第45話
彼女たちに僕の事情を話してからずっとくっつかれて長い時間離れて貰えなかったが、鏡花が無理やり彼女たちを剥がすことによってやっと離れられた。
当の本人たちはというと心底不愉快だという目線で鏡花の事を見ていたが。
「悟、私はこれからこの人たちと話し合わなといけないから少しだけ部屋から出て行ってくれないかしら?」
「分かったよ。でも何かあったら直ぐに言って」
「うん、分かった」
鏡花はどうやら、彼女たちに何かを話すようだけれど一体何を言うつもりなのだろう?何事もなければいいのだが。
*********
「さて、あなたたちとこれから話し合いをするけれど、一旦、私に対して殺意を向けるのを止めてくれないかしら」
「無理。私から悟を奪っておいてよくそんなことが言える」
「お兄ちゃんを勝手に奪っておいてそうやって勝手に仕切って、お兄ちゃんの事をさもわかっているような振る舞いをされたら、幾ら優しい私でも流石にキレちゃいそう」
祥子と桜がそう言って鏡花の事をギリッとした瞳で見つめる。
「はぁ...........確かに私も悟を奪われたら頭がおかしくなってあなたたちの事を許さないだろうけれどここはどうにか落ち着いてもらえないかしら。悟とのこれからを話さなくちゃいけないから」
「悟君とのこれから?」
「そう。あなたたちに打ち明けた今でもきっと死にたいと思っている悟を今度は私たちが救う話を」
鏡花がそういうと、流石に落ち着いたのか五人は冷静に戻った。
「これからって、具体的にどうするのか決まっているの?あんた一人がまた悟を攫って何処かに監禁でもしようとするなら私は貴方の事をどこまでも追って、殺すから」
可憐がそれがあたかも普通であるかのようにそう言い放ち、鏡花の事を見つめた。
鏡花の事を殺す、殺人をなんとも思っていない瞳だった。
「そんなことはしないわ。流石に私もまだ死にたくはないもの」
「じゃあ、いったいどうするんですか?」
今度は美鈴が鏡花へと質問を投げかけた。
「それを言う前に、あなたたちに聞くことがある」
「早くいってくれないかなぁ。お兄ちゃんとの時間が奪われるのが嫌なんだけれど」
さして間を置いてもいないはずであるのに、一秒すら悟との時間が惜しいのか桜がそんなことを言った。
「はぁ...........まぁ仕方ないわね。それじゃあ、言うわ。貴方達は、これからも悟から手を引くつもりもないし、一生離れないと誓える?それがあなたたちが例え苦痛を飲まなきゃいけないとしても」
「悟から離れるなんて私は考えられないし、どんな苦痛も飲む覚悟はとっくの昔にできているわ。それこそ、悟が死んだって聞いたときには」
「あのさ、そんな当たり前のことを聞かないでくれる?」
「お兄ちゃんから離れるわけないじゃん」
「悟君から離れるなんて考えるだけでも嫌」
「悟のこと愛してるから、どんな苦痛すらも耐えられる」
「当たり前」
そう言い放った五人に鏡花は、覚悟を決めた顔でこういった。
「そう。じゃあ、例えここにいる六人でこれから先ずっと一緒に過ごすことになっても大丈夫よね。それが、悟を死なせないためなのだから」
鏡花の言葉にほかの五人はその言葉を唖然とした顔を浮かべてしまった。
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