氷砂糖の愛

鈴ノ木 鈴ノ子

こうりざとうのあい


 朝食を作りながらふと壁に掛かったカレンダーを見た。

 どこにでもありそうな1か月纏めのカレンダー、その8月27日(金曜日)のマスには教師が採点でよく使うサインペンでレ点が記されていた。きっと仕事から帰って忘れないように慌てて✓を打ったのだろう、もちろん、それは僕のためだ。

 高校教師の妻は朝早く帰りも遅い、残業はあってないようなモノで労働に見合うだけの対価が支払われているとは到底思えないほどの酷さだ。


「おはよう」


「おはよ、もうすぐご飯できるよ」


「うん…、顔洗ってくる」


 ぼさぼさのストレートヘアに少し眠そうに目をこすりながら寝室から現れた妻が、そう言って洗面所へとふらふらとした足取りで向かっていく。僕はお膳を用意して、ご飯を盛った茶碗やみそ汁、鮭の塩焼きとサラダを盛りつけて並べ、最後にお揃いの箸置きにお揃いの箸を並べるとダイニングテーブルへとそれを運んで相対するように置いた。

 

 何気のない、至っていつも通りの朝にホッと一息をついて椅子に先に座り妻を待つ。


 朝のニュースが流れているラジオから「二人の出会いはなんですか?」の話題で多くの葉書が紹介されているのを聞きながら、天井の照明の白いプラスチックカバーを見つめて僕達の出会いを思い浮かべてみた。


 僕が今から5年前、高校2年生の7月、終業式間近ことだった。


華里尾カリオくん、ちょっといいかな?」


 担任の友川夏子がバイトへと向かおうとしていた僕を下駄箱の手前で呼び止めた。

 なるべく捕まらないようにと教室から煙のように姿を消して、逃げるように学校を後にしている僕を待ち構えるために、終礼後にすぐにここにいたのだろう。


「なんですか?友川先生?僕、バイトなんですけど…」


「そ、そうなのね、じゃぁ手短に伝えます。夏休みに補習があるのは知ってるわよね」


「もちろん知ってます、でも、それがなんですか?」


「必ず出席してね、そうしないと華里尾カリオくん、進級が難しくなってしまうから」


「あ、はいはい。分かりました、じゃぁ、行きますから」


 そう言って僕は話半分に聞き流すようにしてコンビニのアルバイトへと向かった。先生はもう少し何か言いたそうだったけれど、構っている暇はない。バイトの方が大切だし、それに高校なんてものは辞めればいい、どうせ働けばいいと安易な考えがこの時はあった。

 

 僕は父親が日本人で母親はリドルキア人の混血児だ。

 

 小さい頃に日本へと連れてこられて以来、ずっと日本で暮らしている。父と母はリドルキアが隣国の侵攻された折に戦火に巻き込まれ幼い僕を残してあっけなく死んでしまった。がれきの中を泣きながら彷徨っている僕を現地のNGOが助けてくれて、背負っていたリュックサックに入っていた父のパスポートから退避間際の日本大使館に送り届けらた。職員に手を引かれて日本に入国した僕は祖父母の住んでいる豊橋という街にで生活をすることになった訳だ。

 初めての土地、初めての祖父母、初めての日本語、何もかもが初めてだらけで、リドルキア語というロシア語交じりの言葉の壁もあり、周囲とは馴染むことは中々できなかった。結局、日本語がうまく習得できずに小学校の後半からは名古屋のインターナショナルスクール通うこととなった。


「さぁ、気を付けてな、また、帰りに待ってるぞ」


「ウン」


 片言の日本語で返事をしながらこの日もいつも通りに通学したが、祖父は帰り道に事故に巻き込まれてこの世を去り、不幸が続くように葬儀が終わって穏やかになった直後、祖母も心筋梗塞で祖父を追いかけるように逝ってしまった。

 

 天涯孤独、この四文字が日本語で始めて覚えた熟語となった。


 父の戦災遺族年金(外国で戦火に巻き込まれて死亡した場合に遺族に支払われる年金のこと)と祖父母の遺産で暮らしていくことができたことは救いだったけれど、友人もなく、ただただ、通学をする日々。やがて、インターナショナルスクールと提携のあった豊橋北高等学校へ進学した僕は、ふと見つけたコンビニのアルバイトに応募して働きだしてみることにした。

 

 そうすると友人ができた。


 国籍豊かな職場で英語も通じる、無理に日本語を使う必要もない、接客は接客マニュアル通りの対応なら外国人だからと日本人は納得するし、それに英語で馬鹿にしてくる奴にはリドルキア語で捲し立ててやると黙ってしまう、まったく、日本語ができるからって外国人をこの国の連中は馬鹿にしすぎだと思う、国際共通語の英語で話しかけられると、直ぐにだんまりか無視を決めこむくせにだ。少し話せるだけの調子に乗った奴を煽って馬鹿にするのは最高だった。


 今日もまたバイトに入りながら突っかかってくる馬鹿な客を煽り立てる。


「カリオ、今のはサイコーだった!」


「だろ、酔いが吹っ飛んだ上の赤顔だったぜ!」


 同じ仕事に入っているフィリピン人のマイケルが顔を真っ赤にして出ていった客を笑った。日本語で馬鹿にしたように責め立てるそいつに対して、英語で責め立ててやると怯えたように顔を真っ赤にして出て行ったのだった。


「全く、品がないことしてるのね」


「あ?…、ああ、いらっしゃいませ」


 そこに立っていたのは下駄箱で僕を呼び止めた友川先生だった。

 学校での落ち着いた姿ではなくて、薄緑色のワンピースに黒スキニーズボンを履いて少し踵の高いサンダルを履いていた。


「お前の女なの?ちょっと歳行き過ぎじゃ…」


「邪魔よ、彼と話をしてるんだから黙ってて!」


 マイケルが英語で揶揄うがそれをぴしゃりと流暢な発音の英語が遮った。


「いい遊びとは言えないけれど、思うところも分かるわ。でも、ちょっとお子様のお遊びね」


「子供の遊びだって?」


「ええ、そう思えるもの、粋がった餓鬼の遊び、いいわ、私がしっかりと教えてあげるから」


 買い物かごを不機嫌を表すかのようにカウンターに置いて、会計を済ませた先生はショッピングバッグに乱雑に詰め込み、そのまま外へと出ていった。


「何怒ってんだ、あのおばさん」


「ウチの先生だよ」


「ああ、そうか、まぁ、頑張れ、先に休憩に入るわ」


 マイケルは僕の肩を軽く叩いて休憩のためバックヤードへと入って行く。

 普通、聞いていたら腹が立つほどの先生の罵倒するような言葉に、この時は何故だろうか、酷く恥ずかしい思いがして文句を言ってやることも何もすることができなかった。

 

 やがて夏休みに入り補習に入ると、補習後に近くの市立図書館へと腕を引っ張られて先生に連れていかれた。ついて行ったのはそうしないと進級させることは難しいと言われてしまったためだ。退学してやるとも考えたが、ふと、あのなにも言い返すことができなかった時のことが思い浮かんで思い止まらせた。


「日本語の成り立ちから教えるわ」


 古い図書館の2階、研究室と名前がついた個室には資料が用意されていて準備が整っていた。絵本から小難しい本に至るまでが用意されていて見るだけで辟易したが、それも最初のうちだけだった。その授業はもはやナビゲートと言っても過言ではない、今まで苦手だった日本語が驚くほど自然体で頭の中へと流れ込んでくるのだ。1回、2回と…それは夏休みを使って土日を除いて夏休み中続いた。もちろん、日本語だけでなくリドルキア国の成り立ちから言語の成り立ちまでも説明してくれる。

 それは驚くほどに博識で友川先生は立派な先生なんだなと感心させられてしまうほどにだ。


「たまには自習くらいしてみるか…」


 夏休みから2週間ほど過ぎた土曜日の昼間、特段の予定もなかった僕は自転車に乗って図書館へとやってきていた。教えてもらった内容の復習は自宅でしていて授業自体に問題はなかったけれど、どことなくそうしなければという気持ちが芽生えていた。

 先生の補習と同じように2階に上がり貸出カウンターで研究室を借りようとして、ふと閲覧席の方を見ると見慣れた背中があった。その両側には数冊の本が積まれていて時よりそれを手に取り調べてはノートへと書き込んでいる。どれくらい見つめていたのだろうか、職員の司書さんに声を掛けられるまで食い入るように見つめてしまっていた。

 ノートへ書き綴るペンを握る綺麗な手、輝くような表情と真剣な眼差し、長い髪が時より垂れてはそれを耳へかけ直して、そして首を廻して疲れをとる仕草、そして積まれた本のどれもこれもが補習の続きで見慣れたものばかりだ。今まで出会った教師とは違う、たった一人の教え子のためにそこまで努力できる先生の背中に思わず心が揺さぶられた。それと同時にあの、しっかりと教えてあげるから、という言葉の意味の深さを知った瞬間だった。


 声を掛けるなんて野暮なことはせずに、自習室を借りて僕も自習を始めて勉強にもアルバイトにも今まで以上に取り組んでいく、そんな姿に変貌した僕を見たマイケルが笑いながら「falling in love」とぼそりと呟いて、顔を真っ赤にして文句を言った僕を更に笑った。


「おいおい認めろよ。恋は素直が一番なんだぜ、年齢なんて関係ない、心に素直であれ、それが神様の一番のアドバイスさ」


 妙に詩人じみたことを言うなとこの時は思ったけれど、自宅にかえってから深く考えてみると、勉強で覚えることも大切だったが、先生と2人で過ごす時間がどれほど愛おしくて切ない時間となっていたのだった。夏休みが終わりを迎えてもなお、2人での補習の時間は続いた。その頃には各教科の分からないところなども教えてくれて、中の下くらいの成績であったものは進級して3年の夏には全国模試の上位に名を連ねるまでとなった。


「よく頑張ったわね、この調子なら推薦もいいところが来るわね」


 模試の結果を見ながら自分のことのように屈託なく笑って喜んでくれる先生の横顔に見惚れてしまっていた。その横顔は今まで見慣れた先生の横顔から、さらに一段と、そして多少誇称しすぎかもしれないが女神のように美しく見えた。思わず抱きしめたくなるほどに愛おしく思えて、危うく手が出そうになりながらそれをぐっと堪えた。


「ありがとう、先生のお蔭だよ」


「そんなことないわよ、華里尾カリオくんの成果よ、これは誇っていいことなんだからね」


 さらに嬉しそうに笑う眩しい笑顔を僕は直視することができずに視線をずらして笑っていた。一瞬、これで補習は終了かもしれないと焦り背中に汗が流れたが、先生はそんなことは一言も言わずに補習を続けてくれた。


 でも、そんな時間は唐突に終わりを迎えた。

 保護者が怒鳴りこんできたとか、2人でいることが問題になったとか、そんな話じゃない。先生が車に跳ねられて意識不明の重体に陥ったのだ。医療機器に囲まれてベッドで眠る先生を遠巻きに見ながらお見舞いに何度も通い、1人となっても勉強のために図書館にも通う日々、だけどそこに先生の声は無い。1人黙々とペンを走らせて参考書を読み、そしてため息をつく、そんな日常を過ごした。1カ月を過ぎても先生の意識は戻らず、お見舞いに行く度、僕の心はどんどんと沈んでいく。


「おい、華里尾カリオ、ちょっとバックヤードに来いよ」


 アルバイト中、マイケルにそう手招きされて、誰も客がいない店内を確認してからバックヤードに入ると、途端にマイケルの固く締まった拳が頬を激しく撃ちつけ、痛みと驚きで地面に崩れ落ちる僕にマイケルは怒りに震える声で言った。


「見ていて情けないぜ。一番してはいけない事をお前はしている。何かわかるか?相手が戦っている時に、自分が戦いを放棄することだ、そんな腰抜けになるなよ。お前は違うだろ、できる奴なんだからな」


 そう言って来店のチャイムがなり足早にマイケルがバックヤードを出ていく。その言われた言葉の意味を理解して恥じ入る様に咽び泣いた。同時にどれほど先生を愛しているのかもまた思い知らされる。数分を過ごして顔を拭き、身なりを整えると近くの鏡で顔を確認する、少し頬と瞼の腫れた顔を両手でしっかりと叩いた、痛みが走ったが唇を噛み締めて耐える。


「ありがとう、マイケル」


「お、マシな顔になったじゃないか、いいね。いい男の顔だぜ」


 バックヤードから戻った僕を見たマイケルがそう言って歯を見せて笑っていた。


 補習の時のよう真剣に、いや、それ以上に先生が見せてくれた背中のように真摯に向き合いながら、勉強も、仕事も、お見舞いもしていく。機械が外れても意識は戻らず、眠ったままの先生、痩せていくあの美しい手を握り摩りながら2人の時を過ごしていく。学校での1日を話しながらその手を何度も摩る姿は病院で有名になったほどで、それを聞いた先生の両親からは受験もあるのだから気にしなくてもよいと言われたけれど、僕はそれを頑なに固辞した。

 季節はめぐり落葉からクリスマスを過ぎ、そして正月を迎えた。その頃には先生の両親も病院も理解を示してくれていて大晦日から僕は先生の個室に泊まり込み、テレビで公共放送の年越し番組を着けたまま、ベッド脇に病院の好意により用意された机でテレビから聞こえてくる除夜の鐘を聞きながら勉強を続けていた。


「先生、もうすぐ新しい年だよ」


 目を閉じたままで眠った先生に声を掛ける。そして、今まで触れたことのなかったその頬に思わず手を伸ばしてそっと触れてみた。少し乾いた肌触りと暖かな温もりがあった。数回ほど撫でるとそっと手を握ってカウントダウンの始まったテレビを見つめる。10円玉の後ろに彫り込まれてもいる平等院鳳凰堂が映されていて、阿弥陀如来坐像がアップで映されると、心の中で先生の目が覚めることを心を込めて優しく手を握って念じた。


『新年あけましておめでとうございます』


 テレビからアナウンサーの嬉しそうな声が聞こえてくる。

 

 そんな時だった。


 握っていた手が弱弱しい力だったけれどそっと握られる、それは勘違いかと思うほど弱弱しい力だったけれど、視線を落とすと握った僕の手を細く優しい指が包んでいた。


華里尾カリオ…」


「先生、明けましておめでとう」


 動かしていないためだろう固まった唇が微かに動いて僕の名前を呼ぶ、突然のことに頭が真っ白になってしまった僕は新年のあいさつを口走って、それに先生は微笑んで頷いてくれた。そう言って乾燥した髪を撫でると、掠れてはいたけれど確かな声が返ってきた。


「明けましておめでとう」

 

 2人の時間が新しい年と共に始まった瞬間となった。互いに視線を合わせたまま、しばらく見つめ合い、検温に来た看護師さんがその姿を見て慌てて駆け寄ってくるまで二人だけの新年をそっと静かに過ごした。

 

 それからは光陰矢の如しだった。

 

 受験を終え合格を勝ち取り、先生のリハビリに寄り添い、そしてアルバイトをして過ごす日々だ。目を覚ましたことを知ったマイケルは店内で絶叫をして喜んでくれたことは言うまでもない。卒業式には車椅子でだけれど回復した先生も参加してくれて僕は卒業証書をしっかりと受け取とり2人だけで校門前で写真を撮った。


「ありがとう、先生のお蔭で色々と成長できました」


華里尾カリオくんが頑張ったんだよ、私のお蔭じゃないわ」


 

 写真を撮り終えて近くにある病院までの道すがらを車椅子を押しながら歩いていく。

 お礼を言った僕に先生は謙遜しながらそんなことを答えてくれる。


「それとお願いがあるんですけど」


「なに?今日ならご褒美で何でも聞いちゃうよ?」


 嬉しそうな笑顔を向けてくる先生を真剣な眼差しで見つめる。やがて、何が言いたいのか理解できたのだろう、顔を真っ赤にして先生が目をそらした。


「それは…今でないとダメかな…」


「今でなくてもいい、気持ちが決まったら教えて」


「ごめんね、ありがとう…」


 前を向いた先生に断られなかったことだけでも安堵しながら、互いに無言のままで車椅子を押す音だけが響いていく。病院の部屋の前まで押していく、部屋の前で待っていた看護師さんは何かを忘れたと言いながら僕へウインクをしてその場から離れていく、そのまま部屋の中まで入り先生を抱き上げてベッドへと寝かせようとして、互いに視線が合うと見つめ合ったままで顔が真っ赤になっていくのが分かった。抱き上げた手に力が入ってゆっくりと下ろして寝かせると、先生の手が僕の胸元に伸びてきた。


「答えないって意味じゃないから、これで一先ずは許して…」


 そう言って詰襟制服の第二ボタンが獲られていく。

 そのまま掛け布団に潜り込むように隠れてしまった先生がどうしようもなく可愛くて、僕は少しだけ出た頭を優しく撫でていた。


 照明を眺めていた視界に妻の顔が入り込んできた。あの頃と変わらない素敵な微笑みを湛えている。


「今日もありがとう、どう、就活はうまくいきそう?」


「うん、何とかなりそうだよ」

 

「教職は大変よ?」


「知ってる、実際に見てるし」


「まぁ、覚悟があることはいいんじゃないかしら?」


「でも、立派な先生になれるかは微妙かな、凄い先生が間近にいるし」


「あら、それは大丈夫よ、私の教え子は立派だもん、あ、それと病院の日、忘れないでね」


「27日でしょ?妊婦検診の日だもんね。さ、食べて市役所に行く用意しないと」


「うん、ただきます」


「いただきます」


 互いに微笑み合ってから手を合わせて朝ごはんに手をつけていく。

 出会いによって人生が変わっていくのだと僕は痛感している。それが、良い出会いにしろ、悪い出会いにしろ、だ。


「手から零れ落ちる砂のように嘆くことは簡単さ、だけどな、零れ落ちる中から金を見つけることだってできるんだぜ。これからもがんばれよ、兄弟」


 マイケルはそう言ってバイトを辞めて行ったが、その後はミュージシャンとして活躍している。アメリカのヒットチャートに名を連ねて今ではかなりの有名人だが、本人はそんなことどこ吹く風で、お忍びでもなく、堂々と我が家に遊びにと来たりするから困りものだ。


 年上の妻の年齢も考えて、また、あのような思いは2度としたくないから結婚を急いだ。

 驚いたことに妻の説得は必要がなく、正式に付き合って数か月後には婚姻届けにサインをして今に至っている。


「先生、あのさ…あ…」


 思わずそう口走ってしまうと睨んだ視線が返ってきた。


「夏子、もう、いい加減なれてよ、恥ずかしいじゃない」


 外へと出かけると時より呼んでしまってはこっ酷く怒られる、でも、仕方ないとも考えている。私を導いてくれて、こんな素敵な人生を教えてくれたのだから。


ビルケ ドュフ ビリリュア愛してる


 リドルキア語でぼそりと呟いて妻を見つめる。


リュゲばか


 お椀を顔に近づけたまま恥ずかしそうに顔を隠しながら夏子が同語で返事をした。


 ラジオが突然、特別番組に切り替わって、リドルキアの戦争が終結したと告げていた。

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氷砂糖の愛 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki

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