第113話 薬師ギルド

商業ギルドの受付のお姉さんが慌てて、またまたご冗談をとか、お人が悪いとか、お金に変えないと困りません?とか言ってるけど知らんがな。


死の森の素材を売った金貨がまだ残っているからお金の心配は今のところいらないんだよね。


始まりの町で作った下水道掃除のシステムが本格的に他の街にも普及し始めればその権利料も入ってくるし、水が湧き出る桶や鍋はちょこちょこと売れ始めてもいる。

こちらも権利料や売上の何%かは入ってくる事になっている。

そして今、生産者育成に力を入れているベビー用品やナプキン、化粧水やシャンプーなども売れれば売上は入ってくる様になるのだ。



「商人にとって商談相手やお取引相手は信用に値するかが大切だと私は思っております。見た目や職業やら一見さんかやらで態度を変えられるような方を信頼は出来ませんので失礼ながら、初めて来たこの街のギルドの方がテイマーである私へどの様な対応をされるのか見させて頂きました。その結果は十分に…。それに、時は金なり!商人にとって時間は大事なんです。商業ギルドにお勤めでしたらお分かり頂けると思うのですが?では改めて、失礼いたします。」


笑顔で言う事言って商業ギルドを後にする。だいぶ時間をロスしてしまったけどまだまだやらなきゃいけない事は有るのだ。


まずは薬師ギルドにも行きたいし、宿泊先も探さないといけない。

従魔の皆と泊まれる場所が無ければまた考えなくちゃいけないし、全ギルドの対応がこんな感じならこの街での生活の仕方も考えなくちゃいけない。


冬を越すなら最低でも2ヶ月はこの街に居る事にんなるんだから。


そんな不安を抱えつつ、やって来ました薬師ギルド。こじんまりとしていて他のギルドに比べると質素というか何と言うか…。


「ごめんくださーい。」


「おやおやお客様なんて珍しいねぇ。」


扉を開けると薄暗い室内にローブのフードをかぶって杖をついた小柄なお婆ちゃんがこちらに目線を向けた。


その目は煤けた感じの金色の瞳に縦長の瞳孔が特徴的で、日に焼けた様な濃いめの肌はよく見ると所々が鱗の様になっている。


「薬師ギルドで薬草やポーションは買い取ってもらえますか?」


「はいはい。買取っておりますよぉ。それではこちらに買取希望の品を乗せて下さいねぇ。」


出されたトレイに薬草数種類とシンプルな瓶に入れた下級ポーションは数本乗せる。


「はい。拝見いたします。」


お婆ちゃんは受付の様なデスクに座ると何やら虫眼鏡の様な道具を使って薬草やポーションを手に取りまじまじと見始めた。


「おやおやどれも状態が良いねぇ。薬草は摘み取り方も綺麗だしポーションも下級といえどもほぼ中級に近い出来だねぇ。しかも薬草のみで作ってこの品質だ、魔物の素材を入れたEX《エクストラ》ポーションならもっとすごい効果になるだろうねぇ。腕が良いよこのポーションを作った者は。」


「ありがとうございます。」


女神様達に貰ったチート能力のおかげなので手放しで喜べる訳じゃないけれど、褒められるのはやっぱり嬉しいよねぇ。


「おや、このポーションはお嬢さんが作ったのかい?」


おっと、褒められた条件反射でついお礼を言っちゃったけど、ポーション作れる事はバレるとまずいとは言われてなかったから大丈夫だよね?


瓶もシンプルな物にしてあるし大丈夫だよね…。




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