第7話 ヨーグルトアイス
見てる。めっちゃ見てる。
視線が、わたしに。
もとい、このデザートに釘付けだ。
圧がすごい。すごすぎる。
早く置いてしまいたい。
「お任せの、ヨーグルトアイス、です」
「わ、ぁ!」
シンプルな少量のアイスクリーム。
オムライスより、嬉しそう。
やっぱり毎日はキツかったのかな?
もっと早く言ってあげればよかった。
「ちなみに、シェフのサービス、だそうです」
「!?」
「ごゆっくり」
驚きから復帰しない彼女を置いて。
いつもの覗き見ポジションに移動する。
さて、結果はどうだろうか。
☆
「オムライスの5倍」
「ありえる?」
「ありえた」
「…金子」
「わたし、ひとりでたべる。家に持って帰って食べる」
「そこまでか…」
「いやいやいや、オムライスだって限界超えてた感あるよ?」
きっとあれだって。
容易に見せていい顔ではなかった。
思い返すと顔から火あぶりだ。
そもそもまかない顔が。
セーフかすらわからない、のに。
「ああ、あれな。名前を呼んではいけない荒子さん」
「…」
「無言のジト目はやめようよ」
「半分ヴォルデってるじゃん、それ」
「たしかにな」
ジト目にもなりますよ。
まったく。
笑ってる顔、みれるからいいけどね。
木村の。
「で、いつにするんだ?」
「とうぶんさき!」
しばらくはムリだから。
まかないで慣れさせて。
慣れるものなのか、わからないけど。
だって木村のまかない。
すごい美味しいんだもん。
☆
「ダイチ、金子さん。いつもありがとね」
退勤前。
珍しくマスターに呼び止められる。
ありがとう、って?
なんか、したっけ。
「アシュリーの相手、ぼくができないから」
アシュリー。
もしかしなくても、彼女のことだろうか。
木村を見るも、わかってなさそうだ。
「いつもオムライスを食べてる、あの?」
「そうそう!妹の娘でね、かわいいよね」
「ほんと、かわいいです」
アシュリーちゃん、か。
彼女は、本当にかわいい。
なるほど?
マスターの妹さんの娘さん。
で、
「夏休みの間、預かってる感じですか?」
「そう!よくわかるね。正解した金子さんには、ダイチのデザート券あげる」
「わーい」
2枚目のデザート券ゲットだ。
しかも木村が作ってくれる。
嬉しいな。
「ダイチとは何に当たるんだろう?ね、ダイチ」
「えぇ?そもそも知らなかったんだが…」
知らなかったとは、なんだろう。
もしかして。
「木村、マスターと血縁あるの?」
「おや、言ってなかったのかい」
「いや、そういうのなんか…言うの恥ずかしくない?」
…わからなくもない。
親族経営のバイトで働いてて。
友達に、これ親族なんですーって。
たぶん、紹介しない。
恥ずかしい、気がする。
「わかる」
「だろ」
「2人はほんと仲いいね」
嬉しいけど、ここはスルーだ。
それこそ恥ずかしいので。
前髪で隠しながら、チラっと木村を見る。
だよね、わかる。
なかなかレアだ。
恥ずかしそうにする木村も。
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