第12話
スカーレットの攻撃でピエロは、
半分のダメージを失っていた。
フィンレーは、
オピンニクスの背中に乗り、
迷路のゴールになるであろうピエロの
立っているステージに移動しようとしたが、
透明な見えない壁があるようで
先に進めなかった。
「ちくしょー。
前に進むには、正規の道を通らないと
いけないってことか…。
悪い、オピンニクス!
下に降りてもらっていい?」
「お前の指図は受けない。」
そういうと、なぜかご機嫌ななめの
オピンニクスは、
風魔法の『切り裂き』を唱えた。
首を振りかざして、ピエロに多少の傷を
負わせることができたが、まだまだのようだ。
技を使えて、満足したのが、
元の場所に戻った。
「ちくしょぉ。」
悔しがる言葉も
マイナス思考っていうことなのか
どんどん壁が迫ってくる。
一瞬でオピンニクスは、
剣の宝石の中に
吸い込まれていく。
「うわ、ずるいな。
ピンチになれば、
隠れられるって。」
さらに狭くなり、
体に硬い壁が密集してきた。
その頃、スカーレットは、
何も言うことはなく、
ハイヒールの靴を鳴らして、
ピエロの立っている
場所に進もうとしたが、
魔法を使ったらしく、
目の前のまっすぐの通路が
長い長い
数百段の階段に入れ替わった。
「うわぁ…長い…。」
到達点を見つめたが、遠かった。
気持ちを切り替えて、気合を入れて、
階段をのぼり続けた。
「俺はできる。
なんでもできるんだわ。」
その言葉を発した瞬間、ゆるくなってきた。
「そろそろ、決着つけますか!」
「本当にしつこいわね。
私はネチネチしてる男は
嫌いなのよ!!」
ピエロはパチンと指を鳴らした。
スカーレットがのぼり続けていた
階段が消えて、真っ逆さまに体が落ちる。
フィンレーは、ピエロに
直接剣で切りかかりに行こうとしたが、
見えない透明な壁がバリアのようになっていて
先に進めない。
「なに?!
あ、スカーレットが落ちてるじゃねぇか。
今助けるぞ!!!」
剣を振りかざして、オピンニクスを
呼んで、助けに行かせた。
「高所恐怖症だって
言ってんでしょうが~~~~!!!」
大粒の涙を流しながら、
落ちていくスカーレットの
真下にオピンニクスが飛んで受け止めた。
「助かったぁ!!!マジ感謝。
マジ神。死んでも離さない!!」
スカーレットはオピンニクスに
しがみついていた。
(何、やっても歯が立たねぇなぁ。
どうしたら…。
あ、あれをすれば。)
フィンレーは、地面に降りった
オピンニクスに近寄って、
スカーレットに声を変えた。
「スカーレット!!
召喚獣呼んで。
あのうさぎ。」
「ほぇ?
あー、時計のうさぎ?
技使えってことね。」
オピンニクスから降りたスカーレットは、
剣を振り上げて、召喚獣を呼んだ。
モノクルをつけた白いうさぎが、
小刻みにジャンプしてこちらの指示を
待っている。
「えっと、時空魔法だから…。」
『フェルマーレ!』
スカーレットは、うさぎのタイムに
指示を出した。
時間を一時的に止めることができる。
その間、相手の技は
無効化することができる。
スカーレットとフィンレー以外は
空間が止まっている。
今のうちにとフィンレーは、
急いで、ピエロに目掛けて
剣を振りかざすと、
風船が割れるかように
一瞬にして消えていく。
ピエロが消えた瞬間に
すべての異空間が消えて
元の世界に連れ戻された。
その場所は噴水がちょろちょろと
流れるお城の中だった。
大きな柱時計のカチカチする音が
鳴り響く。
「ソフィアは…どこだ。」
照明が無いお城の中は、
窓からのぞく
光輝く満月の明かりを
頼りにして、足を進めた。
ドラキュラが出そうなお化け屋敷で、
恐る恐るフィンレーとスカーレットは
王座の間に向かった。
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