第150話 何で?!

『今の言い方は我がミノタウロスごときに遅れを取ったとでも言いたげだな。』


少しばかり威圧を出しつつ眉間と鼻筋にシワを寄せたヴィミエナが立ち上がり、目撃したと話した冒険者を睨む。


睨まれた冒険者は顔色を真っ青にしながら後退った。

ケオトートティーガであるヴィミエナに睨まれるのは怖かっただろうし、まさか魔物が話すとは思わなかったんだろう。


私には眉間と鼻筋にシワを寄せたヴィミエナもかわいく見えるんだけどね!


そして、少しとはいえどヴィミエナの威圧を受けたはずのシリウスがケロッとしているあたり、この子も大物になりそうな予感がするねぇ。




『一撃でミノタウロスを倒していたから部屋から出てくるのが早かったのだ。疑うのなら我の前にミノタウロスを3匹でも5匹でも10匹でも連れて来るが良い。全てまとめて一撃で屠ってくれよう。』


少しドスの聞いたヴィミエナの声。


ミノタウロスに手こずって部屋を出たり入ったりしていたと言われたのがよっぽど気に入らなかったみたい。


「確かに一晩、ミノタウロス部屋でお肉チャレンジは繰り返しましたよ?その度にヴィミエナが一撃で倒してくれていたので、部屋に入ってから出るまでは確かにだいぶ早かったとは思いますけど…。でも正直、モンスタートレインを起こす為に費やす時間が有るなら1匹分でも多くのミノタウロス肉をゲットするのに使いますよ?そっちの方が有意義な時間ですもん。」


「因みに幾つミノタウロスの肉を手に入れた?」


「えぇっと。一晩で15匹分ですね。あ、証拠にお肉の塊出して見せましょうか?モンスタートレインで倒したの入れたら18匹分になりますよ!」


「15いや18匹…そんなに沢山…凄い買取額になるだろうな。」


「嫌だなバルダットさん。お肉は売りませんよ?皆で食べるんですから!」


「売らない?ひとつもか!」


「もちろん!」


なんか一斉に、何言ってんのこいつみたいな顔して見られたんですが何で?駄目?!



「それよりもあの怪我した冒険者の子はどうなったんですか?そもそも何で彼女ひとりでチーボアイの9階層に居たんでしょうか?彼女どう見てもアタッカータイプではなくサポートタイプでしたよね?剛毅の守り手の皆さんは彼女がミノタウロスに襲われていたところを助けたんですよね?ひとりでミノタウロス3匹もどうやってあの部屋から誘い出したんでしょうか。」


「あなたが起こしたモンスタートレインに巻き込まれたんでしょう!何をしらばっくれて!!」


ベロトナさんまだ言うかね?ギルマスと剛毅の守り手の皆さんの顔を見てご覧よ、あなたの言い分は信じられていないのよ…。


「まだ言います?だからそんな一銭にもならない、腹も膨れない無駄な事なんてしませんよ!知りもしない赤の他人襲わせる為にそんな無駄な労力使うくらいなら、お肉ゲットしますってば!!」


「テイマーが地位や名声ではなくお肉が欲しいなんて事ある訳がないじゃないですか!!」


「テイマーなんだからお肉が欲しいに決まってるじゃないですか!うちの子達にひもじい思いなんてさせる気はありません!テイマーとして地位や名声が欲しいのはあなたでしょっ!」


「!!!」


私の言い放った言葉に慌てて周りの人達の方を見渡すベロトナさん。


大丈夫。優しいわたくしはテイマーとしてのところから防音結界を張ってあげたから周りには聞こえていませんよー。


まぁ、敏い人には気づかれてるかもだけれどね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る