第46話 プリンシビアータ領
「ほう、本当にテイム紋はあるな。輪が4本という事は4匹テイムしてる事になる。従魔の数とも合うな。ケオトートティーガは死の森にしかいない魔物だからお前…おっとサクラだったな?サクラが死の森に居たのも本当なんだろう。で、なんでノベルディアンの街で冒険者登録して貰えなかったんだ?」
関所を守る騎士の隊長であるマイト・ダナル・ダヤットさん。
肩に乗っているのは従魔のブルーアギラのチェリちゃん。
現在、関所前で検問を受けている最中。
マイトさん達が守るこの関所は死の森があるモルテボア領とプリンシビアータ領の境目にあり、怪しい者を領内へ入れないようにするのが主なお仕事なんだそう。
「確かにこんな凄い魔物テイムしてるのに冒険者登録して無いのはおかしいっすね。」
「しかもノベルディアンの奴らが馬鹿にするこの領地にわざわざ来るとはな。」
「この壁の反対側は弱い魔物ばかりだからね。」
独特な語尾の最年少騎士、フィニ君。
双斧使いで隊長に次ぐマッチョウーマン、マリリンさん。
遠見スキルで見張りに配属されたという弓使いのナバスさん。
「居る魔物が強いかどうかで行き先を決めている訳では無いので…。実はですね…。」
私は4人にこの関所に来る事になった理由を話した。
両親が亡くなった後、遺産目当てで従兄妹家に引き取られ遺産が手に入った途端に邪魔者扱いされ、見かねた祖母が引き取ってくれた事。
祖母が亡くなって遺言書に遺産を全て私にと書かれている事を知った従兄妹に掴みかかられ、あれよあれよと死の森に捨てられる事になった事。
あれよあれよの部分に慈…自愛の女神メガリスが関わっている事や、両親の保険金は保険金ってシステムが有るか分からないこの世界では遺産って言っておいてみたりと、ちょいちょい元の世界とこちらの世界に巻き込まれた後の事をごっちゃにした所はあるけど、大部分は真実だし嘘じゃない。
その後4匹を仲間にした経緯とノベルディアンの冒険者ギルドで受付嬢にされた対応の話もした。
「嘘見破りの魔道具も反応しないって事は嘘じゃないって事だな。」
「まじでそんな事あるのか?」
「魔道具が壊れてるって事は無いっす…ね。」
「ノベルディアンの奴らは人を生まれやジョブで馬鹿にする様な奴らばかりだ。あそこの領主がそうだからね。少々腕っ節が良いからって調子に乗ってるのさ。」
マリリンさんはノベルディアンの冒険者達の事がお嫌いなご様子?
何かあったのかな?
嘘見破りの魔道具に触れながら聞かれた質問に答えていく。
嘘をつくとこの魔道具が光るらしい。
因みにこの後、
『私はサクラの従魔だ。』
と、ヴィミエナが肉球で嘘見破りの魔道具に触れながら宣言した時も反応がなかったので嘘ではないと信じて貰えたみたい?
最初は怖がっていたチェリちゃんも今ではモモのポヨポヨとした動きに合わせマイトさんの肩で揺れていてかわいい。
「嘘見破りの魔道具の反応はなし。高位魔物であるケオトートティーガがこれ程大人しくしているのも何よりの証拠だろうしな。良し!問題なしで関所は通って良いぞ。」
「そこの森を抜けた所に始まりの町って呼ばれる街がある。正式な町の名前もないような田舎町だがそこの領主様は生まれやジョブで人を見ないし、ギルマスも人が出来ているからな。ノベルディアンの様な事は無いだろうよ。」
「急に行ったら町の奴らが驚くだろうからチェリに先触れを頼もう。チェリ、町にいるヘルマンさんにこの手紙を届けてくれ!」
『クウェ!』
マイトさんから手紙を受け取ったチェリちゃんが森の上を飛びながら町があるという方角へ飛んでいった。
「よぉし、じゃあ改めて。サクラ達よ、ようこそプリンシビアータ領へ!」
さあ、新しい領地に進出だ!
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