第2話 元魔王、身体を魔改造する

 ———我が転生をした次の日。


 我は早速部屋に籠る準備をしていた。

 準備と言えど、この部屋の魔力を増幅させる魔導具———屈辱ではあるが、両親にねだって買ってもらった———を置き、全部の窓や扉を閉めるだけである。


 我が準備を終えると、我のことを頭のおかしくなった狂人を見る様な目で見てくるレティアが言う。


「…………本当に大丈夫なのですか? あれだけ自分で動くのが億劫だとかほざいていたというのに……」

「レティア……お主は後で本気で覚悟しておくのだ。絶対にその不遜な態度を矯正させてやるのでな」


 我がそう告げるも、大して期待していない風に『はいはい、期待していますよ〜』と軽く流されてしまった。

 人に舐められるのが大嫌いな我からすれば怒り心頭ではあるが……アインの今までの行動を鑑みれば期待など、我でもしない。


 因みに現在12歳のレインだが、レインが気に入らなかったメイドや執事を姑息な手で嵌めて既に何人も解雇や領から追放している。

 更には偶に街に出ては無銭飲食や暴行など、様々な悪事に手を染めている様だ。


 更に悪役にありがちな、身体も醜く膨れ上がっていた。

 こんな身体では動かすのが億劫になるのも頷ける。


 正に噛ませ系悪役に相応しい見事な屑さ。

 恐怖の根源とされた我でさえ、12歳程度の時は純粋であったと言うのに……随分と荒れていた様であるな。


「だが———我が転生したからには、そんな品性の欠片もない低俗な行いなど言語道断であり、今後2度とやらぬ」

「また転生とかおかしなことを……もういいです。私は疲れたので閉めますね」

「1週間だ。1週間は誰も近付けるでないぞ。我が両親であっても———だ」


 我が最後に注意すると、レティアはウンザリした様に肩を落として頷いた。


「分かっていますよ……それでは……」


 少し鈍い音を響かせて閉まる扉。

 それと同時に部屋が一気に静寂に包まれ、修練の最適な場所へと変化した。


「よし……それでは始めるとするか……」


 我は両親に貰った魔導具を発動させ、魔導具内に溜め込まれている魔力を部屋に充満させる。

 魔力が溜まれば溜まるほど、その分魔力に鈍感な無能でも感じ取れる様になるのだ。


 この身体は我の魂が無ければ一生辺りの魔力を感じることはできなかったであろうな。

 それほどこの身体が無能だということに変わりないし、異論もないのだが。


「さて……すうぅぅぅぅぅ———ッ……!」


 我は地面に胡座をかいて座ると、大きく深呼吸して、肺に魔力を流し込む。

 それと同時に、その魔力を魔力器官では無く、我の心臓に無理矢理直接流し、我の心臓を囲む様に、腹辺りにある魔力器官の代わりとなるサークル状の魔力を溜める器官を新たに作り出して行く。


「ぐ……しかし……まだ、これも序の口……こんなもの……!」


 我は魔力をサークル状に変化させると、定着させるために、自身の魔力器官にある自身の魔力と少しずつ融合させて完全に馴染ませてやる。

 この時に信じられぬほどの激痛を伴う。


 しかし、こんな所で気絶すれば、心臓周りの魔力が暴走して死んでしまうので、絶対に気絶しない様にしなければなるまい。


 我は唇を血が出るほどに噛み締め、必死に体内で暴れる魔力に耐える。

 循環する血が勢いが激しさを増し、全身が燃える様に熱を持つ。


 しかしそれも長くは続かず、新たな魔力器官が完成すると、徐々に熱も激痛も軽くなっていった。


「ふぅ……やはり痛みが軽減できぬか……もっと改良が必要であるな。さて、次に移るとするか」


 今度は、無理に繋げた自分の全身を巡る幾つもの魔力伝達管を、正常な位置へと戻す操作へと入っていく。

 これをしなければ体内で魔力が爆発したり、魔力伝導率が圧倒的に悪くなったりと、デメリットが大量に存在するのだ。


 しかしこれは先程に比べると痛みはそれ程ではない。

 

 ただ———物凄い集中力と膨大な時間を要するだけだ。


 1週間誰にも近寄らせないのも主にこれが理由である。

 体内を全て把握しなければならず、更に戻す途中で邪魔が入れば俺の体は爆散してしまうだろう。

 流石の我でも今の力では、爆散を止める算段は持ち合わせていない。


「……それだけは何としても避けねばならぬな。まだ死ぬには早い」


 我は深く意識を体内に集中させ、微量の魔力を魔力器官に流し、ゆっくりと捩れに捩れた魔力伝達管を戻しに始めた。


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