第5話 異世界で冒険者ギルドのギルドマスターとなる。

冒険者ギルドに権力ありすぎ、なんで一団体があんなに力持っているんだよ。

どこでも身分を保証されるのおかしくね?などなど謎の存在として語られる冒険者ギルドが拡張していく様を説明し、このエッセイの主人公、ワイ君が読者の皆におかしいことはなにもないと強弁していきます。


ワイ君は平民の生まれでありながら、恵まれた肉体からかなりの腕っ節です。それなりに人望があり仲間からも慕われていました。

長じて手に職をつける年頃になりましたが、いかんせん持ち前の勝気さが職人などの堅実な道を選ぶことを妨げさせました。


というワイ君設定。


世界観は剣と魔法に、魔物がはびこるいつもの奴です。果たしてワイ君はギルドマスターに、いやまずは生き残ることができるのだろうか……。


そも、ギルドとは中世ヨーロッパにおいて、新規事業者の許可制、仕事の独占、ストライキや値段の上げ下げの協調などを介して、自分たちの立場を守るために組織されていた団体です。


当然、ぽっと出のワイ君にはいきなり冒険者ギルドを作ることなんてできるわけがないでしょう。つまり、まずはギルドの前身となるビジネスから始めたであろう事は想像するだに難くありません。


恐らく、一番近いのは「何でも屋」みたいなものから始まったことでしょう。

「何でも屋」は現代まで生き残っている事業の一つでもあります。除草や除雪、簡単な日曜大工や庭の手入れなど、日雇いで報酬を得たりできますね。


なーろっぱにおいて薬草の採集やモンスターの討伐、行商の護衛など日雇いの仕事があるわけですから、そこに議論は必要ないでしょう。しかし、これらはワイ君だけの独占事業ではありません。


薬師が個人で採集するかもしれないし、商人が自ら護衛の募集を掛けるかもしれない、あるいは個人商店との競合など。さらに魔物の討伐に至っては領主が治安維持のために手がける選任事項といってもいいでしょう。当面は彼らがライバルとなるわけです。


ワイ君はそんな商人達や個人経営のお店に飛び入り営業をかけて

懇々と自分たちの経営理念、「何でも屋」を活用することのメリットを説いていきます。


「お金を出せば居ながらにして目的の物が」

「期間ごとに契約すれば其の都度の手間を省けます」

「もちろん、他のお店より格安で勉強させていただきますよ」


口に出すのは簡単ですが信用がないため、ないがしろにされることもあったでしょう。しかし、ワイ君の堅実な営業努力は確実に実を結んでいきました。


この頃に試しも含めた取引相手が増え仲間たちもある程度増えていることでしょう。

何より大きいのが、メンバーの成長です。ギルドに参加する者達は大抵、あぶれ者、はみだし者、次男・三男などが主流でした。


ワイ君=かなり強い。


メンバーA=弱い

メンバーB=普通

メンバーC=素行不良


ワイ君は彼らを力で統率していき、時には暴力という愛で語りかけ、今では全員がいっぱしの部下になっています。ワイ君は上昇志向溢れる男でした。ある時自分たちの店をさらに拡張する為の一手を思いつきます。


それは領主から魔物討伐をアウトソーシングすることです。

これには双方にとっての利益があることでした。


領主のメリット

・手間ひま掛けて訓練し育てた兵士たちが死ななくなる。(遺族の見舞金も払わなくていい)

・「何でも屋」はいわば二流市民の集まりで彼らが死んでも領地の民力が衰えない。

・金は掛かるが領主が出陣しなくてもいいし、当主死亡という事故の確率を減らせる。

・「何でも屋」の隆盛は領地の無職発生率を抑える、税収の安定化。


ワイ君のメリット

・安定した収入を得られる。

・取引先が増える。新たな仕事が得られるチャンス。

・コネ・顔つなぎに役立つ。


この頃にはワイ君はいっぱしの親分となっています。

しかし、まだまだ勢力は小さく敵はいっぱいです。


頭が上がらない存在として仕事を請け負う領主。

さらに「何でも屋」より戦闘に特化され仕事が被るであろう傭兵団。

規模が大きくなり、今まで「何でも屋」を見逃していた集団が目をつけてきます。


ここでワンクッション置かせていただきます。

読まれている読者さんから、なぜ魔物を討伐、絶滅させてしまわないのか?という意見が上がると思います。作者も見たことがあります。


ダンジョンや巣窟に攻め込んで討伐できる規模なのか。

討伐できるとして誰がやるのか。領主がやるなら恐らく半民半官みたいに「何でも屋」を巻き込むでしょう、領軍の犠牲を減らせますし。ただし重要なことが一つあります。


魔物の存在そのものが領地の実体経済に組み込まれている場合です。

魔物肉、皮革、角や牙などの加工、調度品としての価値。


現実での例を挙げましょう。

オーストラリアでは鯨に関連する観光業による収入は年間数億豪ドルになるといわれています。そのため、オーストラリアは鯨を保護し捕鯨反対の立場をとっていました。


結果として鯨を保護したことにより、鮫の餌となる鯨が増え近海に出現する鮫に襲われる人が増えています。しかし、鮫を根絶しようなどという動きはありません。個体数調整や撃退が主です。(オーストラリア批判とか、捕鯨反対を批判するものではありません)


このように誰がやるのか、金を出すのかという問題から

死人が出ていても、簡単に魔物を根絶してしまえと、ならない場合がありえます。

(根絶したら「何でも屋」が食いっぱぐれますし)


話を戻します。


いっぱしの親分となったワイ君、あちこちの都市や町に支部を置いて其の影響力は年々大きくなっています。この調子でいけば、現在の領地から他領へ進出するのは時間の問題でしょう。今では前線で辣腕を振るうことは少なくなり管理者としての立ち位置が目立ってきています。


そんなワイ君の次の一手。それは事業の多角化でした。

今までは魔物の討伐が収入の大きな割合を占めていましたが、他の仕事も手がけるようになっていきます。領地の中心部に本店を構え、簡素な宿や酒場など多角的な経営を目指すようになっていました。


請け負った魔物討伐で手に入れた可食部は自社経営の酒場で提供します。

仕事を高く請負、部下に安値で割り振り、さらに仕事を終えた部下たちからも食事代をむしりとったことでしょう。


遠隔地には自社管理の安宿を設け部下の福利厚生(徴収)も欠かしません。そうして稼いだ金で魔法使いを雇い、研究開発を行い自社製品の開発も怠りません。そうやって新規の顧客・販路を増やしていきます。


そんなワイ君でしたが、やはり目の上のたんこぶというものがまだあります。

教会や傭兵団です。


教会からは部下が死亡した際の埋葬関連で寄付をせびられ

傭兵団からは自分達より弱い格下の存在として軽視されます。


時には小競り合いを起こすこともあったでしょう。

しかし、「何でも屋」は金の力で傭兵団の圧力を撥ね退けることに成功します。


明暗を分けたのは団体としての性格でした。

傭兵団は存在が血生臭く、下手に動かすと他領を刺激しかねない勘ぐられる存在でもあります。その点、「何でも屋」は誕生した経緯から地域密着型の存在であり、また格下と見られていたことから武闘派ではないとされたことが功を奏しました。


さらにワイ君は豊富な資金力で傭兵団員を引き抜いたり、地域の支持をとりつけるなど手を抜きません。


戦時でしか輝けない傭兵団。

戦時でも平時でもある程度役に立つ「何でも屋」

それが決定的な差となったのでした。


こうして支持を取り付け数で上回り、目の上のたんこぶを一つ取り除いたワイ君。

しかし、まだまだ手は緩めませんでした。他領に進出できるまでに社会的信用を得て、さまざまな分野に着手し今では第一線の人材を抱えるようになった「何でも屋」

そこには世をすねていた部下たちの顔は見られません。戦い、世を必死に生き抜こうとする男たちの前向きな姿がありました。


事ここに至って、ワイ君はついに屋号を変えることを決断します。

新規参入者を抑制し、自分たちの立ち居地を確固たるものにするための布策。


――冒険者ギルドの発足です。そして、初代ギルドマスターはワイ君です……!!


ここまで何でも屋から冒険者ギルドとなったので仕事をまとめます。

・商会・領主などからの請負。

・魔物を原料とした素材の卸し・加工

・魔物討伐による治安維持。

・酒場・宿の経営。

・薬品や魔道具など自社製品の開発・販売。(オーパーツ、ギルドカードってここから生まれるのかな)


もしかしたら土地の案内・計測や新たな産物の発見などまだまだ新しい仕事が増えていくのかもしれません。


ワイ君の活躍はまだまだこれからだ!!


ここまで書いたらまあ、皆さん、この後どうなるか予想できるかと思います。


下請けでしかありませんが他領・国中で引き受けることで、元請と下請けの強弱逆転。大量に依存させることで手のひらを返すやり方など。現代では独禁法などありますがなーろっぱではね……(現代でも分野によっては独禁法の対象外で、シェアの大半握ってる企業とかあります)


教会には恐らく最後まで頭が上がらないでしょう。

勢力を伸ばせば伸ばすほど、ギルドメンバーが増えて彼らと関わりが増えていきますから。それと国にも頭が上がりません。(これは当たり前か)けれど領主あたりには強く出られる事もあるでしょう。


ちなみにワイ君が頑なに多角経営を目指していったのは

アメリカの巨人と謳われたコダック社(カメラ産業)の倒産を鑑みた結果でしょう。

ガラケースマホへの搭載カメラ機能が進化するにあたって、カメラ屋さんは業務が縮小していきました。


対照的なのが富士フィルムです。

同じくカメラ業界衰退のあおりを受けたわけですが、化粧品をはじめとした他業種への進出が功をそうして衰退を免れたのですね。

そんな経緯からワイ君は頑なに多角化を推し進めたわけです。


なんでワイ君はそんなこと知ってるんだろうなあ……


おっと、どうして冒険者が顔パスできるか、とかが抜けていましたね。

例えば、ギルドがある程度大きくなったときに、ワイ君は優越性を持たせるために

ギルドから領主に前もって前払い金を出しておくのです。


「年に数百人ぐらいそっちいきそうだから、こんだけ払っとくね」


「おっけ~」


な、やり取りをされたかどうかは定かではないですが一応メリットはあります。

ギルドからは所属員に対しての優遇制度。

わざわざ列に並ばなくてもいい、現在のスイカに通じるものがありますね。


領主にもメリットがあります。

門での監視が楽になる。毎年、決まった時期に固定収入が入る。

都度、徴収すれば料金変わらんのじゃね?って思うかもしれませんが

スタンピードとか、どこぞで新ダンジョンが発生したとなれば、人の流れなんてあっという間に変わるでしょう。


冒険者500人来ると思ってたのに今年100人しかこんかったわ……

みたいな事態を避けられるわけです。ここで、ギルドと毎年いくらが見込まれるか交渉イベントが起きますね。

ただ、いいことばかりではなく、悪党がギルドに紛れて悪事を働く、なんてこともあるでしょうから。(ギルドカードのコピーや団員のなりすましなど)

ギルドがそういう不埒者をきっちり処したりしていかないとだめですね。


では、以上となります。



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