第95話 逸れ魔物の恐怖①

カーンカーンカーンと町の外から大きな鐘の音の様な音が聞こえた。

方角は私達が通って来た関所の方。


「逸れだ!逸れが出たぞ!!全員建物の中に急げ!」


「門を閉めるぞ!町の中に入る者は急げ!!」


門番達が大きな声をあげると、町の人達は急いで自宅に入って行く。


門も片側が既に閉められ、森からは新人冒険者達が慌てて町へと駆け込んでいた。


逸れとは極稀に死の森から出てきてしまった逸れ魔物のこと。


もしもに備え、戦えない者達は建物内に避難しておくそうだが、基本は単体であるため関所のメンバーでなんとかなるものらしい。





そう言われて気配探知の地図をすぐに開かなかった事を後悔した。



ヘルマンさんに言われ、町のおばあちゃんの避難を手伝っていると、ヴィミエナが空を見つめた。


気になって気配探知をしてみると、そこには凄いスピードでこちらへ向かって来る魔物の気配。


でもこの気配は知っている。


関所を守る騎士、マイトさんの相棒従魔のチェリちゃんだ。


そしてそのまま気配探知の地図を関所方まで広げた瞬間、背筋が凍る。


関所の守りは通常4人。逸れ魔物が1匹なら、察知出来る気配は5つのはず。


でも気配は8つ。


逸れ魔物は1匹じゃないうえに、クリムゾンキングベアだ。


しかも関所へこちら側から向かって行っている人の気配が3つ。


気配察知を使い続けて習熟度が上がったおかげで気配は人か魔物か、会った事のある気配なら誰か、どんな魔物かまで判別は出来るようになっていた。





避難を手伝っていたおばあちゃんを近くの騎士さんに頼み、すぐさま門へ走り出す。


完全に閉められた門の側では見張り番がチェリちゃんに気付きヘルマンさんに伝えている。


「ヴィミエナ!先にマイトさん達のところへ!!」


『分かった』


ヘルマンさんところへ走る私を追い抜かしヴィミエナが門の方へと速度を上げ走って行く。


「おい!何をする気だ門はもう閉まってるぞ!!」


見張り番がヴィミエナとチェリちゃんを交互に見ながら慌てている。


『閉まっているなら飛び越えるまでだ』


ヴィミエナが閉められた門のすぐ横の塀を音もなく飛び越えるのと、もうスピードのチェリちゃんが町に飛び込んだのはほぼ同時だった。


「モモ!チェリちゃんを受け止めて!!」


スピードを出しすぎて止まれなくなったのか慌てているチェリちゃんを巨大化したモモに受け止めてもらう。


『クウェ!クウェー!クウェー!!』


激しく鳴くチェリちゃんの姿にヘルマンさんも門番達も何事かと困惑している。


「逸れ魔物はクリムゾンキングベア4匹!!ヴィミエナを先に行かせましたが私達も行きます!!ヘルマンさんはチェリちゃんにポーションを!限界スピード超えて飛んだせいで羽を痛めてます!」


チェリちゃんとポーションをヘルマンさんに預けて私も走り出す。


「クリムゾンキングベア4匹なんて無理だろ!!」

「どうする?!町の一番奥まで皆を避難させるか?!」


門番や騎士達が慌てふためく。


「おい!サクラどうする気じゃ!!」


「助けに行きます!!それとこちら側から関所へ人が3人向かっています!多分、豪快の戦士の3人です!」


「なんじゃと!!おい待てサクラ!!」


ヘルマンさんが何か叫んでいるが今はそれどころじゃない。


アイテムボックスからホバーボードを取り出すとヴィヴィとモモを抱えて塀を超える。


最大スピードで森まで入ったら関所まで転移!


どうか間に合って!!





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