第97話 領主様
「マイトさん、マリリンさん下がって!」
転移したと同時に、クリムゾンキングベアの頭にアルカナジャベリンを突き立てる。
前に倒れて行くクリムゾンキングベアをマイトさんとマリリンさんが避けると同時にヴィミエナも最後の1匹を仕留めたようだ。
「マイトさんマリリンさん大丈夫ですか!!これ青と赤のポーションです!私はフィン君の様子見に行って来ますんで飲んでください!!」
「すまない!助かる!」
2人がポーションを飲んでいる間にフィン君の元へ転移する。
フィン君の側ではモモがマジックバックからポーションを出してはかけている。ヴィヴィは周りの警戒にあったているようだ。
「モモ、ヴィヴィありがとうね!」
2匹にお礼を言いながらフィン君の様子を見る。
傷口はポーションで塞がったようだが意識はない。
胸に耳を当てれば心音がする。良かった、命を落とす事は避けられたようだ。
とりあえず意識のないフィン君を町まで運べるようにタンカーみたいのを用意しようとアイテムボックスを探っていると、ヒヒーンという馬の鳴き声と共に何かが関所の壁を飛び越えて来た。
「逸れは何処だ!!……おや、終わっているようだな。全員無事か!!」
壁を飛び越えて現れたのは真っ白い8本足の馬、スレイプニルに跨り銀色の騎士の鎧を身につけ、長槍を持ったラベンダー色の髪の美しい女性だった。
「領主様!!」
「マイト無事か!現状報告を!」
「はっ!!」
領主様と呼ばれた女性にマイトさんが報告を行っている間にタンカーを作っていると、マリリンさんがこちらへ来てくれた。
「フィンは助かるか?」
「傷はポーションで全て治りましたけど、流れてしまった血液までは回復していないので安静にして様子を見る感じでしょうか。」
「そうかありがとう。サクラ達が来てくれなければ全滅していたかもしれん。」
私の両手を握りしめながらマリリンさんが頭を下げる。
「私からも礼を言おう。クリムゾンキングベア4匹相手に死人が出なかった事は奇跡だからな。」
後ろから声をかけられたので振り向くとそこにはラベンダー色のロングヘアをポニーテールにした長身の美人な女性。
「サクラ、この方はこの町の領主様、マチルダ・ベラトニクス・ダンジェット様だ。」
「お初にお目にかかります。冒険者でテイマーのサクラと申します。」
「なに、畏まらんで良いぞ。お前の話はヘルマン達から良く聞いているからな。死の森の素材を提供してくれた事にも感謝しているよ。それで得た収入は関所の警備強化に当てる事にしよう。逸れがこんなに出る事もあり得るという事が分かったからな。」
紹介された領主様は気さくで優しい感じの印象だ。町の人達が慕っているのがなんか分かる気がする。
「俺からも改めて礼を言わせてくれ、ありがとう。助かった。」
「間に合って良かったです。でもお礼はチェリちゃんに言ってあげて下さい。クリムゾンキングベアが4匹出たことを町まで伝えてくれたのはチェリちゃんです。自分が飛べる最速速度を超えて無理してでも危険を知らせてくれたんですから!」
「そうかチェリが。」
優しい顔をしたマイトさんとこれからどうするかを話そうとしたら関所の壁の向こうから声が聞こえた。
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