第84話 閑話 見守り隊の仕事①
ー こちらは見守り隊2人側から目線のお話になります。ー
領主様よりくだされる依頼を受けて新人冒険者の野営を見守るその名も見守り隊。
冒険者をとうの昔に引退し、今は実家の仕事を手伝っているオッドとヤールドの50代後半幼馴染コンビは、今回も領主様からの依頼を受けて1人の冒険者の野営を見守る事になった。
最近、冒険者登録をしたばかりのテイマー冒険者サクラである。
ケオトートティーガという高位魔物を2匹もテイムしていると町で噂になっていた冒険者。
町から出た後、森で薪にする木材を拾い、それを大人のケオトートティーガに背負子のような物を付けて運ばせている。
食べられるキノコや野草もピンクのスライムと共にこまめに採取しながら森を移動し、野営に選んだのはなんと町の塀のすぐ側の平原だった。
「そういえば、キャンプ場で豪傑の戦士の奴らに絡まれて、静かに過ごせる様に外で寝泊まりするって言ってたんだったな。」
「設営や料理の手際は良いな。あの火をつける時に使ってたやつが何かも凄く気になるところだな。」
ケオトートティーガの嗅覚等を警戒して距離をだいぶ取っているため対象者の観察は遠見スキルを持つオッドの役割で、ヤールドは周りの警戒並びに自分達の野営の準備係である。
とはいえ見守り対象者にバレない様に火を使うことは出来ない為、最小限の防寒具と食料だけだ。
「何か使ってたのか?」
夕飯の干し肉とアルコール度数の低いワインをオッドに渡しながらヤールドが聞く。
「焚き火の火が一瞬でついた。魔法でも種火から薪に燃え移るまでは安定しないだろう?」
「へぇ。そんな物があれば確かに短時間で火が用意できるし野営には便利そうだな。」
「イルマに頼んでそれとなく探ってもらうかな。」
最小限の食事を済ませたら防寒具のマントを羽織って見守りの続きだ。
一晩寝ずに対象者の見守りを行うことが彼ら見守り隊の仕事だ。
見守り対象者は楽しそうに従魔達とじゃれ合った後、テントの中へと入って行った。
大人のケオトートティーガはテント横に用意されたタープ下に敷かれた毛布の上に寝そべると、辺り一体を見渡し異常が無い事を確認したのか顔を伏せ寝の体制に入ったようである。
ケオトートティーガにも自分達の見守りが気づかれなかったと安心したオッドだったが、見守り対象者のテントの見て慌てる事となる。
「おい!ヤールド!大人のケオトートティーガがテントから消えてる!!ほんの一瞬目を離しただけだぞ?!」
「まじか?!何処に行った?!俺の気配探知には何も引っ掛かってないぞ?」
『我なら此処にいるぞ?』
急に見守り隊2人の後ろから声が聞こえた。
慌てていた見守り隊2人を今度は恐怖が襲う。
振り返るとそこには、ほんの一瞬前まで100m程離れた場所に居たはずのケオトートティーガが立っていた。
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