第44話
雑ではあるが、大体の過去を話し終えた僕は彼女達へと視線を向ける。
「そういうわけで、その後色々あって母さんは自殺して親戚をたらい回しにされて叔母さんの家においてもらえることになったんだ。それで..........僕は、自分に五人の人を助けることによって自分を救おうとしたんだ。そして僕は.............」
そこで言い淀んでしまう。その先を言うのが怖くなってしまった。彼女達からすれば、僕が死にたいなんて思ってることを聞きたくなんてないだろうし、僕も話したくはない。
だが、これ以上は彼女たちに隠し事をすれば更なる亀裂が走るのは目に見えている。
「僕は.............」
だが、言葉にするのが怖かった。
一歩を踏み出せない。言葉を発しようとするたびに何かがのどに詰まって話せなくなる。
その時、僕の手にぴたりと鏡花が手を添えてじぃっと僕の目を見てきた。彼女の目からは慈愛の感情が漏れ出ていた。大丈夫だからとこちらをじっと見つめてくる。
大丈夫、次こそは大丈夫だから。
「僕は........死にたいって思っていた。五人を助けてそれで贖罪を終わらせてこの世を去りたいってずっと思っていた。こんな僕がこの世にいてはいけないって」
思わず俯いてしまう。みんなの顔を見るのが怖かった。
どんな顔をしているのか想像するのも嫌だった。だけれど、向き合わないといけない。僕が顔を上げてみると、彼女たちは.......
僕のことを抱きしめた。全員が僕に寄り添ってぎゅっと強く抱きしめてくる。
「悟。もしね、悟が死ぬのなら私も死ぬって言ってたけれど気が変わったの」
「.......?」
「悟には何が何でも生きてもらおうって思った。絶対に私が死ぬまで死なせない。助けるだけ助けて見捨てるような悟を私は許さないから」
美鈴の言葉だけを見れば少しだけ言葉が強いけれど、その声音はずっと優しくて脳を溶かされてしまう。
「悟君は、本当に身勝手でどうしようもないひとだから、これから先もずっと私と死を別つまでまでずっと一緒。贖罪は終わらないよ。ずっと、私は離してあげないから」
美嘉の声音はドロドロとしていて抜け出せない沼のようだ。
「悟は馬鹿で勝手で馬鹿だけれど、私は大好き。きっとこれから先もこれ以上の人は現れないから死なせてあげない。私が死ぬまで死ぬことなんて許さないからね」
彼女の声音はいつもの凛とした声だが、やはり彼女の声も優しくてドロドロで身を溶かすような声。
「お兄ちゃんは、私よりもずっとお馬鹿さんで頑張り屋さんだからこれからは見守られるんじゃなくて私がずっと見守り続けてあげるね」
声優である彼女の声は心の中へと侵食してきて拒むことなんてできなかった。
「悟、大好き。ずっと一緒。何度でも見つけ出してあげる」
祥子は淡々とそう言った。彼女なら僕がどこへ行っても見つけてしまいそうだと思えてしまう。
あぁ...........僕は、これから先死ぬことなんてできないのかもしれない。
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