星渡る鯨

ソレユライト木陰🦁

第1旅 自星待機の連絡網

ジータ? ジータ!

早く起きないと遅れるんじゃないの?

今日は早く出るんでしょ?


少し時代遅れの曲が流れるリビングの方から母の声が聞こえてくる。アイニクだがかなり頭が痛い。昨夜から降る雨の冷たさが部屋に入り込み、肩から冷えてしまったのだろう。


あぁ


とだけ唸り、また眼を閉じる。


バタン

スパンスパンスパン、、、


どれくらい経っただろうか。リビングのドアが閉まる音とスリッパ音で、今の状況がぼんやり分かった。頭痛は奥の方で残っている。明らかに変わった事と言えば母が起こしに来ないことだろう。


リビングの肘掛けの付いたチェアに腰掛けて母に尋ねてみた。 今日はオフ?


そーよ、2時間位前に連絡網が来たわ


助かった。 ピポポ、気重けおもい自分の体に力を入れてパネルを数回押してみせた。

ビジョンボードには顎髭あごひげを蓄えた父の顔が映っている


おはよぉジータ

今日もこっちは雲一つない快晴だ

manimaniの岩の辺りへ狩りに行く予定だ


父は漁を仕事にしていてそれが僕が生まれる前からだから、僕の記憶としては背景はいつも海だ

いまいちどこの海かは知らないけど綺麗な所なのは分かる。


父さん、僕もう8才になるんだからそろそろ色々と教えてよ!


そーだな! 今度帰ったら一緒に道具を揃えよう


軽快な約束は破られても僕も気付かないから大丈夫。でも今回は破られるわけにはいかない!


僕も海へ行きたい

そういつも願ってビジョンボードをみていたのだった


残念な事に午後からオフ解除の連絡網が来た

仕方ない、行くか


僕はカバンを背負って家を飛び出した。

水面に映る反転した景色に

若干の期待をしつつ、今日も人の波を泳ぐ事になったんだ。

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