第107話 新年明けました!

この世界に来て初の年越し!


年を越した瞬間に、手持ちのろうそくに火を灯し大切な人の健康と安寧を祝うのがこの町での新年の祝い方なんだそう。


私は従魔の皆の健康とこの町で良くしてくれた人達の幸せを願うことにした。


元旦は町の中心の少し開けた場所に、皆でご馳走を持寄りわいわいと過ごすのだとか。

私もレッドスネイクの唐揚げと、イチジクのタルトとモウモのチーズケーキブルベソースがけを持って参加した。


イルマさん達にまた高級食材を!と慌てられたけど、レッドスネイクはアイテムボックスに1番在庫が多いので大丈夫ですと押し切った。


新年だものちょっと豪華でも良いでしょう!美味しいですよ?





お開きとなる頃にはナバスさんに連れられた豪傑の戦士の3人が今までの非礼を侘びに来た。逸れ魔物の時の事が随分と堪えたようだ。


デュートの腕もだいぶ元のように動くようになったそうで、これからコツコツ達成出来なかった依頼の違約金を返していくそう。


この町でだから良かったものの、他の街でなら違約金の返却期限切れでとっくに奴隷落ちだとギルマスに散々脅されたそうな。


これで彼らも良い冒険者になってくれると良いね。



因みに私が助ける為に使ったポーション代は利子、返却期限無しで貸しにしてある。余裕が出来たらイルマさん経由で少しずつ返せば良いと言ってある。


踏み倒したら覚悟しておけとも言っておいた。3人とも顔を引きつらせてうなずいていたので大丈夫だろう。




年が明けてから数日、商会で売る商品の在庫確保は十分に出来た。


大商会の我が物顔で売ってやる対策は、我が商会から売り出す商品には特殊な魔力印という方法でロゴを付けるというもの。

魔力印とは魔力を込めて付ける印のことで、魔力は指紋のようにひとりひとり違うものらしいので偽造することは出来ないそうだ。


後は、マチルダ様に売って貰う貴族用の商品に死の森の素材をケチらずに使う事で様子を見る事にした。


死の森の素材はノベルディアンの領主兼冒険者ギルドのギルマスが、他領への販売を制限しているせいで品薄状態が続いているそうな。


それなのに死の森の素材で作られた商品が出回れば入手先を調べるはず、そこでマチルダ様が私の友が狩ったものを定期的に我が領で売ってくれている為、この町で生産していると噂を流すらしい。


その友とは私の事らしいのだが…領主様と友ってそんなのおこがましくない?大丈夫?


確かにキュクロプス討伐した後、褒美で貰ったお家にマイトさん達と遊びに来たこともあるし、メリアさんと商品打ち合わせの為にお家にお邪魔した時に何故かいらしたり、生産者さんの育成具合を見に行った時も来ていらしたり、ヴィヴィと平原で追いかけっこしてた事もあったわ…フットワーク軽くないかマチルダ様。

領主様だよね?


しっかりとお話してみると豪快な所はあるが領民思いでフレンドリーな感じ。

でもキレるとこ切れてて抜かりない感じもする。


厄介扱いされていた土地を一代でここまで町の形として運営しているのだからその手腕は確かなんだろう。


あんまり目立つのは嫌だと思っていたら、私の名前や特徴は出さないでくれるそうだし、なんなら周りはマリリンさんがそうなのではと思い込むだろうから安心しろと言われた。


「言ってなかったかい?あたしゃ元Aランク冒険者で一時期はノベルディアンで死の森の魔物討伐をしていたんだよ。」


聞いてません!!


なんでもマリリンさんは男性顔負けのパワーで死の森の魔物討伐をしていたそうで、そこそこ有名人だったそう。


「死の森の魔物は強いのばかりだからね、素材を無傷で狩れるなんてことの方が稀だ。でも強い魔物の素材でレアだからこそ多少傷があってもそれなりの金額で買取をしてくれていたんだよ。でもある時から討伐して来た魔物素材の買取の時に、やれこの状態がどうの傷の数がどうのでこの素材に値段は付けられないけど処分は大変だろうから無料で引き取ってあげようとか言い始めてね。それまではそんなこと1度も無かったのにだ。まるでただで素材を手に入れようとしているみたいだからそれが気に入らなくて辞めて来たんだよ。で、メリーの居るこの町に来て領主様に拾って貰ったのさ。」


初めて会った時にノベルディアンのこと嫌そうだったのはそういう理由だったのね。




それってあの御令嬢受付嬢の横領と関係あるのかな?結構前の事なら違うか?





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