第12話 思ってもみなかった

さて、どうしたものか。

帰路につきながら考える。

お隣では同様に、思案顔の金子がいる。


学校でのおれたちは、ほとんど接点がない。

別に隠してるわけじゃないんだが。

クラスが違う。

そうすると?

そもそも接点が生まれないわけですね。


カーストに当てはめるなら。

おれは中層、金子は上層になるだろうか。

これだけかわいくてコミュ強だ。

向かうところ敵なし状態!だろう。

どうなんだ、金子。


「…なに?」


「顎に指を添えながら考えるやつ、ほんとにいるんだな」


「えっ!?無意識なんだけど…うそ…」


「意識してやってたら、それはそれでおもろいが」


「むー!」


今日もいいバッファローだ。

チャリを手放さない理性はあるらしいが。

ほんとに、この関係は心地いい。


迷惑そうではないことは。

さすがにもうわかってる。


アシュリーもメールで言ってたし。

少し、踏み込んでもいいのかもしれない。


「金子」


「うん?」


「明日からの弁当、おれに作らせてくれ」



「早めに、帰るようにね」


「ご迷惑をおかけしました」


去っていく警察をお辞儀で見送る。

夏休み最後に、すごいイベントきちゃった。

まさか警察のお世話になるとは…


弁当話しの直後。

思ってもみなかった言葉だったのか。

金子はその場にへたり込んだ。


同時に倒れこむチャリ。

そこは手放さないでほしかったが。

さすがにどっちかしか救えそうになかった。


すまん、金子のチャリ、と。

念のため金子から遠ざけるべくキックした。


結果、騒音が近隣に響き渡り。

おれは無事、通報されたようだ。


…にしても、弁当の件。

そこまで意外だったのだろうか。


まかない代わりのつもり、だったんだが。

まぁ、店の食材で作るまかないと。

おれの自腹弁当ではだいぶ違うが…

主にコストが。


ていうか、そこまでは…

求められてない可能性もあるな。

うわ…そしたらおれウザイやつじゃん。

勝手に弁当作るマンとかどうなん?


…視線をくれても無反応である。

金子はいつ帰還するんだろう。

目に前にはいるのに、意識どこいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る