第26話 栄養不足
鑑定して気になった事がひとつある。
「あの、白虎ままさん。ヴィヴィちゃんを鑑定して気になった事があるんだけど、現在栄養不足の傾向ありって出てるんだけど何か心当たりない?」
『栄養不足?!!』
白虎ママ驚いてる?!なぜ?!
「ヴィヴィちゃんのご飯はどんな感じ?ミルク?まだ離乳期にはなってないの?」
『ご飯はまだミルクだけだな。乳離れはもう少し先だ。ご飯だが、子を産んだのに私は乳が全く出なくてな…この子にミルクをあげれないのだ。だから他に同じ位の子を持つ者達に頼んで飲ませてもらっていた…はずだ。』
「ヴィヴィちゃんのご飯中は一緒に居なかったの?」
『ここ最近、ミルクをあげている間に自分の食事をしてくると良いと言われて…やられたな。長だけじゃない奴等全員でこの子を……。』
白虎ママさんの眉間に深いシワが刻まれていく。
お怒りはごもっともだ、いくら弱肉強食の世界といえど毛の色が理由なだけで寄ってたかって!!
なんだかこの親子が心配になってきたよ…。
「これから白虎さん達はどうするの?お乳が出ないんじゃヴィヴィちゃんのご飯も大変でしょう?かといって群れのケオトートティーガ達は信用出来る…気がしないし。」
『そうだな。我が子を殺そうとした奴等の所へ戻る気にはなれんな。だがミルクの当ても無い…。』
「ねぇ、ミルクは他の魔物のものじゃ駄目なの?」
『いや、そんな事はないが…。』
ヴィヴィちゃんに飲ませるミルクが同族のじゃなくても大丈夫なら、なんとか出来るしなんとかしてあげたい!
これはそう人助けならぬ虎助け!このモフモフは私が守る!!
「ならあなた達さえ良ければ私とモモと一緒に行かない?ミルクはなんとかするし、まずは安心して休める場所も必要でしょう?」
『ぷりゅりゅりゅ〜』
『ママと一緒は楽しい、安全?』
「そう!私はスライムの変異種であるこの子、モモのママ!この子は数週間前に生まれたばかりの赤ちゃんだから私が色々教えながら一緒に生活しているの!同じ変異種の0歳児を持つママ友達として子育て協力って事でどう?!私の目標はこの森を出て世界を旅する事なの!色々な物を見て、食べて、例え自己満足でも死ぬ前に私の事を馬鹿にした奴らより絶対に良い人生だったって胸を張れるように生きたいじゃない?!!」
『同じ変異種の0歳児を持つママとして…。胸を張れるように生きるか…』
「そう!私の居た世界ではヴィヴィって言葉には生きている、生きているものって意味があるのよ!だからヴィヴィちゃんにも元気にすくすくと生きて欲しいじゃない?!」
ママ虎さんは目を覚ましたヴィヴィちゃんをあやしながら暫く考えこんだ。そして、
『協力とは言うがこちらは余り力にならんだろう。あれだけのコカトリスを1人で倒せる程の力もあり、回復薬を作れる腕もある。我が威圧にピクリともしない精神の強さもある。そんなサクラに我が出来る事などそうないだろう。だが、サクラが良ければ共に行かせて欲しい。助けてもらった礼もしたいからな。』
「別にお礼はなくても良いんだけどね?一緒に居れたら楽しいだろうなってのが本音だし。でもじゃあ、助けたお礼はこのコカトリスの素材を貰うって事にしよう!後はこの森の事を色々教えて欲しいなぁ。私もこの森に詳しい訳じゃないからさ。お願いできるかな?!」
『わかった。宜しく頼む。…まぁ、コカトリスを倒したのはサクラなのだからそれは元々サクラの物なのだがな…。変わった人間だな。』
笑いながら言うママ虎さんの表情はとっても優しく、少し寂しそうにも見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます