第149話 反撃開始

「な、何を言ってるんだお前は!」


「だって鑑定結果に出てますもん。」


「鑑定結果?ふん、そんなレアスキルなんて持っている訳がない!」


「なら本当かどうかご確認を?ベロトナ・デボットさん。33歳。もんノ月15日生まれのデボット男爵家の次男坊。独身。ご家族は両親にお兄様に妹さんもいらっしゃいますよね。このギルドに勤めて18年。適性職種スキル、テイマー。その他スキルは水魔法に、あら計算がお得意?算術なんてスキルもあるんですね?」


「何故そんな事まで…。」


「あぁ、ご安心を。この会話は防音結界で若い冒険者パーティーの方々には聞こえない様にしてありますんで。テイマーであるあなたがテイマーである私をあんなに馬鹿にしていたなんて知れたら、それこそどんな目で見られるかも考えられないほど私は酷い人間じゃありませんので?でもベロトナさんは酷いですよねぇ。何でしたっけ?ひとり金貨10枚であのテイマーの女冒険者がモンスタートレインを起こした事を目撃したと言え。でなければこの先ここでまともに冒険者が出来るとは思わない事ですね。でしたっけ?だから駆出しみたいな若い冒険者ばかりなんですねぇ目撃者。それから剛毅の守り手の方々ですけど、呼び出さなくてもまだ上の階にいらっしゃいますよね?ギルマスと今まさにモンスタートレインの事をお話していらっしゃるから、こちらに呼んで照らし合わせをすればよろしいのでは?それともこちらから伺います?それから、モンスタートレインの犯人を扱う案件を受付の方ひとりで進めているのもすごく怪しいですよね?あ、そろそろ防音結界解きますね。周りが怪しみ始めましたし。」


一応、彼の体面を保つ為に防音結界を張ってからヴィミエナ&鑑定さんの情報を畳み掛けてみた。


さて、どう出るベロトナさん?





「で、ですからこれだけの者が目撃しておりまして!」



結局、騒ぎを聞きつけたギルマスと剛毅の守り手がこの部屋に来た為に、ギルマスに必死に訴えるベロトナさんでした…。


「これだけ従魔が居れば3匹のミノタウロスを上手く誘導出来るでしょう!」


「そんなの従魔じゃなくて、人間でも複数人でパーティー組んでるなら可能じゃないですか。」


「テイマーだと馬鹿にされるからと、己の地位や名声の為にこんな酷い事を!」


「まだ言います?だから私は地位や名声の為に冒険者やってんじゃありませんっての。この子達とこの世界の美味しい物を食べる為の旅をするために冒険者してるんですよ。旅をするのに従魔登録しておかないと、この子達と一緒に居るの許してもらえないだろうから登録してるんです。地位や名声だけ上げても腹は膨らまないでしょ!」


ちょっと剛毅の守り手の皆さん、私とベロトナさんの会話の応酬を聞きながら苦笑いしてないで!なんで助けてくれないんですかっ?!



「ベロトナの言う通りだとすると剛毅の守り手が報告してくれた事と食い違いがかなり有るな。」


思いが通じたのか、まあまあと会話に入って来てくれた冒険者ギルドのギルマスは、すらっとした体型に鱗のような肌と龍角が特徴的な女性。


アミュナさんと言うそうだ。アニュラさんと名前が似てるな。肌と龍角からして、アミュナさんも竜人族なのかな。


「ベロトナさんは俺達が嘘の報告をしたと言いたいのでしょうかね?」


先程までモンスタートレインについての話をしていたギルマスと剛毅の守り手の皆さんのベロトナさんを見る目は冷ややかだった。


「いえ、ですから剛毅の守り手の皆様が見ていなかったところでですね。ほら君達も!目撃した時の事を説明したまえ!」


「こ、この人達が一晩、ミノタウロス部屋に入ったり出たりを繰り返していたのを見ました!入ったらすぐに出て来ていたので倒せないなら挑戦しなきゃ良いのにと思っていたら翌日あんなことに…。」


背中をドンと押された冒険者のひとりがおずおずと答える。



それに答えたのは、今まで私の足元でヴィヴィとシリウスをあやしていたヴィミエナだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る