第85話 閑話 見守り隊の仕事②
ー こちらは見守り隊2人側から目線のお話になります。ー
見守り隊であるオッドとヤールドの背中を嫌な汗が伝う。
目の前には会えば生きては帰れないと言われる白い死神、ケオトートティーガの姿。
ヤールドのスキル、気配探知にはなんの反応も無かったうえに、あの距離からここまでの移動速度、そして目の前にしてヒシヒシと感じる威圧感。
2人は自分達の尾行が気付かれていないなどど一瞬でも思った事を後悔した。
自分達の尾行を気付いたうえで泳がされていたのだと何故思わなかったのか。
2人は一歩も動くことすら出来なかった。
静寂に包まれた空気の中、沈黙を破ったのはケオトートティーガの方であった。
『領主の依頼で新人の見守りをしているそうだな。サクラには我らが付いている故、心配には及ばん。まだ秋口とはいえ朝晩は冷えるなか見守りしてもらうのは申し訳ないからとサクラからの差し入れだ。温かいスープが冷めないうちに食べると良い。食器は冒険者ギルドにでも預けておいてくれれば良いそうだ。』
そう言うと巨体で見えていなかった尻尾に持っていたらしいカゴを2人の前に置き、サッとその姿を消した。
何が起きているのか呆然としていた2人は我に返るとすぐさま見守り対象者のテントの方を見る。
するとそこには先程まで目の前に居たはずのケオトートティーガがテントの横で寛いでいた。
「終わったかと思ったわ…。」
「俺もだ。あれはやばいな。」
緊張がいっきに溶けて2人してその場にしゃがみ込む。
「長年冒険者として活動し、それなりのランクまでいったがこんな経験は初めてだな。」
「2度とごめんだがな。」
居る事がバレている以上この見守りに意味はないとは思うが、領主からの依頼でもある為ちゃんと最後まで行わなければならない。
差し入れと置いていかれたカゴにかけられた布を取ると白い湯気と共にミルクの優しい香りがした。
「おぉ。美味そうだな。」
「食って大丈夫なのかこれ?」
「俺達が領主の依頼で来ている事も知っていたし、俺達の会話あのケオトートティーガには聞こえてると思うぞ?」
「そうだよな…。」
「正体を知ってて差し入れしてくれたんなら大丈夫だろう。あの冒険者の評判は良いぞ?一応一通りのポーションも持って来ているしな。」
「まぁな。冷めないうちにって言われたし頂くか。ホカホカの白パンまで入ってるぜ!」
「「うめぇ。」」
見守り隊の2人は温かい差し入れを有り難く頂戴し、一晩の野営見守りへと戻った。
翌朝、朝ご飯を食べ終えテント等の片付けをした見守り対象者のサクラが、こちらに向かって手を振り頭を下げると町の入口となる門の方へと歩いて行った。
「見守りに気づかれたのは初めてだったな。」
「ケオトートティーガが居たからしょうがないのかもしれんが、それも含めて領主様に報告だな。」
町へと向かうサクラ達を見届けると見守り隊2人も帰路についたのであった。
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