第7話 夜練習
Nさんが小学校五年生ほどだった頃。
彼女は水泳を嗜んでいた。ある放課後、心拍数のトレーニングに彼女を含めた数人が夜練習に行っていた。その頃はまだ秋だったが、少しずつ風が冷たくなっていた。
その時は珍しく屋外プールで練習する事になった。プール自体は二十五メートルの三レーンと言うごく普通な物だったが、温水プールであった為、水の温度は二十九度から三十度はあると言うわけである。
そのせいで彼女たちがプールに着いた頃には温度差の水蒸気で五メートル先からはほとんど何も見えなくなっていたのだ。彼女たちはその中、「良し!」と言われるまで只ひたすら泳ぎ続ける、と言う練習をしていた。Nさんが泳ぎ続けて十五分ほど経った頃だったろうか。既に彼女の体に染み付いている左クロールの後の右呼吸をした時だった。視界に見えたのは正しくたったの数秒だったが、レーンの横に白装束を着た少女が立っていたのが彼女には見えたのだ。彼女は泳ぎを中断してまた振り向いたがその時には少女はすでに消えていた。彼女は練習後、同僚に聞きに回ったが誰もそのような少女は見なかったと言っていた。コーチまでもが彼女の体調を気にする様であった。
その後から彼女はその屋外プールで練習がある時には休む様になった。少し嫌な感じがしたからだ。Nさんはこの後オリンピックのメダリストとなるのだがそれはまた違う話である。
このプールで行方不明者が出始め、封鎖されたのは言うまでもない。
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