第4話

うぅ…璃麻さん大丈夫なのかな…なかなか戻ってこないけど…お陰で強盗さんイライラしちゃってるよ…

そういえば、よく考えたけどなんで銀行とかじゃなくてカフェにしたんだろう。銀行の方がお金沢山あるしカフェにあるのはお菓子だよね…?それに強盗が入ってくる前に爆発音したし…あれ何だったんだろう。爆弾かなんかを誤発したのかな。話戻るけどカフェに強盗ってなんか可愛いな。お菓子好きな強盗ってことだよね?お菓子よこせー!でしょ?はっ、そんな事考えてる場合じゃない!あまりにもこの状況が嫌すぎて現実逃避に走ってる!!うぅ…早く帰ってこないかな…


「どうも万事屋でーす!ご依頼の“討伐”に来ましたー!」


突然璃麻さんの元気溌剌げんきはつらつとした声が店内に響き渡った。覆面の男たちも人質も、全員驚いて声がした方を向く。見れば少し前に体調不良でトイレへ駆け込んだ人質の一人が、何処からか出した薙刀なぎなたの様な長物ちょうぶつ武器を片手に色違いな両目を爛々らんらんとさせているでは無いか。

「てめぇ変な動きしたらぶち殺すって言ったよな?!」

「変な動きじゃないでーす洗練されてまーす」

「あぁ?!ふざけ…」

途端、目にも止まらぬ速さで吹き飛ぶ強盗1。背中を勢いよく壁に打ちつけたかと思えば物理法則に沿わず壁に張り付いている。何かと思えば見事に服の襟部分を璃麻が投げた長物が貫き、昆虫標本の如く壁に固定されているではないか。おまけに、あまりの恐怖に気絶し泡を吹いている。これが泡を吹く人間の展示場という訳か。

「テメェ!」

さっきの技を見てまでも敵うと思っているのか、バールのようなものを振り翳そうとする強盗2。恐怖心に駆られ放心状態だったものの慌てて手持ちのハンドガンで応戦を試みる強盗3。

「めんどくさいなー、一人の犠牲者で退くと思ったんだけど…!」

勢いよく振り翳されるバール(のようなもの)を物ともせず片手で受け止め、そのまま掴んだと思いきや楽々反対方向に曲げひの字に。混乱している強盗をよそに股間に蹴りを入れ一撃消沈。その光景を見て慌てふためくことのない強盗がいるだろうか。案の定腰が抜け床に座り込んでいる強盗3の胸ぐらを掴み、軽々持ち上げそのまま片手で椅子や机が積み上げられた入り口に放り投げた。大きな音を立て外に崩れ落ちる机と椅子…と不憫な強盗3。

「よし…万事解決〜!」

手を払い、こちらに振り返っては爽やかな笑顔を振り撒く璃麻。いまの今までの出来事は本当にあの細い腕から出た力で起こった事だったのだろうか?人質全員が目を疑う出来事であった…。




「これはこれはかの有名な万事屋の璃麻さんではありませんか…!ええ、感謝していますよ、とても。えぇとてもね。穏便に解決してくださればの話ですけど。」

「はははーそりゃどーもー」


当然警察(?)に連行されました、縷翔です。

やっぱり事件に巻き込まれたら事情聴取されるものですよね…なぜか璃麻さんは事情聴取というより説教な気がしますが。そして棒読み加減よ!話聞いてる?


「反省してますか?してないですよね?えぇ知ってます貴方にはいくら言っても反省しませんものね貴方に質問した私がバカでしたよえぇ」

この警察?の方もまた毒舌……。

それよりも気になったことが一つ。なぜ警察の皆さんの頭に天使の輪っかが?!

髪色がピンクだったり水色だったりするのには驚かない。が!天使の輪っかとなると話が違う!この世界では天使……?が統治してるのかな……。

「大体、緊急だったとはいえ契約書の作成も無しに事件解決依頼を承ったり解決の過程だったとしても店内の装飾品や内装を破壊したり……挙句の果てには役所への申請もなしに保護者行方不明の未成年を自宅にて保護?捕まるのはどっちですかねぇ?えぇ?」

ひぇ……怖いよぉこの天使さん!

「だって今から申請行くところだったしー」

「申請出しに行く途中にカフェに寄り道する馬鹿が何処にいるんですか?せめて帰り道にしてくださいよねぇ?」

「はいはーい」

「はぁ……全く…………」

大きな溜息をついた後、此方にジロリと目線を向ける天使(仮)さん。

「身分証も戸籍登録も無いような子を目の前にして警察が放っておけるとでも?はぁ……書類作成しますよ、用意が出来たら呼ぶのでここで暫くお待ちを……あぁ面倒臭い」

そう言い放つと気だるげそうに立ち上がり個室から出ていく天使さん。やっぱり警察なのかぁ……って、璃麻さんはよく今までちゃんと営業出来てたな……自分の店。

「おいおいなんだよその目は……これでも私、れっきとした刑事なんだぞ〜?」

えっ、刑事なの?!万事屋なのか刑事なのか……ど、どっち!?

「どっちもだよ、ってか、どちらかと言うと刑事として動ける資格を持っている万事屋……だな」

へぇ……そんなことできるんだ。

「事件解決依頼も来るし、警察と一緒に動けた方が楽だなと思って警察学校に入ったんだよなぁ……あぁ、キツい訓練の日々が昨日の事のように……」

か、回想シーンに入らないでください!

「それに、さっきの署長と私は……」

「準備が出来ましたので」

少し大きな音を立てドアが開いたと思えば、徐に会話に割り込み話の流れを止める天使署長さん。

「此方へどうぞ……ルト、さん」

名前を覚えきれていなかったのかメモをチラ見し私の名前を呼んだ。

「えぇー!話の途中なのにぃー!!私も行くし!」

「貴方はまだが残っているので此処で待っていてくださいね」

少しキレ気味な笑みを浮かべ、ドアを勢いよく閉め璃麻を締め出した。この署長さんと2人きりとか、ふ、不安でしかないよ!!怖い!!璃麻付いてきてくれたら良かったのに……。どうなることやら。

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