第122話 深碧の剣

「最下層の10階は海が広がってるらしい。何で地下に海があるのかはダンジョンの謎で未だに解明はされていないらしいけど。」


「海も有るの?!じゃあ、海鮮も手に入るって事か!チーボアイ最高過ぎる!!10階はどんな魔物が出るか知ってる?」


喰い気味の私にジン君がちょっと引いているけど、情報はしっかりと教えてくれた。


「10階は種類が多いみたいだから全部は分からないけど、メガシュリンプにロッククラブ、ギガントスカラップ。コーラルシャーモンにダンジョンのボスとしてシーサーペントが出るって言うのは聞いた事がある。」


なる程。名前的に海老、アサリ、帆立、鮭は手に入るって事ね!

シーサーペントはウミヘビの魔物のイメージなんだよなぁ。蛇だと味は鶏肉っぽいのかな?レアだから会えるか分からないけど楽しみだ!


楽しみ過ぎてニヤニヤしてしまっていたら、すぐ近くを20代位の若い冒険者のパーティーが通った。


冒険者の肩には大きな肉の塊が担がれている。


「今日も大物が手に入ったぜ!これで分厚いステーキでも食おうぜ!!」


なんてことない会話に聞こえるが冒険者パーティーの通った後のジン君達孤児院の子供達の表情が暗い。


「また…。」


近くにいた少女が小声で呟く。不思議に思っているとジン君が深い溜息の後に理由を教えてくれた。


「あいつ等はこの街を拠点に活動している深碧の剣しんぺきのつるぎってDランクパーティーで、ああやって俺達に肉の塊を見せびらかして通るんだ。最初はただの会話だと思ってたけど、このダンジョンは魔物の出るエリアからは直接ダンジョンの入口に戻れる魔法陣が有るらしいから、わざわざ1階まで肉の塊を担いで自力で歩いて来る必要はないんだ。俺達はダンジョンに入る日にちを決めてるから俺達が居る日は必ずああやって通る。」


「つまり、そんな面倒くさい事をして帰って来るのは君達に肉の塊を見せつけるため?」


私の問に子供達が皆頷く。


「かぁ、なんて器のちっさい奴等かねぇ。そんな奴ら3流冒険者とも言えないわ!器の大きな立派な冒険者ってんなら、肉の塊ひとつくらいどどんとくれてやるくらい言えんのかい!見せつけるためだけにわざわざ階層上がって来るとか馬鹿なの?同じ冒険者として恥ずかしい!!」


ジン君が苦笑いしているが本当に恥ずかしい話だからね?


深碧の剣の皆さんが冒険者として孤児の子供達に意地悪い事しているって…肉の塊寄付するぜ!くらい言ったらカッコいいけどなんて子供じみた嫌がらせ…。


「暴力振るわれたりする訳じゃないし、採った食材を奪われる訳でもないから特に問題は無いし流してるから大丈夫だ。それにさっきも言ったけど、野菜や果物を腹いっぱい食えるだけでも俺達には幸せな事だから。」




本当にどっちが大人なのやら!!

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