第98話 怒り

「無事か!!って領主様またご自分で現場に駆けつけるとは!しかもスレイプニルで!」


閉じられていた関所の門を開けて入って来たのはヘルマンさんと見守り隊をやっていた元冒険者のオッドさんとヤールドさんだった。


「何を言う、領民の危機だぞ当たり前だろう!」


「ですが領主様に何かあったらそれこそこの領の者達が困ります!」


領主マチルダ様とヘルマンさんが何やら言い合っているうちにオッドさんとヤールドさんがフィン君を町まで運んでくれるというのでタンカーでの運び方を教えてお願いした。


『クウェ!』


「チェリ!!聞いたぞ、お手柄だったそうだな。ありがとうな。お前のおかげで助かったよ。」


『クウェ〜』


オッドさんが連れてきてくれたチェリちゃんはマイトさんに抱っこされ撫でられ嬉しそうだ。

パパを助けてと必死に飛んできたんだもんね。助かって良かった。




さて問題はまだ終わっていない。


「ナバスさん体調はどうですか?動けます?」


「あぁ、サクラちゃん。ありがとうだいぶ落ち着いたよ。」


赤ポーションの瓶を握りながら手をヒラヒラと振り笑顔を作るナバスさんだが、顔色はまだ良くないので彼も安静にして休んでもらわないとね。


そして…こちらを見るなりビクッとした3人。


そう豪傑の戦士の3人。


小奴ら本当に馬鹿なのね。怒りがフツフツと湧き上がるわ。


「何であなた達がここに居るのかしら?」


「お、俺達なら死の森の魔物でも倒せると…」


「で?実際はどうだったの?勝てるどころか利き腕大怪我して?腰抜かして動けなくなって?クリムゾンキングベアの良い餌になりそうだったところをナバスさんに身を挺して助けてもらってナバスさんを殺しかけたのよね?」


「それは違う!!」


「何が違うの?ナバスさんは遠距離攻撃の弓使いで壁の上から敵を弓で狙う戦い方の人よ?それが敵の目の前に出ていくなんて普通じゃないでしょ!あんた達が餌にならない様に守ってくれた。あんた達が自分達の力を勘違いせずにこんなところに来なければしなくて良い怪我だってあったのは事実でしょう?!あれだけ町の人達が注意してくれていたのに!!」


「その通りじゃ。サクラと従魔のおかげで全員生きているし結果はオーライだ。でもな豪傑の戦士の3人よ、今回は犠牲者が出なかったからそう言えるのじゃ。サクラ達が間に合わねば確実にお主らは死んでいたじゃろう。冒険者なら、自分がどう動いたら戦況がどう変わるのかしっかりと考えよ。その行動で自分が、仲間が死ぬかもしれない事を忘れるな!そして自分の力量を見誤るな!命を無駄にしない為にもな。分かったか!!」


「「「はい…。」」」


グジュグジュに顔を崩しながら豪傑の戦士の3人はヘルマンさんのお説教を聞いている。

後はヘルマンさんにお任せしよう。


流石に今回の事で懲りるだろう。


懲りるよね?



「しかし、逸れが4匹も出るとは驚いたな。これが初めてではないか?」


「確かに今まではありませんでしたね。1匹しか来ないだろうと決めつけ油断していました。魔物に絶対は無いに。」


マチルダ様とマイトさんが話しているが、逸れ魔物は普段滅多に来ない上に来ても1匹な事が多かった為に油断したとの事なのだが…今回4匹も来た理由…私、気配探知で分かってしまったかも…。

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