第96話 逸れ魔物の恐怖②
「うあ"ぁ"ー!!」
「「キャー」」
転移した関所の壁の向こう側から聞こえた叫び声。
気配探知には動かない人の気配が3つ。
「くそ!間に合え!!」
閉じられた関所の壁をホバーボードで超えながら見た景色は悲惨だった。
転移のスキルがバレないように動いたことを悔いるくらいにはとても。
右奥でピクリとも動かず血塗れで倒れているのはフィン君。
左奥ではマイトさんとマリリンさん2人がそれぞれクリムゾンキングベアを必死に止め、その横で1匹のクリムゾンキングベアの喉元にヴィミエナが牙をたてている。
そして目の前には…
尻もちをついた豪傑の戦士のリーダーでもあるデュートの右腕は真っ赤に染まり、近くには彼のものと思える武器の剣が真っ二つに折れて落ちている。
そのデュートの後ろで恐怖の余りに腰が抜け動けなくなったアーノルとユリア。
そんな豪傑の戦士の3人の前でなんとか立ち上がろうとする血塗れのナバスさん。
そのナバスさんの前にはとどめを刺そうと大きく手を振りかざしたクリムゾンキングベアの姿があった。
「させない!!」
クリムゾンキングベアの頭に女神様に貰った武器、アルカナジャベリンごと空中から突っ込む。
クリムゾンキングベアがナバスさんの方へ倒れないよう、槍を刺しながら全体重を前にかけながらも指示を出す。
「ヴィヴィはモモを乗せて全速力でフィン君のところへ!モモはポーション準備!行って!!」
『みゃ!』
『ぷりゅ!』
ズンとその巨体が倒れると同時にナバスさんに駆け寄る。
「ナバスさんしっかり!!」
ポーションをかけながら声をかける。
「サクラちゃんだぁ。」
か細い声で私の名を呼んだナバスさんの傷は、顔から胸にかけて大きく爪で裂かれており重傷だ。
「くそ!」
「耐えろマイト!!ちびと奥さん残して先に行くなんて私が許さないからね!!」
1匹を倒したヴィミエナがマリリンさんの押さえていたクリムゾンキングベアに飛びかかったのかマリリンさんがマイトさんの元へ向かっていた。
よく見れば2人も怪我をしている。本来なら立っている事さえキツイ状態のはずだ。
私はポーションを豪傑の戦士のアーノルとユリアに押し付ける。
「私はあっちの応援に行くからあんた達はナバスさんにポーションをかけて!何本使っても良いからとにかく治療を!良い?!!デュートあんたは自分で飲みなさい!」
しかしガクガクと震えたままの3人はポーションを手に取りもしない。
―パーン―
思い切りひっぱたいたデュートの頬が赤くなっているが知ったことじゃあない。そんなのナバスさんの怪我に比べたらなんてことも無い筈だ。
「しっかりしろ!!ナバスさんはあんた達を庇って怪我したんだろ!!自分の力量も分からないくせにこんな所に来るから!!
「うっうう」
泣きながらもアーノルがポーションを受け取るとナバスさんの傷口にかけ始めた。
私は倒したクリムゾンキングベアからアルカナジャベリンを抜くと、マイトさんとマリリンさんが止めているクリムゾンキングベアの頭上へ転移した。
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