朱月姫奇譚

猫谷あず季

 少女は、祖国の眩しい陽光が全く届かない薄暗い夜の国で、小さな部屋に閉じ込められ、数ヶ月間を過ごした。


 戦火は激しさを増すばかりで、収束は見えなかった。外で何が起きているのかほとんど知らされないまま、たった一人の侍女と二人、色のない日々を過ごした。


 あの時小さな少女だった彼女は覚えていない。その寂しい部屋に、一日も欠かすことなく毎晩やってきて、話し相手になってくれた美しい少年のことを。

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