第23話 助けた魔物は

シュワ〜という音をたてながら白い大きな虎の石化して灰色になっていた部分が白いフサフサの毛に戻っていく。

青と赤のポーションもかけたので傷も癒えたようである。


「良かった。石化してたところも治ったみたいだね。そうだ!一応かけるだけじゃなくて飲んでもらった方が効果が有るから良かったら赤ポーション飲んで!体力が回復するはずだよ!」


私はマジックバックから大きめのお椀を出して赤ポーションを瓶から開けて白い大きな虎のそばに出す。

自分の治った体と私を交互に見ながらペロペロとお椀に入った赤ポーションを飲み始める。これで体力も完全に回復するはずだ。


「その黒い小さい子はあなたのお子さんかな?その子にも出来れば赤ポーションを飲ませて体内からの回復もしてあげたいんだけど良いかな?」


『みゃう』


白い大きな虎は渡したお椀を鼻先で私に戻しながら優しい声で鳴いたかと思うとまだ横になったままの黒い小さい子に体を寄せて舐め始めた。


くうくうと息遣いは聞こえるがまだこの子はピクリとも動いていない。出血が思ったより多かったのだろう。

これは体内にポーションを取り入れたほうが良いはずだ。


「でもまだこの子は動けなそうに無いんだよね。お椀から飲むのは無理か…そうだ!」


アイテムボックスから砂とブルースライムのゼリー部分とキングトードの皮を出す。


作るのは瓶とそれに合わせる飲み口、その2つを液垂れしないように密閉させるパッキンの様な物も。


そうイメージして作るのは…


「クラフト!出来た哺乳瓶!」


作った哺乳瓶にクリーンの魔法をかけて赤ポーションを注いで蓋をする。


逆さまにしても瓶と蓋の隙間からポーションが溢れることは無いみたいだし上手く出来てるみたい。

私は哺乳瓶を持って2匹に近づく。白い大きな虎が黒い小さい子から頭を離してこちらを見る。


「お椀からよりこれのが飲みやすいかと思って。ちょっとごめんね。お子さんに触るよ?」


丸まったままの黒い小さい子の頭を膝に乗せる。

安心できるように顔は親であろう白い大きな虎に向けて。

そして口に哺乳瓶を咥えさせるとモゴモゴと小さく口が動き始め、そのうちごきゅごきゅと哺乳瓶から赤ポーションを飲み始めた。黒い小さい子の体が淡くひかりその光が収まると可愛らしい鳴き声をあげた。


『みぃみぃ』


鳴き声は段々としっかりとしてきている。


うん。これで大丈夫。


モモが親子であろう2匹の周りをぽよぽよと飛び跳ねている。良かった!大丈夫!と嬉しそうである。


黒い小さい子は柴犬位のサイズでまだ少しコロコロとした体格、親の白い大きな虎は体長2m位なのでこの子は生まれて数カ月位だろうか?なんにせよ無事で良かったし、このかわいいモコモコな子達を助けられたなら何よりだ。


モコモコと動くかわいらしさについ頬の筋肉が緩んでしまうが。白い大きな虎がこちらを見つめているのに気づきそちらに目線を向ける。

じっとこちらを見つめている白い大きな虎。


『人の子よ、我らを助けてくれた事礼を言う。』




待って…白い大きな虎もとい、魔物って喋れるの?!!!

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