第109話 フェンリルの子供
始まりの町を旅立ってから3日程。現在、ヴィミエナに乗りながら森の中を移動中。
ヴィヴィはおんぶ紐でおんぶせず私達の横を走って付いて来ている。
中々の長距離を音を上げずについてこれるようになったのは体力がだいぶ付いてきたからだろう。
子の成長は早いと言うけど本当だねぇ。
『む、左前方に魔物の反応複数だ。この反応はフェンリルだな珍しい。』
ヴィミエナの声に気配探知のマップで見ると確かに複数の魔物の気配。
フェンリルなんて、異世界ものの定番中の定番じゃない?見たい!
と言う事で寄り道。
隠密スキルで気配を消して近づけば5匹のフェンリル。4匹は大人で1匹は子供っぽい。
でも子供フェンリルの毛の色が大人のフェンリルと違う。
大人達は綺麗なシルバーの毛並みだけど、子供フェンリルは琥珀色っぽい毛並み。
「あぁ、これはまたデジャヴなやつ…。」
鑑定さんで確認したら、子供フェンリルは変異種個体の子。
「で、縄張りじゃなさげな所で囲まれているということは…。」
『ガァッ!!』
1匹の大人フェンリルが子供フェンリルに襲いかかる。やっぱりか。
アルカナジャベリンをアイテムボックスから取り出しながら転移で子供フェンリルの前に出る。攻撃を止められ驚いた大人フェンリルが次の瞬間にはヴィミエナの尻尾攻撃によって吹っ飛んで行った。
『キャウン!』
飛んでった先で木に叩きつけられて倒れたフェンリル。
ちょっと予想以上の力で叩きつけられてて痛そう…。
「さて、毛の色が違うからって殺そうとするのはどうなのかな?変異種は強い個体になる子が多いから群れの強化にも良いはずなのにね?」
武器を構えたまま残りの大人フェンリルの方を向く。
『キャン!!』
1匹また飛んでいった。横を見るとヴィミエナが尻尾をバシっと地面に打ち付けていた。
『殺されたく無ければ今すぐ失せるが良い。』
牙を剥き出し威嚇するヴィミエナの圧に、大人のフェンリル達は数歩後退ると尻尾を巻いて逃げて行った。私とヴィミエナにすっ飛ばされた2匹もヨロヨロとしながら逃げて行く。
『みゃ!みゃうみゃみゃ。』
『ぷりゅりゅりゅ!』
『わふぅ。』
ペタリとお尻をつけて座り込んでいる子供フェンリルにヴィヴィとモモが声をかけ始めた。子供会議は微笑ましいねぇ。
結局この子供フェンリルは変異種特有の毛の色が他のフェンリルからよく思われず処分される為に2日程かけてここへ連れてこられたんだとか。
移動中は食事も水分も取らせてもらえず、大人の歩幅に付いて来いと無茶を言われたらしい。許せん!!
「とりあえず、これを飲んで。」
子供フェンリルの前に疲労、体力回復効果のある赤ポーションを混ぜたジャイアントゴートのミルクを差し出す。
警戒しているようなのでヴィヴィに念話を送ると目をキラキラさせながらミルクの入った入れ物に顔を突っ込んで飲み始めた。
『みゃうみゃう。』
危ない物ではない事を飲んで教えてあげてと言ったんだけど…ヴィヴィさんやガチ飲みしてるじゃん!!
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