第143話 モンスタートレイン
「誰か!ポーション持っている奴はいないか!!いたら頼む譲ってくれ!」
大盾を持った190cmは有りそうなガッシリとした体型の男性がセーフティエリアに駆け込むやいなや大声で叫んだ。
少し後ろから、すらっとした剣士の女性と背中に大きな斧を背負った男性が一人の少女を抱えてセーフティエリア内に入って来たが、抱えられた少女を見て一気に血の気が引いた。
少女は右肩からお腹にかけてまで血で真っ赤に染まり、所々本来は見えてはいけない物が見えてしまっている。
顔面は白く、意識もないように見える。
突然の出来事に皆が固まっていると、最初に叫んだ男性が再び声を上げる。
「俺達の手持ちだけじゃ足りなかったんだ!誰か余分にポーション持って来ている奴はいないか!!」
その大声に我に返ると、私は慌ててアイテムボックスの中からポーションを取り出してセーフティーエリアの入口に走る。
チーボアイに潜る前に作っておいたEXポーションだ。
「あの!ポーション有ります!EXポーション!これ使ってください!!」
「すまない!恩に着る!!」
大盾を持った男性にEXポーションを渡すと大怪我を負った少女にすぐさまかける。
EXポーションをかけた場所からみるみるうちに傷口が塞がっていく。
見えてはいけない物にもちゃんと効いてくれるのかと心配になったが大丈夫だったようだ。
顔色と意識は戻らないままだが、あれだけの大怪我が嘘だったかの様に傷口はきれいに塞がった。
少女の傷口が塞がると静まり返っていたセーフティエリア内が今度はザワザワとし始めた。
あれだけの大怪我をする事になった理由を皆が気にし始めたようだ。
「ありがとう。おかげでなんとか一命は取り留めた。俺達はこのままこの娘をダンジョン外まで連れて行き薬師ギルドで見てもらう。と言いたいところなんだが…。」
男性がそこまで言うと口籠る。
皆が男性が口籠ったことを不思議に思ったが、その理由はこれまたセーフティエリアに駆け込んで来た者によって知らされた。
「リーダー駄目だ!!3匹付いて来てる!!」
「分散させる余裕もありませんでしたわ。面目ない。」
胸当てを着け短刀を装備した斥候であろう深緑のサイドポニーテールを揺らす少女と、ミルクティーベージュロングヘアーの黒いローブを纏った魔法使いであろう女性が息を切らしながらリーダーと呼んだ男性に説明をしている。
「皆すまない。ミノタウロスのモンスタートレインだ。セーフティエリアを出たすぐの所に3匹居る。悪いがCランク以上の冒険者は討伐の協力を頼む!」
リーダーと呼ばれた男性の一言にセーフティエリア内は急に騒がしくなった。
「モンスタートレインだと?ふざけんなよ!」
「しかもミノタウロスの?!」
「ここを出てすぐの所って、出たら間違いなく攻撃されるじゃない!」
「連れて来たのはお前らだろう!自分達で責任取れよな!!」
あちらこちらで怒号が飛び交う。
その中には先日、孤児院の子供達にお肉の塊を見せびらかしていた新碧の剣の面々もいた。
セーフティエリア内を見渡したリーダーと呼ばれた男性が大きくため息をつく。
「レンは怪我をした彼女に付いていろリーダー命令だ。ハロルド、フラン、ナミアナすまんが付いて来てもらうぞ。」
「当たり前だろうバルダット。Aランク冒険者になった時に覚悟は決めてる。」
レンと呼ばれた斥候であろう少女は何かを言いかけたがリーダーの顔を見て怪我をした少女の元へと歩いていく。
下唇をぎゅっと噛み拳は震える程に強く握られている。
ハロルドと呼ばれた大斧の男性とフランと呼ばれた剣士の女性、ナミアナと呼ばれた魔法使いの女性は覚悟を決めたかの様な表情で、バルダットと呼ばれたリーダーの男性に向かって頷くと4人はセーフティエリアの入口の方へと視線を向けた。
※高ランク魔物は大量ではなく数匹であっても被害が大きくなるのでモンスタートレイン扱いをこの世界ではしているという設定です。宜しくお願いします。
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