第148話 負けられない戦い

人には負けられない戦いが有る……私にとっては今がそれだわ。



初日に対応してくれた受付男性職員の話を纏めると、今回のモンスタートレインは私と従魔が起こした事で、目撃者もいる。


その目撃者がここにいる複数の若い冒険者パーティーであり、言い逃れは出来ないのでお縄につけ!というもの。


もう、何でもありだな。


そう思う理由は身体強化でヴィミエナがここに来るまでに拾ってくれた会話を聞いていたからと、逮捕案件だという割に対応しているのが受付の人ひとりっていうのもおかしいでしょ?


「あなたがモンスタートレインを起こした事を目撃した者がこれだけいるのです。分かっていますねテイマーのサクラさん?」


嫌な笑顔を作りながらこう言うのは、名前をベロトナと言うらしい、初日に冒険者ギルドで対応してくれた男性受付の人。


「あの、幾つかよろしいですか?まず、怪我をした冒険者さんの容態はどうなりましたか?それからAランク冒険者の剛毅の守り手の方々から先に説明もされていると思うのですが、その説明でも私がこのモンスタートレインの原因だと言われているのでしょうか?ご本人達を呼んで再度説明をお願いしたいですね。それと、あれだけ大勢のダンジョン攻略をしていた者がいたにも関わらず目撃者だというパーティーの方々が若い人達だけなのも不思議な事ですよね?何より私にモンスタートレインを起こすメリットが何も無いのに何故そんな面倒臭い事を起こさねばならないのでしょう?ミノタウロスは1匹ずつしか出現しない。1回のリポップにどれだけかかるかはその時々で変わるのに、その間ミノタウロスを倒さずダンジョン内をうろつくなんて時間の無駄ですよね?そんな事している時間があればどれだけのお肉がゲット出来るか。」


「な、何を言って…。剛毅の守り手の皆様はAランク冒険者なのですよ?一度説明して頂いた事をテイマーであるあなたの為にもう一度説明してくださいと呼び出せるほどお暇な方々ではないのですよ!目撃者と名乗り出てくれたのはあなたに報復されるかもしれない事を恐れなかった勇気ある方々なのです。怪我人はこちらの管轄外ですので知りません!それにあなたがモンスタートレインを起こす動機なんて誰だってわかりますよ?だって…」


「「テイマーなんだから。」」


ベロトナと私の声が重なる。


またこの理由。犯人だと決めつけられた理由は分かっていたけど、腹がたつよね?ちょっと威圧出ちゃったよ。


「テイマーだと何故モンスタートレインを起こす必要があるのでしょう?」


「な、何をとぼけて。そんなのモンスタートレインを解決したのはテイマーの私です!という所を皆に見せて冒険者としての地位や名声が欲しかったに決まっています!テイマーの地位なんて底辺の底辺もいいところだから大変なのでしょう?」


私が出した威圧にちょっとたじろぎながらも、ベロトナはあくまで私が犯人という事にしたいらしい。


「勝手にテイマーが地位や名声が欲しい者だと決めつけないでもらえます?そんな、腹の足しにもならない周りの評価なんてくだらない。そもそも私はそんな事の為に冒険者になった訳じゃありませんので!」


「ふん。テイマーが何を強がって。」


「ベロトナさんはよっぽどテイマーを悪者にしたいみたいですねぇ?でも不思議ですね?まるでテイマーである私よりもテイマーである事を気にしているみたい。」


「何を馬鹿な事を!何故この私がそんな事を気にしなければならない?!」


ベロトナは偉そうな態度は変えないものの、明らかに動揺した。

テイマーのことは気になるよねぇ?




「何故ってそりゃあ、あなたの適性職種スキルがテイマーだからでは、ベロトナさん?」

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