第9話 わたしだけのオリジナル

「金子、妹いるって言ってたよな」


「う、うん」


「妹ちゃんとも、おれらみたいな感じなの?」


「そっ、それはなんか、違うんじゃ、ない…かな?」


「なんでそんな慌ててるんだ?」


だって。

ぐいぐいくるから。

木村が。

いきおいが、つよい。

つよいんだけど。


木村に。

そんな気は、たぶんない。

わたしの心臓。

こんなに、やばいのに。

木村と妹じゃ、ぜんぜん違うし。


「木村、は?」


「厨房とホールの熟練度…かと思ってたが」


「あー…」


「金子のこと考えてる時間が、長いからもなって」


「…」


「…ずっとシフトも一緒だしな」


わたしも、思ってた。

なんで、こんなに。

分かり合えてる、気がする… のか。


わたしがずっと。

木村のこと、考えてるように。

木村も?

考えてくれてるの?


気づけば。

自転車を握る手が、真っ白だ。

チカラ入れすぎ、落ち着け。

嬉しいけど、落ち着こう。

深呼吸、深呼吸…


「金子、おれ決めたよ」


「え?」


顔を上げる。

木村の、まじめな顔。

料理のときにしか見ない顔。


「2作目のデザート、期待しといて」


「え…うん!楽しみにしてる!」


照れるとか。

恥ずかしいとかはなかった。

嬉しさだけが、突き抜けた。


分かり合えてる、気がするから。

木村の作ってくれるデザート。

きっとそれは…

わたしだけのオリジナルになる。

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