第120話 孤児院の子供達
「うわぁ!!」
小麦をナイフで刈っていたら後ろから大きな声が聞こえた。
振り返るとそこには尻もちをついた子供とその前でヴィミエナに向かって手に持っているナイフを向けながら震えている13、4歳位の男の子。
「どうしたの!大丈夫?!」
急いでヴィミエナに近づく。
どうやら小麦刈りに夢中だった子が顔を上げたら居たヴィミエナに驚き、その声を聞いた男の子が駆けつけて来たようだとヴィミエナが困りながら念話で伝えてきた。
「驚かせてごめんね!この子は私の従魔だから皆の事は襲わないから大丈夫よ!」
とりあえず、ヴィミエナと彼女にナイフを向けている男の子の間に入る。
「本当よ。この子が野生の魔物ならあなた達はとっくに襲われているはずでしょう?悪いけれどお世辞にも戦闘が得意とは言えなそうだし。」
「確かに俺達じゃスライムかホーンラビット位しか倒せないけど…。」
ナイフをこちらに向けている男の子はまだ手が震えている。
「私はサクラ。この街には来たばかりの冒険者よ!ランクはD。この子達は私の従魔で、大きいこの子がヴィミエナ。あそこで小麦を刈っているピンクのスライムがモモ。モモの側に居る黒い子がヴィヴィでヴィミエナの子供ね。その近くに居るワンちゃんみたいなかわいい子がシリウス。シリウスの頭に乗っている蜘蛛の子がマリモ。みーんなかわいい私の家族よ!」
「家族…。」
「そう家族!あなたもこの子を守る為に怖いけどヴィミエナの前に立ったんでしょう?優しくて素敵なお兄ちゃんね。」
「俺達はこの街の孤児院に居る孤児だ…血は繋がって無いし本当の兄弟でも無い!!」
男の子はナイフを私に向け直して言う。見れば周りには10人以上の子供達が居た。
「でも協力しあっているんでしょう?偉いじゃない。別に血の繋がりが有ろうが無かろうが関係ないと思うけど?血が繋がっていたって平気で子供を捨てる大人は何処にでも居るもの。私の叔母さんもそうだったし。私にとっては血も繋がって無いしなんなら人でも無いけどこの子達の方がよっぽど素敵な家族よ?!」
私の言葉に男の子はナイフを下ろした。
「あんたも孤児か?」
「正確にそうとは言えないけど両親が死んだ後に引き取ってくれた従兄妹の家族は、私の両親の遺産を奪ったら私の世話は一切しなくなったわね。」
後はこの世界に来た時のメガリスに巻き込まれた異世界人だと言う事を隠しつつ死の森に捨てられる事になった経緯を話した。
「その従兄妹家族は両親の遺産だけじゃなくばあちゃんの遺産も奪う気だったのか。酷い奴等だな。」
「そうね。血が繋がっててもそうなんだもの、血の繋がりが無くても心穏やかに暮らせるならその方が私は幸せよ?今、この子達と居れて幸せだもの。」
『我もサクラと会えて幸せに思っているぞ?群れに居たら味わえなかった事が沢山有るからな。』
ヴィミエナが私の頬に頭を擦りつけて来る。デレるヴィミエナさんなんて貴重だねぇ。
ヴィミエナを見たのかヴィヴィ達も集まり私の足にスリスリと擦り寄って来る。
皆マジでかわいいんですけど!!
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