第39話

  心の整理ができていない。


 あれから、僕との別れを惜しむ可憐と美鈴に涙を流されたりもしたが、鏡花との約束があるため電車に飛び乗った。


 時間を見るともう夜中とも言っていい時間であり、鏡花からのメッセージは僕が美鈴と可憐と話している間に増え続け、その数は百件を超えていた。そのメッセージを返しつつ、僕は未だに彼女たちに自分の過去、そして自分が死んでしまいたいという思いを抱えていることを話すかどうか決めかねていた。


 彼女たちがどういった反応をするのか、全くと言っていい程予想がつかなかった。唯一僕の過去、そして僕が死んでしまいたいという思いを抱えていることを知っているを鏡花は、僕の事を監禁していた。


 祥子が僕のことを探し出さなければ僕は一生あの場所にいることになっただろう。


 なら、彼女たちはどう反応するだろう?


 ...........考えてはみたものの、全くと言っていい程想像がつかなかった。彼女たちの精神は今、かなり不安定な状態にあるため何をするかが読めない。


 電車に揺られながら、ずっと考えてはいたが全く思いつかないまま鏡花の元へ戻ってきてしまった。


「悟、おかえり。随分、遅かったね」

「ごめん、鏡花。すこし想定外なことがあったから」

「想定外なこと?」

「うん。今日会う予定がなかった子に出会ってしまって、それで...........」


 僕の事。とりわけ過去などを知りたがっていること、そして週末彼女たちに僕の過去を話すことを鏡花へと伝えると彼女は何とも言えない顔をした。


「悟は、話したくはないって思ってるんでしょ?」

「うん。まぁ、聞いてて楽しい話じゃないからね。それに僕の過去を聞いて彼女たちの精神がさらに不安定になってほしくないから」

「.........悟の気持ちも分かる。でも、私はその女達の気持ちも悔しいけれど分かっちゃうの。同じ悟が好きな女として」


 彼女はそう言って俺の手を優しく握った。


「私としては.....悟に外に出ずにずっと私と二人で寿命を迎えて死ぬまで一緒に行きたいと思っていたけれど、人生そんなにうまくいかないものね。あの、祥子とかいう子に見つかった時点で私はもう悟の過去の女達とこうなるんじゃないかということはある程度想像はしていたから」

「…迷惑かけて本当にごめん」

「いいの。いづれはきっとこうなってたから。それが早まっただけ」


 彼女は達観したような表情でそう言った。


「…ねぇ、悟。私も一緒について行っていい?」

「いいよ。鏡花がいてくれた方がいいような気がするから」

「ありがとう」


 .....あとは、その日までに僕の心の整理をするだけ。

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