第8話 番外編

~磯谷視点~


ああ~、一美ちゃんが行ってしまった。

今の男は、どう見たってお兄さんだろう。佐藤課長とよく似ていたし。

そうすると・・・娘か?

はははっ、そうか娘か! 

何故もっと早く気がつかなかったのだろう。

そして、俺はなんてヘタレなんだろう。

あんな可愛い子が課長な訳無いだろ!


「 はぁ~ 」


結局何も言えなかったな・・・。

自分で言うのもなんだが、イケメンで結構モテるから、社内恋愛なんて全く考えていなかった。

田中係長が、松田さんや塔子ちゃんに色目を使っているのを馬鹿にしていた。


「 はぁ~ 」


ため息しか出ない。

実は、一目惚れだったんだよな~。

今朝、彼女がフロアに入って来た時から目で追ってた。

だから、課長席に座った時に一番に声をかけた。


俺の名前…、いや皆の名前を知っていて驚いた。

多分、必死になって覚えたのだろうね。

性別・年齢・特徴・その他色々と、それで“若者でイケメン”と言えば、俺しか該当しないと咄嗟に判断したのだろう。

それに、親子なら口調や態度が似ているのも説明が付く。

課長は、何かとんでもない状態で出勤できない・・・とか?


くそ!

後悔しかない。

本当は、昼休みも誘いたかった。

プレゼンの時のお礼も言いたかった。

悲しそうにしていた時は声をかけてあげたかった。

今だって、誘いたかった。


明日、会えたら…、いや明日一美ちゃんが来なくても、こっちから会いに行こう。

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