第33話 閑話 ノベルディアンの冒険者ギルド
死の森があるモルテボア領地のノベルディアン街。
その街にある冒険者ギルドには、死の森に住まう凶暴な魔物を討伐し一攫千金を狙う腕自慢の冒険者達が集まってくる。
強い魔物が多く討伐数が少ない魔物の素材を扱う事も多いため一度に動く金額も大きい。
腕自慢に高額な報酬。
ノベルディアンで冒険者になる事に憧れる冒険者も少なくはない。
しかし実態は自分の能力を自慢したい者、手にした報酬で豪遊することをステータスとしている者が多く居るのが現状である。
その原因はノベルディアン冒険者ギルドのギルドマスター、ネバル・バット・ベリーニにある。
伯爵の爵位を持ちこのモルテボア領の領主でもあるこの男が正にそれだからだ。
伯爵という立場にいながら自ら武器を持ち、死の森の魔物討伐を行う。
ギルドマスターの職に就いた今でも度々森に討伐に出ては自分はまだまだ現役でもいける程の力があると周りに周知させ、その報酬で街を派手に飾り付け、女性を侍らし酒を煽る事で裕福さもアピール。
他の領や国へ素材を売る権利も彼が1人で握っている為、取引額はぼったくりも良い所なほどである。
その為、今は他の領地や国からの流通が減って来ておりノベルディアンの街は以前ほど繁盛している訳ではない。
そんな状況のある日、冒険者ギルドの建物がズンッッと大きく縦に揺れた。
ギルドマスターのネバルが何事かと顔を上げた瞬間、今度は体中の血の気が引くような感覚。
気づけば椅子から落ちていた程だ。
「なんだこのとんでもない威圧は…」
ガクガクと震える足をなんとか動かし、ギルドマスター室から出て1階へ降りる為の階段に向かう。
ようやく1階の受付窓口が見える所まで降りていくと受付から1人の女と真っ白い巨体の魔物が姿を消した所だった。
その瞬間体中を覆っていた威圧の圧が消えた。
「おい!今の奴らは誰だ?!」
ネバルはギルドにいた者達に聞いた。
帰って来た答えは俄には信じ難い物だった。
しかしその話が本当ならばとてつもない戦力になる。ネバルはそう確信した。
「冒険者登録をしていないだと!何してやがる!あれだけの力がある奴を逃しただと!今すぐ探して連れ戻せ!連れ戻した奴には金一封だ!!」
『『おぉー!!』』
ニコラ男爵令嬢とのやり取りを報告されたネバルはギルドに居た冒険者達を煽った。
あの戦力があれば森の魔物の討伐数が確実に増えて利益が上がるだろうと踏んだのだ。
椅子から落ちる程の威圧をくらった相手にも関わらず何故連れ戻せると思ったのか…。
この脳筋で目先の事しか見ていない領主の考えによりこの後、ノベルディアンの街の惨状が国中の目に触れる事になるのはもう少し先のお話……。
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