第46話
いったい、彼女たちは何を話したのかは知らないが、どうしてこうなったのだろうという疑問が頭の中でずっとぐるぐるとしている。
「鏡花、いったい何を話したの?」
「これから先の事」
それでどうして彼女たちが揃ってニコニコと僕の事を囲っているのだろう。いつもは睨みあったりしているのに、僕の事を仲良く分け合っているのだ。まぁ、でも僕に見られていないと思っている所では睨みあってたりはしているものの前よりは抑えられている。
「ねぇ、悟。私だけほかの子たちと違って悟から直接会いに来てもらえてないんだけれどなぁー」
「それは、私も一緒だから。一人だけ抜け駆けしようとしないで。そういう約束でしょう?」
「.....あぁ、そういえばあなたもそうだった。忘れてしまっていたわ。すみません」
「…忘れてしまっていたのなら仕方ない」
お互いニコニコと見つめあって言葉だけを見れば和解しているようにも見えるが、やはり彼女たちの間には見えない火花が散っている。
「それで、悟。私たちにはもうちょっとだけ構う時間を多くしてくれてもいいと思うの」
「私もそれには同意する」
ずぃっとこちらに顔を寄せてじっと見てくる美鈴と可憐。
確かに、美嘉、桜、祥子とはそれなりに二人きりの時間をとれたけれど、二人とはその時間がなかった。
「お兄ちゃん、そんな人たちの言うこと聞かなくてもいいんだよ?お兄ちゃんが一緒にいたい人といればいいの。例えば、お兄ちゃんの事を一番思っていて、大好きで、一生養ってくれそうな可愛い声優の妹のような存在の後輩とかね?」
桜が強引に二人に割って入り、僕の事を抱きしめてくる。
流石にその行動には我慢できなかったのか、桜を強引に引き剝がして睨みつけ「抜け駆けは禁止っていう話だったよね?それにみんな平等にしてもらうって約束だったはずだよね?」と美鈴と可憐が詰問しており、僕としてはかなり冷や冷やしたが、当の桜と言えばどこ吹く風か、僕の方を見てニコニコと笑っている。
「別にぃ、私はお兄ちゃんがいたい人といればいいって言っただけですけれどぉ。そんなに自分に自信がないんですかぁ?学校では優秀で美人で横に並び立つ人はいない生徒会長さんともあろう人が。それにぃ、一匹狼とか言われてる可憐先輩も」
甘ったるい声を出して桜が煽るようにそういい、堪忍袋の緒が切れそうになっている彼女たちが何かをしでかす前に止めに入った。
「桜、そこまでにしておいて。美鈴、可憐。後で、一緒にいる時間作るからそれで我慢してくれないかな?」
「...........分かった。悟がそう言ってくれるなら我慢する」
「絶対に一緒にいる時間作ってね?約束だから」
「うん、絶対」
どうやら事なきを得たようでやっと一息つける。
約束だとか、禁止だとか美鈴と可憐は言っていたけれど本当に鏡花たちは何を話していたのだろう。
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