奪いかねない潜在的な敵となったのです。
そこで王様は国をのっとられないように勇者対策を取ることを余儀なくされます。
この状況から王様が取れる対策を考えていきましょう。
・婚姻政策
神話からある伝統的な解決法ですね。
英雄は怪物を倒し、王は勲しに報いるべく姫君を娶らせる。
かくして英雄の血は王家に脈々と流れることに。
上手い方法ですね。
対策としては最上のものでしょう。
ただし、王様に娘がいない場合も考えられます。
こういう場合、次善の対応として、公爵家の娘を養子に迎えるなどでしょう。
(それ以外の家から養子など、とんでもないことです)
公爵家は王様の親類であり直系がいない場合の予備であり、婚姻政策にも有効です。
けれど、魔王と戦争状態にあったわけなので公爵家当主が討ち死にしていた場合など
そっちで婿入りを進めているかもしれません。
要は最上にして最良の方法は取れるか分からない、ということです。
世知辛い世の中ですね。
でも公爵家が二つあったらどっちの娘を出すんだとか
国外の親類が絡んできたりで内乱待ったなしですね。
(ヨーロッパの継承者問題はえぐい、すぐに継承権主張してくるし)
そもそも勇者が平民である場合、受け入れられるか。
お姫様や令嬢と仲良くできるのか、そもそも納得しているのか。
お姫様が納得していない場合、問題が勃発しかねません。
王様に直系の娘がいないと詰むかも・・・
・娘を娶らせずとも、領地を与える。
はい、出ました。王様胃痛コースです。
娘を娶らせられず、勇者に苦難を共にした仲間兼恋人がいる場合などこちらのコースになります。
それで何が起こりうるか? ぱっと考えても、
他の貴族との兼ね合い。
他貴族にそそのかされる。
勇者が反乱。
勇者が増長して領地が混乱。
と、常に爆発しかねない危険を治世に孕むことになります。それも子々孫々。100~200年は勇者の威光が通用するかもしれません。貴族出身の勇者ならともかくなろうは平民が多数派なので、政治や統治する技量はないだろう、とみる専門家も多いでしょう。
いやー王様が勇者暗殺を考えようとするのも分かりますね。
おまけにこの時分では魔王と戦争した直後なので
王様への忠誠心とか権威とかごりごりに削れています。
いや、王様の格が下がった分だけ勇者のそれが上がっているというべきか。
なので、なろう小説に出てくる王様の皆さん。
安楽に過ごしたいのなら、下手に領地を与えることは考え物です。
・勇者暗殺。
最後の手段、奥の手です。
失敗すれば王様の首が飛びます。
そうならなくても国は大混乱に陥るでしょう。
成功すれば王様の胃痛は治るし国も安定します。
ヒュウッ、こいつは一挙両得だぜェ!
それに君主には獅子の勇猛さと狐の知恵が必要って言いますからね。
相手が勇者といえど、国を乱すなら果敢に戦わないといけません。
もちろん勇者を人知れず葬りさった後は、国葬で涙して死を惜しむぐらいはしましょう。
王様、ファイトッ!!
(なろうではほぼ勇者が主人公なので王様の努力が報われることはありません)
・個人的に最上。
婚姻政策が最上と述べましたが
できない場合は莫大な恩賞と引き換えに故郷にでも隠遁してもらうのが
為政者的にはベストではないでしょうか?
成し遂げた勇者が一平民として余生を平和に送るのも伝統といえば伝統ですし。
いや、これでもどこぞに招聘されたり敵に回ったりする危険性もあるわけですが
暗殺のリスクと胃痛的なものを天秤にかけるとこれが良いはずっ!
ただ田舎に引っ込んでもらっても別パターンとして
民衆が勝手に勇者の力を恐れるってパターンもありますね。
王様が仕向ける場合とそうでない場合がありますが。
前者は相手の影響力を減らすために勇者の善性に掛けた奇策のような気がします。
守るべき民草を見捨てるのか~なんちゃらかんちゃらと。
そして、やりすぎて勇者の堪忍袋がはち切れるのもある意味お約束です。
後者なら家臣や民衆が勝手に爆弾に火をつけ始めるとか、王様不憫。
せっかく事後処理を穏便に済ませたのにね。
まあ、その後爆発しないように見守り続けるのも王様の仕事だと言われたらそれまでなんですが。
余りにも面倒臭過ぎて王様が暗殺に走りたくなる気持ちも分かる。
やられる勇者側は理不尽でしかありませんが。
これを覆すには勇者に先んじて王様が魔王を滅ぼすしか……
総括っぽいもの。
古今東西で王様が疑念に囚われることは珍しいことではありません。
ちょっと違いますがホビットのトーリンも似た状況になりましたし物語でも同様です。
狡兎死して良狗烹られ、高鳥尽きて両弓蔵われ、敵国破れて謀臣亡ぶ。
漢の高祖に仕えた三傑の例を見てもしかり。
まあ、古代中国では引き際を弁えず、粛清された臣下が悪いとみる向きもありますが。これをなろうに置き換えると、なろーしゅが自覚しないからと見ることができます……。
はい、というわけで皆さんにもなろうで王様が勇者を追放やら暗殺やらしようと
することは何もおかしくないということを納得して頂けたと思いますので本エッセイは以上となります。
王様は悪うない、悪うないぞ~~~!!
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